王道(!?)の召喚
ギャグで進めたいと思いますが何時まで進められるか分かりません。楽しんでください
それはよくある勇者の最後の戦い。
「百年に一人の生贄を要求し、世界を霧で閉ざす。残虐非道な魔王よ。この勇者が正義の光をもってお前の存在を滅ぼしてやる」
物語のような仰々しいセリフとともに現れる勇者。
その勇者の傍には彼と共に魔王を倒しに来た仲間ーー。
神殿に属する神のご意志に従うために自ら志願した清廉な巫女。
国から命じられ、今では勇者の志しに感服した女騎士。
自身の好奇心と修行をかねて同行するようになった魔法少女。
そして、生贄として囚われていたとある大国の傾国と呼ばれる程の美しさを持つ王女。
王女は、魔王によって幽閉されていた部屋から脱出して勇者と合流したのだ。
彼女達は魔王に恐怖を感じつつも、勇者を信じ、ここまで辿り着いた。
「面白い」
余裕のつもりなのか。魔王は玉座に腰を降ろしたまま口の端を動かして嗤う。
白銀の髪を持つ狼の耳を持つ魔王。
その異形な姿に勇者の仲間は怯みそうになるが、彼女たちは自分が信じてついてきた勇者が動じて無いのを見て安心する。
勇者なら大丈夫――。
その信頼を力にして勇者と共に魔王を倒すと振るい掛ける。
そうして、人々の希望を背負った勇者と人々を長きに亘り苦しめていた魔王との戦いが始まり、勇者は王女と世界の人々を救い出した。
それが、この世界にとって、半年前にあった英雄叙事詩。そして、勇者にとって二か月前ーー。わたしにとっては生まれる前の話だった。
*
「えっ!?」
それは漫画や小説によくあるパターン。今までいた場所から急に違う場所が目の前に広がっている。
「勇者様の召喚が成功したぞ!!」
一人の声をきっかけに次々と勇者に群がる人々。
「勇者様。お久しぶりです」
「こうして再び会えるとは」
「会いたかったよ」
と勇者に抱き付く三人のそれぞれタイプの違う美人。抱き付きつつも他の二人をけん制するように火花散らしている。
「ごめんね。新庄さん」
そんな三人に全く気付かず。抱き付かれた当人は空気と化していた私に話し掛けてくる。
(さ、殺気がこっちに来た!!)
三人分の殺気に元凶は全く気付かず、
「俺の事情に巻き込んじゃって」
と爽やかに――それがますます女性陣の殺気を高めているのだがーー謝ってくるがだったら空気を読んで欲しい。
こいつのこの空気の読まなさで、どれだけクラスの女子に嫌がらせを受けたことか…。少年漫画の主人公のような感じで学校で人気者でもてている。だけど正直に言うと私はこいつが苦手だ。
初めて会った時に感じたのは恐怖。原因は分からなかったが。
――だが。
今は分かる。分かってしまった。
この私ーー新庄真緒は、勇者ーー湯島正樹に倒されたこの世界の魔王。その一柱だったーー。
ハーレムに巻き込まれて苦労する主人公のつもりですが、理想は逆ハーです。楽しんでもらえると嬉しいです