関わりだす
「フミヅキーー!
どうしたの?あの続き?」
試合そっちのけでギルドに行って
次は領主の息子との手合わせ。
怒ってるのかな、と、冷やりとしつつ、聞くと
「いや違う。
買い出しの手伝いしてほしいんだよ。
それに模擬戦は・・まぁしたかったけど、
レイとあの領主の息子の試合見て初心に帰りたくなったから、
いいんだ。」
「あ、そう。
で、なんでおれが買い出しの手伝いを?」
性別を偽ってる立場上、人に関わりたくないのが本心だった。
借りとか恩は返すが、それ以外は・・
「次の依頼、手伝ってくれるっていったろ?
そのための準備だよ。少し日時が早くなった。
その分、なんかおごってやるから、な?」
ちっ、その手があったか。
舌打ちを隠しつつ
「っあぁーそれか!
わかった。まぁ、買い出しならフミヅキの頼みだし、
手伝うよ」
表面上は笑顔でやり取りする。
「あぁ、ありがとな。
じゃあ、今日の午後三時に私服でおまえんとこの宿集合で」
「うん、わかった」
おごりかぁー、まぁ、しょうがないよな。
男の友情も育むのは楽しい。
なんて、思いつつ、久しぶりの買い出し・・
女子で言うところのショッピングはやりたいなと思っていた。
ま、男装だし、男としてなのはやはり悔しいが。
男も悪くない。集まる女の子もかわいいし。
「フミヅキ、じゃあ、またあとで、」
「あぁ」
おれは笑って、己の拠点に向かうべく走り出したのだった。
***キサラギ視点
「・・・、レイ・ホワイト か。」
走って行った自分よりも小さい後姿を俺はずっと観察していた。
話が一区切りになったところで、レイは他の男へと向かう。
「---」
遠くで会話は聞こえないが、楽しそうだ。
同時に俺はあまり歓迎されてないのだろうとも思った。
今あいつの話しているフミヅキという男もそうだ。
俺を避けている目だ。
質問しすぎた俺にも非があったと思う。
だが、あからさまになんでと聞かれたのは少し傷ついた。
そして、自分を凌駕するやつの腕とやって
認めざるを得なかった。
興味が出た。
年は十五。剣を握って五年。家柄は隣の領地の人間。
そして・・男のなりをしているだろう女。
「--・・ふっ」
口調は男だ。まだ幼い部分もある。
だが、腕や力、いや、抱きとめた瞬間から体は女だと主張していた。
本当にみたわけではないが、たぶん、そうだと思う。
女だと疑ったあの瞬間から、こいつしかいないと思った。
今まで誰にもそばに寄せ付けたくはなかったが、こいつなら。
だが、ひとつ、引っかかることがある。
ーーーホワイト家は代々男しか生まれていない。
遺伝的にはずっと男しか生まれないはずだった。
なのに、あいつはーー。
だが、それと同時に、男装している理由にも納得がいく。
あいつが、フミヅキという男の下を去っていった。
フミヅキは俺をちらりと一瞥して去って行く。
これからどうあいつに近づいて行こうかと、俺は考え始めた。
***レイ視点
さっそくギルドから拠点の宿に戻って、私服に着替えた。
もちろん、男物。
試合用の木剣は護身術のために、もって行くことにする。
「さぁて、どうしようか。」
はっきりいってお金にはまだ余裕があった。
一、二週間は依頼なんかやらなくてもいいくらいの余裕は。
どうせ、依頼は数日もしないうちにやるんだからと、
多めにもっていくことにする。
身支度は整った。
時間を見れば、まだ二時だ。一時間もある。
部屋には寝台とたんすと、小さいけど風呂と脱衣所がある。
おれは自分の借りてる部屋から出た。
おれの拠点は二階の一室だ。
白い壁の廊下を歩き、階段を下りる。
たんたんたんっと、リズミカルに降りて、一階を見回した。
一階には、受付と、食事をするところがあった。
カウンターと、そう狭くもない食事どころ。
外と出入りする入り口がひとつある。
宿に泊まる人たちの利用する場所だ。
「よし、おじさんに挨拶しに行こう」
俺の目的は、一階ではなかった。
いや、宿ではない・・の間違いか。
