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てはじめに

「--別にいいが、俺らは遊びに来たわけじゃない。」


しれっと、彼は答えた。


必要以上に付き合いは絶対しないからな 


という有無を言わさない何かが威圧をしかけてくる。


不機嫌だ。ものすごく怖いくらいに。やばいぞ、あとでなにされるかーー。

「ええ。あなた方の買い物に付き合うだけですわ。

それがすんだら今日のところは帰りましょう。」


にこっとライラは笑った。


あぁ、ライラ・・!

なんで君はこんなフミヅキに対応できるんだ!


その強い心持を、おれにもわけてっっ


「え、ライラたちの買い物はいいの?」


「えぇ、もうすんでるから。ねぇー?リュシカっ」

「うん、もう大方楽しみました」


だからぜひ、ご一緒させて


という視線を向けられる。


「・・・・・お前のせいだ」


ぼそっとフミヅキがつぶやいた。


「ご、めん、フミヅキ」


おれも彼女たちに聞こえぬようにつぶやく。


まじ、怖い。

名前の件だって、いつ聞かれるかわからない。

どう説明する?女だとばれてはいけないのに。


「--で、服を買うのでしょう?」


「うん、そうだよ。

このへんの露店で安いものを買おうとーー」


ライラの問いかけに、俺はうなずいた。


「え、えーと、それはどういうものなのですか?」


リュシカがさっそうと具体的な答えを求めてくる。


「ほら、おれたち、傭兵だからさ。

身軽に動けて、やぶれてもいいような安いやつをーー」


「まぁ、破れてもいいだなんて」


リュシカが口を手で覆った。


「どうせ、剣があたればどんな布も切れる」


フミヅキがぶっきらぼうに言った。


「っそうですが、あまり薄いものはお勧めはできません」


息を一瞬彼女は詰めて、それでもそう意気込んだ。


「そうね。転んでも引っ張っても破れないようなものがいいわ。

どうせ、お金には不自由してないんでしょう?」


「まぁ、そうだけどさ。

ニ、三着はスペアがほしいんだよ。夏だし厚着は嫌だな」


「わかってるわよ。

じゃあ、露店を見ながら行きましょう?」


「色とか柄とか、お二人はどういったものがいいのですか?」


「んー、派手じゃないヤツ」

「シンプルなのがいい」


そう、おれとフミヅキが答えた。


歩きながら露店をみてまわり、

彼女らがおれたちの要求に合ったものをさがしていくのだがーー



***


「こういうのがいいの?」

「うん、そだね。上はシンプルでいいよ。」


「黒とか暗い色がいいのですか?」

「当たり前だ」


「じゃあ、それを買いましょう」


「他にはーーー、あ!」


「ねぇ、これなんか、どう?

布は厚いけど、通気性はいいし、」

「んー~、好みじゃないなー」

「・・似合わん」


「別にこのくらいいいでしょう?

