武器庫
本編よりも先に出来た
幕間 武器庫
まず、目に入ったのは剣――様々な形。美しさ。大きさ。
大剣もあれば小剣もあり、暗殺者が持つ隠し剣や片刃の剣。双剣もある。
西洋ぽいのもあれば日本刀もあり、有名SF映画の柄を握ると光の刃が出るのもある。
次に目に入るのは槍などの長物。
槍、根。蛇矛。薙刀。
死神の持っているイメージの鎌もある。
「ここは……?」
剣、槍。弓。
というこれぞ武器という物から。
鉄扇。笛。錫杖。
という武器としてはゲームのイメージが強い物。
札。手裏剣。
実際に使えるかはともかくイメージで使えそうな代物。
そして――。
「銃…」
様々な銃。銃に詳しくなくても刑事ドラマ。時代劇で見るような様々な代物。
「ここは……どこ?」
誰も居ない。
自分一人。
「――へぇ~まさかここまで来れるほど魔王化が進んだのか」
声。
慌ててそちらに視線を向ける。と、
「……お前」
そこに居るのは自分。
「ド…ドッペルゲンガー……?」
見たら死ぬって奴。
「なんで…!?」
何で急に知らない所に居て、ドッペルゲンガーを見る事になったのか!!
「――落ち着けよ」
落ち着かせようとしない元凶が笑いながら告げる。
「はあ、俺じゃ、説明がムズいか…でも仕方ないな……」
困ったように呟いて、面倒だと言う様に壁にもたれる。
しばらく続く沈黙。
「お前……?」
「おっと、ようやく冷静になったか」
もたれていた壁から離れ、
「さてと、――話を聞く気になったか? 次の魔王候補さん」
魔王候補?
「魔王って…!?」
「――褒められたい」
ぴくっ
「称えられたい」
ぴくっ ぴくぴく
「自分は特別だ。自分は選ばれた人間だ。だって」
一度区切る。
「――だって、自分は勇者だから」
嗤うように告げる声。
「特別は二つもいらない。巻き込んだから守って、それで自尊心を高める。だけど、それは相手が自分より劣っているからいいものだ。相手がもし、何か一つでも自分より優れているものがあったなら?」
尋ねる声。
「もし、それを不快だと思っていても、自分の立場では言い出せないのに、誰かが…『危険だと』言ったなら?」
大義名分になるだろうね。
「口では『するな』と告げても目が、顔が、行動が、『消せ』と告げていたら?」
身近な者はどうするだろう。
「――何が言いたい!!」
聞いていると不愉快だ。さっさと出たいのに出口は無い。
「英雄になりたい。それがお前の欲望」
ぽんっ
肩に触れられる。
「おめでとう。君は英雄になれるよ。魔王と言う英雄にね」
ここはそう言う者が来る空間。
「ここ…」
「魔王になれる権利を得るとお前の様に内面に世界が出来る。ある者は、共存を求め、その方法を得るために知識を表現した図書館を作りだし。別の者は医務室。ある者は庭園。遊技場」
それぞれの魔王になりたいと思った理由がその世界になる。
「魔王って、俺は魔王を倒すために…」
「もう、倒しただろう?」
それ以上どうしたい?
素朴な問いかけ。
「もう用件は終わったのに。どうしてまだ勇者でいる必要がある?」
「俺は…」
何か言わないといけない。でも、言葉は出ない。
「――魔王になったら崇められるよ。英雄になれるね」
そんなものになりたいなどと言ってないのに。
「――もう、遅いよ」
君は、先の魔王が与えた慈悲を踏み躙ったから。
声が遠ざかる。
そして、
「新庄さん!!」
橋が壊れ、墜ちて行った彼女を飲み込んだ川が眼下に広がっていた。
図書館は真緒=ラーセルシェード。
医務室は冥王。
庭園は精霊王。
遊技場は龍帝。
それぞれ内面に世界があります。
もう一人の魔王候補は……。




