神々の娯楽
これで龍組の話は一区切り。
幕間 神々の娯楽
数人のかつて勇者――または魔王と呼ばれていた者達が事の流れを楽しげに見つめている。
「獣の王も大変ね」
かつて勇者の一人だった神が呟く。
「まあ、半分は自業自得だけどな」
かつて勇者に倒された魔王だった神がにやにやと面白がっている。
「……ユスティは何でああもあの魔王を毛嫌いするのかしら?」
魔王を倒そうとして、仲間の裏切りで殺された神が首を傾げる。
「――知らないのか?」
人間と手を組んだ側近によって殺された魔王だった神が口を挟む。
「あの子の呪いは神になっても健在なのよ」
呪いの内容は触れられなかった。ただ、呪われろとだけ、それだけの執念で掛けられた代物だった。
「あの子に掛けられた呪いはあの子のしたくない事をし続ける呪い」
「自分が幸せなら他はどうでもいい。贅沢をしたい楽をしたい。そのためならどんな事もする」
「自分の不幸は相手が悪い。相手が自分より幸せなのが許せない。大なり小なりあるもんだけどな。あいつは度が過ぎてたんだ」
きっかけは自分とそっくりな子供。
「双子は縁起悪いと言うが、あれは同じ顔立ちで同じ環境に身を置いたのに性格とか気質で成長に差が出て、相手の方が幸せだと思って羨んでしまう事から来てたりするんだよな。近くに居なければ気にならないだろうという事だけど。なんでわざわざ近くに置くのかな」
呆れた声。
「本当なら不幸になった方が恨んでも仕方ないけど、獣の王はいい子に育てたんだよな」
恨みもあった。だからこそ復讐をしようとした。でも、
「大なり小なり人を恨むのは当然。そういう意味じゃ、奴隷の方がまともだった」
まともじゃなかった。と、まともであったなら魔王に勇者に――高位の者になっていない者達がつげても説得力の無い言葉。
「私達。かつて魔王だった者達は欲望が強くて魔王になる。どんな欲でも持てば力を得ようとするものよ」
最古の魔王が笑うように歌うように諭す。
「魔王になる素質があるのなら神にも成り易い。けど、呪いは継続したまま。神と呼ばれていても真名を知られている限り、神でありながら人に従わないといけない。要は使い走りだ」
可哀想にと全然可哀想に思っていない声。
「………それで、あの者が、ラーセルが恨まれるのは筋違いではないの!!」
獣の王――ラーセルシェードと交流があった神――ラシェルは怒りを宿して叫ぶ。
「――理由なんてどうでもいいのよ」
嗤う。
「ユスティの望みは神を辞める事。そのために自分の後釜として勇者を召喚して、自分を苦しめた元凶である獣の王を苦しめたい」
そのためには手段を択ばない。
「もう、次の手を動かしているんじゃない」
とある神殿――。
――勇者の仲間よ
呼び掛ける声。
「女神……ユスティ様」
名を呼ばれる事を忌々しく思いつつ、
――貴方にお願いしたい事があります
手駒はまだある。
そう判断したから彼女は次の一手を動かした。
ユスティは逆恨み。




