都合のいい神に仕立て上げられた生贄の少女 その10
今日投稿できないと思ったけどなんとかできた。
第100話 都合のいい神に仕立て上げられた生贄の少女 その10
どうして頷いてしまったのだろうか。
花嫁衣装に身を包み。自問自答する。
どうして手を取ってしまったのだろう。
控室。
付き添いもなく、用意されたその一室で手を握り考え込んでいる。
復讐をしないかと告げられて、その手を取ってしまった事を悔やんでない。
「王様…」
でも、その手を取ってしまった自分はもう王様に合わせる顔は無い。
「――迷っているのか?」
声が掛けられる。
「後戻りはできないがな」
商人が姿を現して告げる。
「………貴方は?」
商人に尋ねる。
「貴方は迷わなかったの?」
商人の言葉に頷いてしまったのは、商人の眼差しにも同じ…復讐を望む色が見られたから。
「………どうでしょう」
人を揶揄う様な言葉。
「貴方の……」
これだけは確認したい。
「貴方の復讐したい相手は…?」
誰…?
問い掛けると笑われた。検索するなと告げるように――。
「……」
商人は共犯者に対して憐憫の目を向ける。
可哀想に。
そう感じてしまうが何も言わない。
可哀想に。
奴隷。
生贄。
そして、共犯者。
この少女の歩いてきた道は幸せと程遠いものだ。
哀れで、可哀想で。
――滑稽だ。
利用されている事実に気付いてないのはおめでたいと言うべきか。
まあ、実際。復讐したい想いがあるからこちらの言葉に乗せられたのだろう。
復讐したい相手が居るのも事実。
それと同時に欲もある。
……………商人としてのサガと言うしかないだろう。
危険なのは分かっているがその褒賞に目がくらんだ。
そう――。
脳裏に浮かんで消えるのは、貴族に貸し出した金を踏み倒されて生活が立ち行かなくなった両親。貴族の言葉に乗せられて結局は保険と言う僅かな制度に頼って息子を残して首を吊った。
そんな事があったのにどうして親と同じ金貸しになったのかと尋ねられるといつも笑って告げた。
『同じ土俵でたたないと真の復讐にならない』
そう――。
(奴隷として育ったのなら本来なら復讐の相手として外してもいいんですけどね)
あの男達と同じ血が流れているのなら。復讐の対象として入れてあげます。
それに、
「復讐の後は一人にしませんので」
そう、
『かの者が邪魔なんだ』
持ち込まれた仕事。
『この世界の圧倒的の権力者として君臨し続ける者のせいで我らの望みが敵わない』
商人に持ち込む仕事ではないとやんわり告げて断ったが、
『そなたも損はしないはずだ。復讐相手の身内が生贄候補だ』
嗤う声。
『かの者の血肉は高価な品として買い取れるしな』
何なら、そなたの両親が被った不名誉な話も消し去っておこう。
『………』
踊らされているが、どうせ踊るなら楽しんで踊ろう。
成功しても失敗しても死ぬのは変わらないのだから――。
次の次で終わる予定(予定は未定)