時間つぶしに最適なところが、その下にあるのだ。
俺は一階の隅にある入り口付近の地下階段を下りた。
地下への道はそれだけじゃなく、外からのもある。
たんたったんと、すばやく降りて、
立ちはだかるドアをガチャリと開けた。
視界が、一気に暗くなる。
まるで、夜のような暗さに、明るくもない照明がいくつもあって、
どこぞのバーかと、つっこみたくなる雰囲気である。
カウンターが長く横に続き、いすが一定の間隔で配置されている。
ところどころに、テーブルと、いすもあり・・大人の居場所だと思わせる。
「おじさん、いる?」
おれはカウンターの一番はじっこに座り、店員さんに声をかける。
店員さんはスーツのような店の制服をきて、雰囲気が大人だ。
そんなのと知り合いな自分も大人な気がしてちょっと優越感。
「オーナーならいるよ、あっちでタバコすってる。
ーーおーい、オーナー、レイが呼んでます」
「レイが?いまいくぞ」
カウンターの置くから声が聞こえた。
おじさんだ。そう、おれが呼んだのは、このバーのオーナー。
「いまいくってさ、」
「ありがとう、ムツキさん」
大人っぽい店員さんは、ムツキさんという名前で、
ここに俺が来たときからいる人だった。
オーナーさんの親戚らしい。
「いいよ、別に。
で、レイは、今日も男の格好してどうしたの?」
大人の低い声が穏やかに聞いてきた。
ムツキさんは、おれが女であることを知っている。
そう最初から。でも、本名も教えてあるけれど、あえてレイと呼んでくれた。
「そーゆうこと、大きな声で言わないでよ、ムツキさん。
ばれたら即ギルドから追い返されちゃう。」
知り合いがいないか確認してからそう言った。
ばれては困る。
追い返されるってのはちょっとおおげさかもしれないけど、
あそこにいられないのは事実だからだ。
「しっかり周りは確認したよ、僕は。
で、どうしたの?」
動揺せず、普通にムツキさんは聞いてきた。大人だなー。
「一時間くらい時間をつぶそうかと思って。
フミヅキと買い出し。今回の依頼はてこずりそうなんだ」
そう正直に言うと、
「あぁー、あのバンダナの男ねー。
あいつは知ってるの?レイがその男装してるって」
嫌そうに聞いてきた。
ムツキさんはあまりフミヅキを好かない。なんでだろ?
「いや、知らない。
あっちが気を許してくれるからおれはそれなりに返してるけど、
深入りはしないつもりだからさ」
ここで特別心を許す相手は作らないつもりだ。
信頼関係は築きたいが、心までは深入りしたくない。
知人を増やせば増やすほど、ばれる可能性は高くなる。
だましてる、隠してるという罪悪感を感じる。だからだ。
「そっか、安心したよ。
まぁ、節度を持った関係が一番だよね。」
「おれは男として接してるんで
男の友情はあっさりしたものにしたいんですよ」
「ははっ、なにそれ。レイは女の子なのに」
「いや、あっちは男だと思ってるんだから
男の友情でしょう?」
「まぁ、それもそうだねっふはははっ」
「あはははははっ」
お互いおかしくて笑い出した。
笑いが止まらない。
そうこうしてるうちにオーナーが来た。
「おまたせ、レイ」
「こんにちは、おじさん」
「笑い声がきこえたけど、なんだい、真昼間から。
酔ったのか?」
「いや、違うよ。
今日は時間をつぶしにきただけ。
だからちょこっとおじさんにも挨拶しようかなって」
「あぁ、そういうことか。
ま、オレもレイをみれてほっとしたよ。
ちゃんとやっていけてるか少しヒヤヒヤしてんだぜ?」
「ごめんごめん、ほら、おれ、もう男にみえるでしょ?」
「バカいうんじゃないよ、いつまでもレイはオレの孫娘だ。」
「えーーーーー」
「そうですね、オーナー。
ボクからもかわいい妹みたいな感じですかね」
「うそーーーーー!」
そうして、真昼間から再び笑いが起こった。
質問の答えー。
えーと、文月や如月と呼ぶ暦は
陰暦 とよびまーす。
月の暦だそうでーす!
ではまた質問
睦月は何月でしょう?