プロローグ トフェトの森
メリッサ悪堕ち編、開始します。
ようやく脱幼女だよ!全然幼女らしくなかったけどな!!
―その森は冥府への入り口なのだ。
そんな一節をメリッサはいつか読んだ本のことを思い出した。
なるほど、確かに自分の周りを取り込むような森林はすべて針のような葉を茂らせる樹木でその葉も幹もすべて黒みがかった緑、というよりも緑を感じさせる黒で、それが森全体を覆っているのだから昼間ですら目を凝らさなければ進めないような森であった。その木は話によると触れれば手が赤く腫れ上がり、薪にすれば喉を痛める煙を吐き、煎じれば3日間は酷い頭痛に苛まれるという生き物が触れるものではないと言わしめた木である。
すべて同じ木で造られた森は一度迷いこめば二度と出ることはできないというほどなので、冥府から死者が逃げ出すことも叶わないという点でも、冥府の入り口には相応しかろう。
その森の名はトフェト。
神話の時代に造られた、供物を捧げる為に存在する森である。
メリッサは森の中で唯一整地されている10ヤード四方の土地の中心にいる。
正確に言ってしまえば、その中心に置かれている祭壇と言えば聞こえはいいが長方形に揃えた石に括りつけられた状態であった。
ご丁寧に手足だけでなく、その胴体ですら鉄鎖でしっかり祭壇に縛り付けられた状態である。
メリッサが祭壇に置かれて既に1日が経過していた。
空は見事なまでに晴れ上がっており、雨など降る気配もない。
喉の渇きを切実に感じながら、メリッサはいずれ来るであろう自らの死を静かに待っていた。