都合のいい神に仕立て上げられた生贄の少女 その8
まさか8まで行くとは………
第98話 都合のいい神に仕立て上げられた生贄の少女 その8
「これはこれは」
馬車から降りて出迎えてくれたのは一人の男性。
やや歳が上で横に大きい姿をしたその男性の見た目が嫌で令嬢は結婚を逃げたのだが、生贄の少女はその事実を知らない。
「お会いできて光栄です」
我が花嫁どの。
挨拶をされるが本当の花嫁ではないので良心が痛む。
疲れているだろうと気を使われて、部屋に案内される。
「王様…」
心配しているだろうか。花を摘みに行って帰ってこない自分を。
ご令嬢は今王様の所に居るんだろう。
「王様はわたしとお嬢様を間違えてないだろうか……」
いや、違う。
「奴隷よりもご令嬢の方がいいだろうし」
生贄として暮らした日々は幸せだった。
幸せ過ぎて忘れていた。
自分はその幸せを甘受してはいけない身分だ。
『気味が悪いのよ』
たまたまお嬢様と似ていた顔立ち。
『わたくしと同じ顔なんて冗談じゃない』
鞭を打たれた。
『本来なら顔をそり落としたいけど、それをしてわたくしに災いが起きても迷惑なのよ!!』
………ご令嬢はいくら自分ではないとはいえ、自分と同じ顔をそり落としたり、焼いたりは怖くて出来なかった。痛めつける事に躊躇いはないが、同じ顔を傷つける事で、自分の顔に影響を与えたりはしないかと内心びくびくしていたのだ。
ある意味小物で、小心者だったのだろう。
などと考えていると、
きいいい
ノックもなく入ってくる気配。
「誰…?」
自分の身分ではノックなどされた事は無いが自分はお嬢様としてここに来ている。ノックして入ってくるはずだ。
「誰なの!?」
「――誰と言われても…」
入ってきたのはこの屋敷の主。
「貴方の旦那様になる者ですよ」
にこやかな声。だが、その声が不気味に思えた。そう、奴隷時代。暇潰しにいたぶってきた者達と同じ雰囲気。
「こ…来ないで……!!」
お嬢様を演じなくてはいけないと叩き込まれたが、怖くて、怖く、後ずさりしてしまう。
その態度が気に食わなかったのだろう。表面的な笑みを消し去って、
「気難しいお嬢さんだな。――花嫁として体裁は整えてあげたんだから本来の立場を思い出させようと思ってね」
「えっ!?」
花嫁と言っていた。
「資金繰りが苦しいのでお金を貸し出していたのに貸した金を湯水のように使用し、人をまるで財布のように扱いだしたので、いい加減うんざりしてきたので、次の借金をする時は愛人として迎え入れると伝えて了承したのに土壇場になって文句を言い出して…」
溜息交じりの声。
「仕方ないから花嫁と言う体裁を整えたのに、まだ抵抗するんですか」
貴族の誇りと言うのは無いんですかね。それとも承認をまともに相手をしないという考えが、貴族の誇りと言うものでしょうか。
「それでも、私は商人だからな。品物は吟味しないと安心できなくてね。……新鮮さが売りのモノは特にね」
ベットに投げ出される。
「自分の立場を弁えず。豪華な馬車がいい。ドレスは一流のデザイナーの者を用意しろとか、まあ、そこまで気に掛ける価値があれば育てるための努力は惜しまないけど」
近くに迫ってくる商人。
「来ないで……」
涙が出てくる。
「王様…」
助けて欲しかった。
今まで、助けなんて求めてなかったのに、温もりを与えられただけで欲が出た。
「王様…助けて…」
怯えたように告げる声。
「……」
商人は笑う。
「そこまでやって偽物を用意するのはこちらとして不快でね」
「えっ……!?」
偽物…?
「情報は仕入れているんだよ。生贄の少女」
商人は離れる。
「揶揄い過ぎたね。まあ、こちらとしては不快だったから八つ当たりしたんだけどね」
気に入られず帰されたのかと尋ねられてそんな事は無いと否定する。それが商人の言葉を肯定しているのに言ってから気付いた。
「――奴隷と聞いていたけど、あのお嬢様より使えそうだ」
価値はありそうだ。と笑う声。
「君のその努力を買ってあげる。――君の運命を弄んだ存在を苦しめてあげようか」
君にぴったりの復讐を売ってあげる。
「復讐……」
考えた事は…実はあった。
獣の王の力を使えば復讐できると、でも――。
王様は、復讐しようとしている自分は生贄として価値が無いと判断すろと思えたので言わなかった。
勇者「俺勇者なんだけどさ。もう俺いらなくね」
真緒「それ言うとこれ私の前世の話だから私も出てないと言えば出てないんだよね」
龍組「それ言うと我らは放置されてますが…」




