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刃を交えて

「本気でいくから。

ちびって言ったこと、後悔させてやる」


おれは剣を構えた。


正面には片手で木剣をもつ領主の息子がいる。


青がかかった髪に紫の意志の強い瞳。

それは、どこかおれを見定めているかのようなまなざしで。

なにか疑っているようなまなざしで。


なんとしても、この試合は勝つって決めた。


自分には、知られてはならない秘密がある。


だから、ここで、負けたら、疑われる。

そんな切羽詰った状況にいると思った。


おれはーー、・・いや、


私は、女だ。

男とは違う体つき。


体が密着したとき、感づかれた気がした。


女は一般常識で言えば、ひ弱で脆いものだ。

だから、勝たなければ、ならない。


「いざ、勝負!」


足に力を入れて地を蹴った。



ひゅっーーーキンッ!!


先に攻撃をしかけて刃を交える。


ガッ!ガガッ!!


「っ、やはり、やるな」


容赦なく切りつける自分に彼はつぶやいた。


「それはどうもっ!」


そのままぐいぐいと、剣を器用に使って押していく。


キンッ!ガガッ、キンッ、ギギンッ


「---」

「っ」


ギギンッ、ッガガッ


だが、やはり男の剣は重い。


女が振るうのと、男では力が違う。


でも、

剣の腕はほぼ互角。


いや、おれのほうが上だった。全体的に言えば。


体つき、力の強さは違えど、

おれには、俊敏性やそれぞれ高い身体能力がある。

スキルを磨いてきたのだ。


「っ、何年だ」

「?」


ザッっと、お互いが退いて、剣を構えなおした。

そのときに、聞かれる。


「なにが?」


「剣だ。剣をもって、何年になる?」


「・・・」


俺は、まゆをよせた。

しばし、頭の中には、今までの記憶がよみがえる。


それは、幽閉されていたときと、いまのときと。


「五年」


おれはつぶやいた。

幽閉を開放されて男になるためにもった剣。

それは、五年前のことだった。


あまりいい記憶はない。

だから自然と、声は低く、表情も暗くなる。


あまり、話したくないことだった。


「!!」


彼が目を見張った。


その隙に、再びおれは切りかかる。


「っ、年はーー」


「お前が勝ったら教えてやる」


おれの剣をギンッっと受け止めて、息を呑む。

再び、彼が聞こうとした。


そこを一度力任せに本気で剣でたたいて黙らせる。




ーーキサラギ、お前は私には勝てないよ。

   今の私には、ぜったいに。




ギンッッキンッ、ガガッ、ギギンッ


それから何度も剣を交えた。

切りつけて受けて、お互い本気でやりあう。


おれは自分の体の小ささをうまく利用して、打ちにくいところばかりを狙う。


体格の差はこういうときに便利だ。

ちびだってあまくみちゃ、いけない。



「っ!」


彼がうめいた。

隙のない構えがくずれ、一瞬隙がつくられる。


「すきありっ!」


俺は剣の根元を思いっきり、たたきつけた。

上へと、刃に力を加え、


ッギンッ!!ッガンッ


っと、ふっとばす。


「っ!」


ふわっーーッガ、ガタッ ン


ふわっと剣が舞い上がり、地面にたたきつけられ、落ちる。


ーーースッ


おれはキサラギののど元に矛先を向けた。


「っー」


「おれの勝ち。

どう?チビに負けた敗北感は」


少し驚きの混じった瞳が向けられ、

勝ち誇った笑みで、まっすぐに彼を見て言ってやった。


おれは、男だ。

そう思え。いや、そうとしか思えないだろう。

男だから、負けたのだと。



「・・完敗だな。

チビと、言ったのは訂正しよう、レイ」


彼はふっと自嘲気味に笑って、敗北を認めた。


「あっさり認めるんだ。

もっと強情なやつだと思ったのに」


