神話 神々の誕生
今回は閑話として、大陸の主教であるリーベス教の誕生神話になります。
リーベス神は、無から生まれた。
その虚無を悲しく思ったリーベス神はメルカ大陸とそれを守る海を創り、自分と似た存在をも創った。それが母神ユニである。
一人は寂しいと、ユニを妻としたリーベスはユニとの間に子を5柱儲けた。
リーベスは自分が創ったものとはまた違った方法で増えた子である神々を気に入り、力の源である「力」を司る権限を与えた。
妻であるユニには愛と美を。
最初の子であるヴェレには法と正義を。
二番目の子であるテトには大地と豊穣を。
三番目の子であるジンには戦と狩猟を。
四番目の子であるタールには知恵と時を。
そして、五番目の子であるイシスには死と再生を。
そうしているうちに、リーベスの創った世界はどんどん大きく広がっていった。
大地は広がれど、そればかりで自分が見下ろす世界は静かでリーベスは退屈を知った。
リーベスは小さな好奇心で自分の力を少し千切り、大地に放った。
それは草を食べる角の生えた丈夫な生き物であったり、あるいはそれを食べる強靭な牙をもつしなやかな生き物であったり、あるいは水の中をかける生き物へと姿を変えた。
リーベスをはじめとした神々がお気に入りなのは、自分たちを模した生き物である「人」であった。
自分たちと比べて短い命のサイクルの中で、生きるために様々な工夫とこらし、娯楽をつくり、そして何より多くの感情を持つ彼らは神々の心を慰めるものであった。
リーベスはある時、メルカと名付けた大陸の中でひときわ大きな湖に降り立った。
この時のリーベスの楽しみは人の混じり、人のまねごとをすることであった。妻のユニはそれをあまり快く思わないようであったが、リーベスは気にするでもなくその日も人間の男の体を創り人の世界を愉しんでいた。
人目につかない木陰のある場所でまだ冷たい湖に足をつけ、涼を味わっていたリーベスは湖に半身を鎮めた娘を見つけた。
かの娘はティスという名で、このラル湖を守る一族の娘であった。一族の娘は定められた日に湖に身を浸し、時折流れてくる神の気配を利用して湖とその周囲を悪意から遠ざけることを役割としていた。
リーベスはティスを気に入り、ティスを浚い自らの妻とした。
これに怒ったユニはティスの命を奪い散らそうとするも、ユニの末の子であるイシスがそれを止めた。
ユニが人の世からリーベスがティスを神々の世界を連れてきたことを知った頃には、既にティスの胎にはリーベスの子がいると知ったからである。これにはさらにユニの怒りに火をつけることになったのだが、イシスはリーベスの子であれば、自分の弟妹であると諭し、怒りを収めるようとりなした。
一番の気に入りであるイシスに宥められ、仕方なしにユニはティスとその子を神々の中へ迎え入れることを許した。ただし、ティスの子は神として受け入れるが、ティスは人の身であることから、神としての力は何一つとして持たせないことを誓わせた。
その後、ティスは4柱の子を産む。
リーベスはティスとの間に生まれた子たちにも神としての権限を与えた。
クローヌには海と泉を。
シフには雨と鍛冶・芸術を。
エイクには旅と商売を。
そしてリーベスの最後の子であるオルムは破壊と呪術、そして絶望が与えられた。




