第八話
目を覚ました最弱勇者君が開口一番に言います。
「で、なんでこうなったわけ…?」
「いや~、俺寝相が悪くて…」
「寝相とかそういう問題じゃないだろこれ!?どうやったらこんなに散らかせるんだ!」
昨日は酒場を出て、大通りにある少し高めの宿のしゃれた一室に泊まったはずでした。しかし次の日にレーヌが部屋を見てみると床には荷物と装備品が、壁に飾ってあった物が全て外されて床に散乱している始末です。
「…怒らない?」
ネックスは床に正座をして、ベッドに座っているレーヌの顔色を伺うように言いました。
「すでに怒ってるから。で、言い訳は?」
「うぅ…俺、こういう部屋に泊まった事ないから落ち着かなくて…。それで壁にかかってる物を外せば少しはよくなるんじゃないかと思って外しました」
今すぐにでも土下座をしそうなネックスに、それすらもさせまいとレーヌは口を開きます。
「散らばってる荷物と装備品は?」
「今度からはレーヌも一緒に旅する事になったから一回荷物の見直しでもしてみようかと思って広げたら、仕舞えなくなりました」
今度こそネックスは土下座をしました。そんなネックスを見て溜め息を吐きながらレーヌは言いました。
「…はぁ、それならいいよ。片付け終わるまで待ってるから早く終わらせてね。朝食の時間が終わっちゃうから」
「はいよー。って、手伝ったりはしてくれないの?」
ネックスは助けを求めるようにレーヌを見ましたが、そんなネックスに対して体の前でバツ印を作りました。
「だから言ったでしょ、僕は何も出来ないよって。今まで全部召使達がやってたから荷物とか何持ってけばいいかわからないし、外に出るのも久しぶり。文字は一応読めるけど、計算とか頭使うのは全然ダメ」
もう本当にダメな勇者ですね。
ギリギリセーフ!!
出かけてたらこんな時間になってしまいました。
時間って案外短いものですね…。