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諸事情につき、勇者ハーレムの中にいます  作者: 高月水都
獣の王の過去のお話し
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都合のいい神に仕立て上げられた生贄の少女 その12

色んな思惑が重なった結果

  第102話  都合のいい神に仕立て上げられた生贄の少女 その12

 それは一陣の風だった――。

 花嫁を抱き上げる白銀。

 狼の耳と尾を持つ男性。


 誰もがその存在の正体に気付いた。


「あっ…ああっ」

 剣を持ったまま女性がその存在に近付く。

 恐怖か憎しみか条件反射的に斬り掛かるのをその存在は避けて、

   ・・・・

「――呪われろ」

 と命じた。


 それだけだった。それだけでももう相手をするのが億劫だと言わんばかりだった。


「そ……そんな…どうして…」

 わたくしが悪いわけではない。そいつが悪いのに。

 わたくしから全てを奪ったのに。

 どうして。

 どうして。

 わたくしばかり不幸になるのよ。


 剣が落ちる。


「自分で不幸を呼んでいるのによく言いますね」

 吐き捨てるように商人が告げる。

「――大人しく愛人に収まればここまで苦しまなかったのに」

 昏い光を宿して商人は嗤う。

 憎しみを宿した眼差し。


「何故…?」

 何で恨まれるのか分からない。わたくしは何もしてない。何も悪くない。

「分からない。そんな顔をしてますね。――貴族として義務を怠ったのに権利だけ貪っていた者が悪くないとでもいうんですか?」

 両親を殺した男の娘。

 罪の意識もなく路傍の石として扱った。

 商人は令嬢の姿を見て笑う。

 服の下で隠れているが何をされたか明白だ。

 だけど、

「現実逃避なんてさせませんよ」

 にこり

 優し気な笑みだった。遠目から見れば。

「昔話をしましょうか。――哀れで愚かな男の話です」

 女性をそっと立たせる。

「昔々。両親を借金を踏み倒されて殺された少年が居ました」

 そう、この時のために生きてきた。

「少年は両親の無くなった保険で食い繋ぎ、その復讐相手を一目見ようと屋敷に行きました」

 今までの不幸はまだ不幸ではなかった。

「そこで、復讐相手の娘に一目惚れをしました」

 それが地獄の始まり。

「少年は復讐を諦めるか迷いました。そして、自分の両親を殺したその男と血が繋がっているだけで行いは別かもしれないと様子を見ました」

 期待したのだ。

 ………裏切られたが。

「娘は男より愚かで人を人と思わない娘で、自分と同じ顔と言うだけで奴隷を買い、いたぶり。生贄に差し出しました」

 そして、

「生贄を出した家は保証金を貰えますがそれで散財をし続け、金を湯水のように使いました」

 誰か分かるだろう。

「金は無限ではない。貧乏になった娘にかつての少年は言いました」

『愛人になるのなら助けてやろう』

 死んだ両親を裏切る行為だと言われなくとも分かっていた。でも、恋心に勝てなかった。

「了承したので今までの事は水に流そうと思っていました」

 だけど、直前での裏切り。

「もう、どうでもいい」

 復讐を終わらせるだけだ。

「そんなっ!! わたくしはきちんと貴方を愛してたわ!! でもあの偽物が!?」

 今更だ。


「――獣の王が生贄が逃げ出してお怒りだ」

 商人が叫ぶ。

「今すぐ怒りを鎮めないと」

 その言葉に動く人々。

「…………これでいいのではないですか?」

 声を掛ける。

「――流石だ。だが、獣の王を殺してくれればもっと良かったのにな」

 数人の集団が隠れていたところから現れる。


 かつて身内を生贄にした者の子孫――補償金をもらえると思って泣く泣く手放したのだがその金を貴族に奪われた者達――。

 魔族に家族を殺されたのに魔族との契約があるからと相手にされなかった者達――。

 そして、人こそ至高の存在と信じて疑わない獣の王を煙たがっている宗教家。


「無理は言わないでください」

 笑ったまま告げる。

「両親の名誉を約束通り回復させてください」

 それを叶える為の部の悪い賭けだった。











獣の王は彼女を助けられるだろうか…?

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