第五話
そんな最弱勇者君の正面ではネックスがビール二杯では足りなかったようで、一升瓶をラッパ呑みしてますよ。
「ぷっはぁー!やっぱビールはいいよな!」
少し前までの暗い雰囲気をぶち壊すような幸せそうな顔をしてビールを飲み続けます。
「その飲みっぷりはいいけど、酔いつぶれないでね。僕、ネックスの事運べないから」
「そうか~?意外といけるかもしれないぞ?」
ネックスはすでに酔いが回っているのか、顔を赤くしながら上機嫌でレーヌに話かけます。
「僕さ、フォークとナイフとスプーンより重い物持った事がないんだよね。だから武器も軽いやつにしてもらったし」
レーヌはそう言って懐からナイフを取り出しました。ナイフと言っても暗器のようなナイフではなく、どこの家にもありそうな銀食器のナイフです。
「それ、短剣っていうより…」
「銀食器だけど?メイドさんに言ったら持って来てくれたんだ」
「それで魔物と戦うのか?」
レーヌとナイフを交互に見ながらネックスは言いました。
「もし魔物と会ったら逃げる。僕が戦えるわけないし。家からここに来るまで魔物に会わなかったのが奇跡だよ」
「…へ?お前、この国に住んでるんじゃないのか?」
間抜け面。頭の上に?が見えるみたいだ。
「確かにこの国に住んでるけどさ、僕の家はもう少し山奥にあるんだよ」
「国民って皆この塀の中に住んでるんじゃないのか…」
なんか変な夢を持たれたあげく、それを壊された子供の様な顔された。むしろ僕はお前のその頭に呆れ顔だ。どんだけ馬鹿なんだこいつ…。
「当たり前だよ」
「…ん?お前、城に入ってたよな?」
「うん」
「で、この国には住んでないんだよな」
「正確には城下町に住んでないだけどね」
「…で?何が言いたかったんだ俺は?」
「おいっ!」
結局肝心な所を忘れたネックスにレーヌは思わずツッコミを入れました。
「いや、待ってくれ!今考えるから!えーっと…お前はここに住んでなくて、でも城に用があって、つまり王様に用があったって事で…お前勇者か!?」
「そうだけど」
「本当か!けどなんで勇者になったんだ?」
レーヌの言葉にネックスは立ち上がって身を乗り出しました。そんなネックスに若干引きつつもレーヌは答えます。
「話さなきゃいけない事なの?」
「そりゃそうだろ、一緒に旅するんだからな。相手の事を知っておいて損はないぞ?」
「そっか…って!なんで一緒に旅する事になってるんだよ!」
早速紙とペンを用意し始めたネックスを見て、それを慌てて止めるレーヌ。とりあえずネックスに紙とペンを仕舞わせると溜め息を吐いてテーブルに伏せてしまいました。そんなレーヌを見て、ネックスは心配そうな顔をしつつもとんでもない事を言いました。
「だってお前勇者だろ?勇者だったら俺の凶運もどうにかしてくれるだろ」
ネックスはさも当然の事の様に言ってますけど、勇者でも凶運はどうにもできませんよ?
こんな夜遅くに投稿する癖をどうにかしたいですね、はい。
さて、次回の話でようやく一区切りがつくというか、ストーリー(仮)の2行が終わった事になります。
2行のストーリーを書くのにどれだけ話数使ってるんだとか言わないでっ!
これからもノロノロとですが、ストーリーを進めてきたいと思います。