崩壊する図書館
今更の説明。図書館に居た方々は魂の記憶の中の真緒様の分身でした。
第136話 崩壊する図書館
最初の一冊。
それは、白銀の狼が老いた馬と仲良くなりたいと願って現れた。
次の一冊。
自分と違う姿の存在と言葉を交わしたいと願い現れた。
次の本は、最初の二冊と異なり、自らに関しての本。
魔族と言う生き物。
魔力という物。
名前。
自分が何者であるか。
その頃には狼は普通の狼と異なる者に変化していた。
動物と呼ばれる生き物であったが、魔族と呼ばれる生き物に変化。
狼自身は全く気にはしてないが、周囲はその彼に倣って同様の変化をする。
そのたびに本は増える。
そのたびに図書館と言う空間が出来てくる。
だが、今は――。
「終わりだな……」
椅子に座り、まだ人と共存する事の積極的だった頃の獣の王が呟く。
「終わりって…?」
人間――新庄真緒が尋ねる。
同じ魂。
本来なら会う事も無いが、魂が同じでも意識や記憶の誤差がこの空間では同時に存在できる。
「私達――少なくとも《獣の王》《魔王》と呼ばれた存在はあくまで魔王と言う前提で、自分の心の迷いを誰にも言えない想いをぶつけるために出来上がった空間だ」
彼は説明する一番若い自分の意識に――。
「でも、もう魔王ではない。よって、考えを一人で溜め込まないで言える者がいる。一人でいる必要が無い」
ここは用済みだ。
どこか朗らかな声。
「否定してもらいたい。肯定してもらいたい。考える時間を求めて…助けてほしくて――何度もここに来たが」
その都度、かつての自分に会えるのには複雑だった。
「でも…まだ解決してない!!」
魔王化している勇者も結界も決めてない。
そう叫ぶが、彼は笑う。
「それは信じるしかないね」
心残りだけど、魔力も尽きてきた。ここを維持できない。
「信じて、願ってみよう。――私が唯一信じられる神に」
「信じられる神……」
高位の者。そう常に読んでいた存在では無いそれに対しての親しみやすさ。
「ああ――頼むよラシェル」
その言葉を最後に図書館は消滅する。
「………」
完全な魔力は消えた。
それは、玉座の抵抗を抑えるために使い切ってしまった。
だけど、悔やんでない。
種は撒いた。
「さてと名乗りましょうか。魔王復活と言う大芝居を」
そう高らかに宣言した。
これより真緒さんは普通の女の子に戻ります。(その前にする事あるけど)




