暗転
さてと…悪夢の始まりかな
第120話 暗転
目の前には、ぼろぼろのつり橋があった。
「……これ渡るの?」
城に行くには――生贄の為に――大きな道を作ったのにな。
「いかにも罠がありますと言う道を通る訳ないだろう」
女騎士が告げてくるが、
(罠なんて作ってないけどな…)
そんな誤解をされているみたいだ。色々とショックだ。
「……魔王が居ないのに罠があるの?」
魔王の人間性(?)が疑われるんだけど。ホント、魔王の事どう伝わってきたんだろう。
「解除されてないからな」
………女騎士が当然だと告げてくるけど、元々無い物をどう解除するんだろう。と疑問を抱いてしまう。
「それにしても……」
勇者。
女騎士。
巫女。
魔法少女。
私――とアカネ――。
体重+それぞれの装備――私は一切ないが――があるのでとても重い。それでこのつり橋……。
「この橋の強度って大丈夫かな……」
王道パターンだよね。漫画とか、小説とか。ああ、映画やドラマでもお約束か。
「橋が途中で壊れてみんながばらばらになるって…」
それを実践してくれなくていいのに。
「ああ。それを心配してたんだ」
安心させるように笑う勇者。
「確かに王道パターンだけど、ここはファンタジーだよ」
うん。そうだね。
「魔法で強度を高めて、補助の術があれば未然に防げるし、落ちたりしても浮遊の魔法もあるから助けられるよ」
命綱はあるって事か。
術という事は最近仲良くなった魔法少女がしてくれるから他の二人よりも信じられるか。
………もしもの時は真名を教えてもらったからそれで対処できるし……。
そう思っていた時期が私にもありました。
最初に渡るのは安全を確認出来るようにと女騎士。
次に渡るのは補助の術を掛けている巫女。
そして、勇者――。
そこで気付けば良かった。
「新庄さん」
大丈夫だからと渡り終えた勇者が声を掛けてくるので、下を見ないで――下は流れが険しい川だし、高さがあり、正直怖い――そっと、ゆっくり。ゆっくり渡って行く。
みしっ
音がした。
…………それは小さな悪意だった。
わざと縄に負担を掛けるような歩き方をしていた女騎士。
補助の術を気が緩んだと手を抜いた巫女。
……それに気付いていたが口にしなかった勇者。
魔法少女はとっさに術を作動したが、彼女の心にも悪意はあった。
みし、みしみし
切れる縄。
「新庄さん!!」
手を伸ばして助けようとするがその手は途中で止まる。
魔物の勇者。
勇者であるのは自分なのに、本来なら自分がする立場であった事をしていくもう一人の異世界人。
勇者は………。
手を伸ばしても助からない。自分も巻き添えにあって墜ちるだけだ。
無意識だったが、そう判断して。彼は……勇者は。
自分だけが助かる選択をした――。
その時、巫女は笑っていた。
神の意志を叶えれたと判断して。
女騎士は迷っていた。
だが、危険分子と判断して消す事に決めた。
魔法少女は……。
『もし、事が起きたら中立でいてください』
手を出さずに、見ていてください。
そう言われて事を思い出して動けなかった。
ばしゃーん
水柱が起こる。
それが、勇者達が見た最後の新庄の姿だった。
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