表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

やられた

「依頼の帰り、だ。

レイたちは何でここにいるんだ?」


「え、そりゃあ、まぁ・・」


やばいよ、ばれるよ、まんまえが俺の拠点だもん。


「買い物帰りだ、」


おれがどもっているとフミヅキが助け船を出してくれた。

が、表情はいつになく不機嫌で、じろじろとキサラギを見る。


「ーーそうか。こんな、夜中までしてたのか」


キサラギはものめずらしそうにおれたちを見た。

依頼なら、夜までかかってもおかしくない。内容によりけりだけど。


「っ、まぁ、いろいろあったから」


いろいろあった。それは嘘ではなかった。

ライラたちに巻き込まれ、挙句にばれて、バーで話して。


「---」


「---」


「---」


沈黙が、奇妙な気まずい沈黙が流れた。


「-レイ、またな。」


「うん、また明日、フミヅキ」


フミヅキは、キサラギをひと睨みして帰っていった。

フミヅキはキサラギのことをどうやら好いていないらしい。


「---」


彼の去る後姿を名残惜しく見送っていると


「レイ、お前は帰らないのか?」


と、不思議そうに言われた。


「え?あ、それは、そのーー」


思わずちらりと宿を見る。


「・・まさか、ここが拠点?」


「え、あ・・、うん、まぁ、そんなとこ。

じゃあね、キサラギ」


深く聞かれたくなくてそそくさ宿に戻ろうとすると、


「待て」


「!」


ぐいっと腕を引っ張られた。


「な、なに?」


上目遣いにそう聞くと、


「二人で、あいつと買い物してたのか?」


と、意外そうに聞いてきた。

眉を寄せて不機嫌さがにじみでている。


「あ、うん、そうだよ。

途中から乱入があったけど」


「乱入?」


少しほっとしたようなほっとしきれてないような声で問われる。


「うん、女友達にね。

だから二人っきりってわけじゃなかった」


「・・そうか。

ーーで、ここ、そんなに柄が悪そうにはみえないが?」


やっと少し安堵したような柔らかい口調で

怪しげに問いただされる。


「え、あ、うん、宿はね。

それより、手を離して。話すことないならもう遅いし寝るから」


「あ、あぁ、悪い。だがもう少し教えてくれ」


ぱっと、手をはなされ、おれはゆっくりと振り返り彼に向き合う。


「ん?なに」


「お前が言う柄の悪い・・って宿じゃないのか」


「うん、まぁ、そうだね。

柄というか、まぁ、大人ばっかりが集まるとこが地下にあるから。

男を連れ込むとーちょっと厄介で」


うなずきながらそう答える。


あーあ、どうしてもっとこう言い逃れができないんだろ?


宿はいたって普通だ。

広いし、お客で来る連中の年齢の幅は広い。老若男女だ。


そう、問題は、地下のバーだ。


大人たちがわいわいと盛る酒場のようなもの。

大の男が酔っ払ってくるようなとこ。


男を連れてきたら、喧嘩騒ぎになるのは見えてる。


まぁ、女の子も来るし、おれがいるときは喧嘩も止めるけど。


「・・地下の酒場か」


「ん、まぁそういうこと。他には?」


「ここからギルドまで距離があるけど

移動手段はどうしてるんだ?」


素朴な疑問を問われた。


たしかに、繁華街にあるこの宿と、訓練場などの場所が設けてあるギルドとじゃあ

けっこうな距離がある。


それが問われても仕方ないことだった。


「えーと、そりゃあ歩きだよ。

朝早くに出ることになるけど」


「一日中ギルドにいるといったよな?」


「うん、言った」


「何時にはいつもギルドにいる?」


「え、えーと、朝の十時くらいにはいると思うけど」


そんなこと、聞いてどうするんだろう?

なにがしたいんだろ


「そうか。」


「他には?」


「とりあえずいい。・・またな」


「うん」


そうして、会話は終わった。


かなり聞かれたけど、まぁ女であることはばれないし、

隠すのも怪しまれるから、まぁいいか。


と、軽い気持ちで

そのままおれは宿に入って、部屋に寝にいく。


***


翌朝、


「おじさーん、ムツキさーん、いってきまーす」


九時ごろに拠点をでた。


そして、いつものリュックと剣を片手に、

脚に力をこめて、地を蹴り、風のように走り出す。


ダッ、タタタタタタタタタタタタタタタタッ


歩く人々の合間を縫って器用に走り抜けつつ、

抜け道という人がガランといない穴場をくぐって


大きな屋敷の裏口に躍り出た。


がやがや、わいわい


朝から屋敷の入り口のほうでの

にぎわいようは耳が痛いほど聞こえてくる。


本来、ギルドに行くなら入り口の通りをまっすぐ駆け抜けるほうが早いが、

人はぐちゃこみだ。できれば避けたいところである。


それも毎日なんて、憂鬱だ。だから、この裏口が通学路ってことになる。


「よし、ここは今日も誰もいなーーー!?」


今日も誰もいない。


そう思って今日も屋敷の裏口を見るとーーーー


人影が、そこから出てきた。


それはーーー


「レイ、やっぱりここが通り道だったんだな。

来ると思った」


ふっとわらって俺を阻むように彼が立ち、見ていた。


「っ!?キサ、ラギ?

おまえ、なんでーーーー」


立ち止るしかなく、そのまま立ち止って、彼に近づく。


どうして、いままではいなかった。なのにーーーーっ

まさかーーーーー


「ここは俺の家だしな。

時間帯をお前に合わせただけ」


一緒に行こう と、言いたそうな響きをもった言葉だった。


「なっ!」


その言葉を理解して、おれは、眼を見開く。



や、やられたーーー!!


時間帯を聞いたのはこのことだったんだ!!


「十時ごろと、言ってたから、きっと、

走って一時間くらいの距離だろうと思ってここを通るかと思った。

歩いてきたとしても九時過ぎにはここを通るかと思ってな」


「!!」


「俺よりも強いんだ。

ランニングぐらいアップでしててもおかしくないと思って」


「キ、キサラギは・・おれを待ち伏せしてたのか・・」


「人聞きが悪い。お前に会いたかっただけだ」


「っえ」


今度こそ心臓をもっていかれた。


甘い爆弾発言に私は硬直する。

最後にも、ずっきゅんっと、レミィちゃんがやられてしまいましたー。


キサラギ、やるなw


フミヅキー、負けるなー。


次回、フミヅキ、嫉妬!??

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