どうせズボンにいろいろ仕込むのだから、上ぐらい

このぐらい仕掛け自由なくらいで」


「ズボンだけでも間に合うようなー」


「でも、かっこいいと思います」


「いらん」


「いえ、だめよ、買った方がいいですよ。

先ほど買ったのよりもいくつかほしいのでしょう?」


「だがいらん。

同じのでかまわない。」


「ですが・・」


「ズボンは、ジーンズでいいよ。

それか、カーゴ」


「だったら、カーゴにしましょうよ。

動きやすいでしょう?」


「まぁ、そうだね、けどーー」

「俺にそれはいらん。ジーンズでいい」


「え、でも、カーゴのほうが動きやすくて・・」


「その柄にされるなら、いらん」


「では、それなら・・---」



****


と、いざこざがあって、買い物が終わったのは日没だった。



「では、ごきげんよう、お二方」

「また、お会いしたら、お声をかけてください」


「えっ”、あ、うん・・また、ね」

「・・・ーーーーーーー断る」



と、二人が帰ったときは、おれもフミヅキも疲れ果てていた。



****


おれの拠点である宿のバーの入り口で二人は立ち止まる。


「疲れた」

「うん、ごめん、フミヅキ。おれ、ライラには勝てなくて」


眼をあわせられず、とにかく謝った。

なんか、申し訳ない感じがして。


「お前が、女に弱いなんてな・・」

「--フミヅキもおされてたね」


痛いところをつかれる。ぎくっとなりつつおれも負けじと言い返した。


「あーいう女は厄介だからな。つっかかるとさっきみたいにこじれる。

だがーー」


「?」


「お前が女と交流を持っているのは知らなかった」


「!」


「しかもお前、レミィと呼ばれたし。

なにがなんだかわからん。バーで話を聞かせろ。」


俺にはその権利があるはずだ と目で迫られた。


「そ、そうだね。

うん、話すよ。いずれわかっちゃうことだったし」


バーならムツキさんたちが手助けしてくれるかもしれない。

もとはといえば、

女の子と交流を得ることになったのはあの二人のせいだった。だから。



「ーーじゃあ、いくぞ」

「うん」


そうして、じゃっかんフミヅキに連れ去られながらバーに入った。


「お、いらっしゃい。バンダナくん。

おかえり、レイ」


オーナーがそう声をかけながらカウンターにひじをつく。


「うん、ただいま。」

「どうも」


おれはいつものはじっこの席に座り、

その隣に、フミヅキが座る。


「お、おかえり、レイ。

ーーなんだ、バンダナ君もいるのか」


ムツキさんが奥からカウンターに出てきた。

おれたちの目の前に居座る。


「ご注文は?」


「ジョッキ、一杯」

「あ、おれはジュースね、ムツキさん」


「もちろんわかってるよ、レイ。

オーナー、ジョッキ一杯と、おれのおごりでレイにジュース」


ムツキさんはオーナーに頼んだ。


「今、もって来るからな」


オーナーは奥にいったん戻って行く。


「二人がこうしてくるのは珍しいね、

なんか、悩みの告白相談でもしようとしてるの?」


ムツキさんは、バンダナを巻いたフミヅキとおれを交互に見る。


「まぁ、ね。

ムツキさんたちのせいで、女装(・・)がばれたんだよ!」


「え?」

ムツキさんが大きく眼を見開いた。


「!!」

フミヅキは驚愕した瞳で俺をじっと見てくる。


「ほら、ムツキさんたちがさ、おれを女装させて

町に出かけさせたことがあったじゃん。

そのとき知り合った女の子と遭遇しちゃって、

レミィちゃん、だなんて、よばれちゃったんだよ!」


おれはそう多少ごまかしながら言い切った。


「・・おまえが、女装?」


「!ムツキさんたちが無理やりさせたんだよっ

おれだって、はずかしかったんだから!!」


そう、そのとき、町であって、作った女友達があの二人だった。


「それで、か・・。

で、レミィって呼ばれたわけは?」


「あ、あれはーー」


「バンダナ君、僕たちがその名前、つけてあげたんだよ。

だって、かわいいじゃない?」


ムツキさんがニコニコと笑いながら話し始めた。


「!」


「ほら、レイって名前は、なんか女の子っぽくないし。

レイ自身がかわいいから、女装させるなら名前もかわいくつけようって」


「・・なる、ほど。」


フミヅキが妙な視線を俺に向けて、彼に向き直りうなずく。

ぐっと、彼がそのあと、ジョッキを傾ける。


「・・納得が、いった?フミヅキ」


慎重にそうおそるおそる聞いてみた。


「あぁ、納得した。全部な。」


ごくっ、と、のどを鳴らし、

すっきりしたような顔つきにフミヅキは戻り、

声の調子もいつものテンションに戻る。


「よかった、・・ほんとフミヅキ、機嫌が悪かったし」


おれはほっと息をついた。


「解決したようでボクもほっとしたよ。

じゃあ、ゆっくりしてって」


「うん、もちろん。」

「--どうも」



その後、おれはジュースをちびちび飲んで、

フミヅキはそれなりにお酒を飲んだ。



***


夜が更け、ちょうど深夜ごろ、

バーをでて、出口で二人は立ち止まった。


「お前も大変なんだな」

「まぁ、ね」


「また依頼が終わった後、飲むか」


「そうだね、じゃあ、また明日ーーー」


そういいかけたとき、


「レイ・・・?」


そう、後ろから、戸惑いの声が聞こえた。


「お前は、領主のーーー」

「っ、キサラギ!?なんでーー」


フミヅキとおれは振り返るそこにいたのは、


領主の息子キサラギだった。

今日、ギルドの訓練場で別かれたはずキサラギに。



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