ようやくの旅立ち
ガチタイトル付けるつもりがオチが酷かった
第13話 ようやくの旅立ち
その日は、青空が広がっていた。
「さて、行くか」
お城の正門から出ようとする勇者一行。……と、私。
(結局連れていかれるのね)
拒否したかった。ってか、勇者以外何でこいつ居るんだとじろじろ見てくるのを何とかして欲しい。
「……戦えない」
「魔術出来ない♪」
「神の御業で援護も出来ません」
「「「 それなのに連れてくる必要なんてあるの」」ですか?」
三人の声が見事に重なった。
「大丈夫だよ」
勇者が馴れ馴れしく頭を撫でてくる。
(三人の殺気が半端ない…)
撫でられ喜んでんじゃない!!と顔にでかでかと書いてあるがこっちはいい迷惑だ。
(代われるものなら代わってやりたい!!)
「新庄さんは俺が守るよ。安心して」
「……今一番の脅威はあんたの空気の読まなさよ…」
皮肉を言ったのに、
「何か危険でもある?」
と首を傾げてくる。
おいっ、そこの首傾げに萌えているハーレム達。さっさとこいつどうにかしろ!!
「……で、湯島君」
名前を呼ぶたびにここに居る全員の礼儀知らずとか、身の程も知らずにという冷たい視線がバンバン当たってくる。
「……」
私自分がマゾなんじゃないかと思えてきた。
「なあに、新庄さん」
名を呼ばれて嬉しいという反応に、どうして勇者と同格ではないのだと嘆く面々。正直鬱陶しい。
「これからどうするの?」
勇者から笑みが消える。
今、勇者の力を必要としているのはたくさんある。
海から来る幽霊船。山からくる竜。森にも植物型の魔物が現れている。
それだけじゃない。
「どこに向かうの?」
この国は魔王城と霧があった地域のちょうど中間。ここからどこで何を救いたいのか。
「……」
私は彼らから何も聞かされていない。自分で調べたから落ち着いているが、何も知らない普通の巻き込まれたものなら不安だろう。
分からないのに戦い方を教えられて、目的も知らされず、隠し事されていたら。
「いい加減教えて?」
湯島君の口から。
「……」
湯島は…勇者は答えない。ただ、
「大丈夫だよ。新庄さんが気にする事無いから」
「ふうん…」
こいつの事をキャーキャー言っている子に聞きたい。こいつのどこがいいの。
「……決めてないで出るつもりなら無計画としか言えない」
そんな人を信頼できない。きっぱりと断言すると、
「勇者に何を!?」
と文句を言ってくる女性陣。
ああ、ここで殺されても仕方ないかと覚悟していると、
「新庄さん!!」
がしっ
両手を強く掴まれる。
「新庄さんって、ほんと素敵だね!!」
「はあっ!?」
何でそうなるの。
「そうやって、俺に苦言を言って叱ってくれるなんて愛が無いと出来ないよね!!」
愛なんてないが、
「遠慮しないでどんどん言って!! そう言ってくれた方が安心する」
ヤバい…何かよく分からないが好感度を上げたみたいだ。
背中に汗が伝う。
うん。女性陣が剣を抜いたり、詠唱したり、呪いの用意してますけど。
「目的ならあるよ」
ならさっさと言え!!
「魔王城だよ」
あっさりと今までのはなんだったのかコントだったのかと本気で絞殺したくなった。
空気の読まない勇者に脱帽