俺は矛先をおろして剣を鞘にしまう。


「一瞬の隙でこうもあっさり俺がやられたのはお前が初めてだ。

俺はお前を認めるよ、レイ」


彼は手を差し出した。


「?なに、その手は」


首をかしげて彼に問う。


「っ、握手だ。仲間だと認識した相手には敬意を示すのが

ギルドの習わしだろ」


「・・そっか。そういえばそうだった」


と、言って、差し出された手を握り返した。


「--で、年は本当にいくつだ?」


と、手を離したところで、聞かれる。

見下ろして、おれをじろじろといやな目で見てくる。


「おれが勝ったんだから教えないよ!」


誰が教えるかっ

チビっていわれたこと、まだ根に持ってるんだからっ


「俺が勝ったら教えるとお前は言ったが

お前が勝っても教えないとは言ってないだろう」


ふっと、笑みをもらして彼は言った。

おれをどうやら丸め込もうとしてるらしい。


「っ、屁理屈」


ギッっとにらみつけて言ってやる。


「なんといわれても結構。

それで、どうなんだ?」


「・・キサラギは・・

おれがいくつに見える?」


「そうだな・・十三か、十二か、そのくらいだな」


「!!」


俺は十五だ!ばかやろう!!


カッと、血が頭に上り、そんな子供じゃないと

いいたくなった。


「っちがう!そんな年下じゃないよ。

みんなそういうんだよ、坊主だのチビだの子ども扱いして」


怒りを抑えつつ、彼の顔色を伺う。


「・・じゃあ、十五?」


「・・そう。そうだよ。もうじき成人だ。

子供じゃ、ないんだよ」


そうだ。もう成人する。誕生日は近い。

いつまでも子供じゃない。甘やかされちゃいけないんだ。


「・・・俺のひとつ年下か。」


ぼそっと彼がつぶやく。


「じゃあキサラギは十六か。」


おれはそういって彼を見上げた。

身軽に動ける服装で、剣の鞘や、物を入れる袋など、腰についていたりする

傭兵の格好だった。


魔力の気配も相当大きい。


「あぁ、そうだ。

ところで、ホワイト家がなんでこっちにきている?

あのギルドにいたってことは、傭兵でもやってるのか?」


「まぁね、やってるよ。

見てのとおり、依頼にありつく賞金稼ぎだ」


くびをすくめてうなずいた。

きている理由はいわずに。


「・・じゃあ、ギルドに住み着いてるのか?」


「いや、違う。拠点はあそこじゃない。

ギルドは住み込みだと高いから。」


自然な流れの話だ。

否定する理由もなく話すが・・・え、ちょっとまって、


「ふーん、じゃあお前はどこでー・・」


彼が言いかけたところで、

おれが答えてばかりじゃないかと、思い当たった。


「キサラギ、ストップ!、、なんでそんなこと聞くの?」


すかさず、そう切り返す。

おれが答えることは俺にメリットはないはずだ。


「・・聞かれてもまずいことか?

べつにいいだろ」


「べつにそういうわけじゃないけど、

あんまり、拠点は教えたくないな。柄のいいとこじゃないし。

でも、あくまで拠点って話だけで普段おれはここにいる。

これで満足?」


「・・・そうだな。

いまところは」


ほかにも聞きたそうな、疑いの視線が向けられるが、

彼はあきらめたようにうなずいた。


そうして、話が切れたところで



「レイーーーっ」


と、呼ばれた。


「あ、フミヅキ!!」


声がするほうに振り向くと、さきほどおいて行ったフミヅキがいた。


手を振っている。はやくこっちへ来てほしいみたい。


「キサラギ、おれ行くから。」


「あぁ、またな」


そうして、おれはキサラギに背を向けて走り出した。


質問の答え


如月は、二月 でした~!


では、古くに使われた 文月や如月は、何の暦でよばれたもの

でしょう?


ヒント:今は太陽暦らしいよ^

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