お話合い
真緒様のご帰還
第106話 お話合い
人目が付きにくい場所。
その選択できたのは、魔力で特殊な磁場を作り上げている川辺。
勇者はなんともないが、巫女と女騎士に影響が出ている所で話し合いが行われた。
「獣の王……そちらでは《魔王》と呼ばれていた者ですが、その《魔王》の張った結界が崩壊して我らの父《龍帝》が異変を調べるように部下に命じ、先日部下から報告が入りました」
龍帝の長男が気難しそうに告げる。
「勇者に獣の王…《魔王》が倒されたと」
こちらを探るような眼差し。
一つ間違えると戦いになりかねない緊張感。
「…ああ。そうだ」
獣の王というのが良く分からないが自分が倒したのは確かに《魔王》と呼ばれる者だった。
ざわっ
空気が変化する。
殺気によく似た警戒する空気の中。
「――魔王と勇者は互いにそれを覚悟して戦ったんでしょう。それを口出しできないでしょう」
部外者である――俺を嫌っている宣言をしたばかりなのに新庄はこちらを庇うように告げてくる。
「――武人として、戦ったのなら口を出せない」
殺気を撒き散らしていた当の本人が謝罪してくる。
「すみません。大兄様は面識があるので、複雑なんですよ」
末っ子の龍が謝る。
「で、結界をどうするつもりだ?」
次男が尋ねてくる。楽しげに面白がりつつ――場合によっては斬り掛かるつもりの殺意を顕わにして、
「獣王との約定を忘れて結界を消したみたいだけど」
その事だが、
「巫女何か知らない?」
その手の事は神殿で歴史書として取ってありそうだと確認するが、
「知りません。魔王は結界で私達を捕らえて支配していた。それが事実です!!」
巫女にしては珍しくカリカリしているな。
「………巫女」
「なんですの!?」
「猫が剥がれてる」
別に剥がれてもいいがな。ライバルが減るし。
女騎士が何か話しているけど何の話なんだろう。
「……鈍感」
不快気に新庄が呟く。
私を巻き込まないでよと言ってくるがよく分からない。
「それはともかく、湯島君」
新庄がじっとこちらを見てくる。
「なっ、何?」
ドキドキしながら新庄と視線を合わせる。
「勇者になった時どんな説明された?」
どんな説明……?
「魔王が人々を長く閉じ込めているので倒してくれと。後、姫様が誘拐されたとか」
「……伝わってないのか(ぼそっ)」
何か呟いたけど聞き取れなかった。
「新庄さん?」
どうしたの? と聞こうとしたら、
(信じてはいけません)
と告げた女神ユスティの声が脳裏に甦る。
魔物の勇者を信じてはいけない。そう囁いている気がする。
「湯島君?」
新庄がこちらを見て、
「…******(洗脳はまだ消えてないか)」
分からない言葉だと思ったのに、声がノイズ交じりに重なって聞こえた。
洗脳?
「*******(自分の手駒として呼んだから洗脳は簡単なんだな。ったく、解けないじゃないか)」
意味は分からない。だけど、自分が危険だなという事は察した。
勇者が空気を読むことを覚えた




