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一人の男との出会い

ふわっと、銀に紫が薄くかかった白紫の長い髪をひとつに束ねた房が舞い上がる。

走るたびに右往左往に揺れた。


「こっちだ、」

「わかってる!」


スタタタッ、ガチャッ、-バタンッ!


グローブをはめた手で剣を鞘に入れながら走り、

傭兵所の扉に行き着き、すぐさま おれは開け放った。


「!」


中の景色が視界に広がった。


ガヤガヤガヤ、ザワザワ・・ザワ


二人の大男が酔っ払った顔でとっくみあいをはじめていた。

遠くでほかの人はよどめいている。


その状況を理解すると、


「やめろっ!」


と、叫び、間の中に割って入った。


自分を挟む二人は小さい自分に目を向ける。


「あぁ?、なんだよ、ボウヤ、

子供は黙ってな」


「でも、ここはみんなの場所だ。

すぐにやめて」


「あぁ?坊主がなまいきをーーー」


ヒュッーー


男の一人が自分に向かってみぞおちを食らわせようとこぶしを振るった。


ヒュッ、パスっ


軽々とよけて、おれは再び言う。


「おれを子供だと思って甘く見ないで。

でないと、痛い目、みるよ?」


子供、といわれてカチンとこないはずがない。

これでも、十五にはなったんだ。

成人は十六。もうそう変わらない。


こめかみにしわをよせて、目を吊り上げて行ってしまうのも

声がすごむのも仕方ない。


「このあまっ、調子に乗りやがって、っーー

なにが痛い目だっ、坊主に何ができるって??」


ぐいっと、おれの胸倉をつかんで、引き上げる。


ふわっと、足が床から浮いた。

それと同時にのどが締め付けられる。


「っ、だから、坊主だと、おもって、甘くーー」


相手は大の大人だ、そろそろ本気をーーー


つかまれた相手の手に自分の手を置いたところで、


「いい加減にしろ。

そんなちびにまであたるな」


バタンッと、扉が再び、蹴って完全に開け放たれた。

同時に、声が自分たちに向けられる。


低く、あきれた声だった。


チビ!?


「!?」

「なっ!?、お前は」

「領主の!!」


声のするほうに振り向くと、

軽装をした青い髪で紫のかかった瞳の男がいた。


大の男が、眼を見開いて、そいつを凝視する。


自分にも、その容貌に心当たりがあった。


「いかにも、あの金の亡者の血を接ぐ者だが?」


不敵な笑みを浮かべて、その場に彼は仁王立ちしていた。


そう、こいつがーー、傭兵ギルドを作り上げた領主の息子だった。


「チッ!今回はこのくらいしておくさっ!!」


グッーー、


男が思いっきり俺を上に引き上げた。


「え?」


ッバッーー!ヒュゥウウーーー


そのままぐいっと、領主の息子のほうに投げ出される。


「っうわっ」


ヒューーーッ!


おれは、おもわず、叫ぶ。


ぶつかるーーー!!

ぎゅっと、目を閉じて痛みを覚悟した。


ドンッ!!

強い衝撃とともに、ひゅっ、と背中に腕を回される。


「っ。ぇ」


そのまま、おれと一緒に倒れるかと思ったがー・・


「・・ふんっ、次はないさ」


と、彼は平気で呟き、しっかり二の足で立っている。


衝撃がかかった自分を簡単に抱きとめたのだ。


体が密着しているのにもかかわらず。


・・・え?密着??


そううつむいたとき、自分の身体と、彼の体が隙間なくくっついていた。

服越しに、彼の体のラインと鍛えようを感じる。


「って、わっ!!」


ま、ずい!!


おれはあわてて彼から離れる。

ずてっと、そのまましりもちをついた。


「・・・---なんだ、助けてやったのに」


領主の息子は眉をひそめておれに呟いた。


あたりはシーンとなって、さっきの二人はいつのまにかどこかに消えている。


「え、あ、--うん、どうも。」


とりあえず、しりもちついたまま、

助けてもらいってそれが解決したことについて礼をいうと、


「ふん、礼などいらん。どうせ、本当は助けも要らなかったんだろう?」


と、自分の力量を測るような眼差しでみてきた。

思わず、グローブ越しに剣を収めた鞘に触れる。


「え、あぁー・・まぁ、そりゃぁ、おれもそれなりにはー・・」


できるから。


と、いおうとしたところ、


「おれ・・?ふんっ、おれ、ーーね」

「ぇ?」


「まぁ、いい。ほら、立て。

助けてやったんだから、お前の剣の腕を見せろよ」


ほら、っと、おれに手を差し出した。


「ー・・?」


ためらいながらも差し出された手をとって、立ち上がると、

鞘に無造作に入れられた剣を示唆された。


「チビでもギルドで

助けを求められるくらいはできる方なんだろう?」


どこか、見下された言い方だった。

確かに、彼のほうが身長は高く、頭一個分以上、差があったが。


「!ちびって、いったな。領主の息子だからって

おれを下に見て・・・。わかったよ、やるよ」


チビ その言葉にカチンと来て

やってやろうじゃないかと、本気で思った。

領主の息子とて、容赦はしない。ここは実力ですべてが決まる下克上の世界だ。


「ふん、相当剣の腕に覚えがあるようだ・・。

俺はキサラギ。キサラギ・レンタイン。

お前の名は?」


男は名乗った。おれをみて、

闘争心か関心かなにかを強く抱いた目をしていた。


「レイ。おれは、レイ・ホワイト。」


おれはいった。まっすぐにめをそらずに。

・・ほんとは偽名だけど。


「!ホワイト家か、隣の」


少し彼は目を見張った。

なんだか信じられないような視線が自分に向けられる。


それもそうだ。

この傭兵ギルドがあるのは、レンタイン家の領地にある。


レンタイン家は公爵家だ。強く広く豊かな領地を持っている。

どっかの小さい国並みに広い土地を。


さっきもキサラギがいったように、領主はキサラギの親であり、

金の亡者。


しかし、民には支持される大物。

土地には、多くの国民が住み着き、町を作り、村をつくり、

もう領地自体がひとつの国になっているといっても過言ではない。


それに比べてその隣にある領地の持ち主は自分の親。

領地はレンタイン家の半分にも満たない。


だが、その分、特殊な民族だけが住まい、領地を経営している。

そして、身分は公爵家だが、彼らが上級ならば、こちらは下級だ。

身分的には格下の部類に入る。



「そうだよ。身分じゃ貴方に勝てないけどね。

ーーで、やるんでしょ、決闘。

今から?」


「あぁ。いくぞ」


キサラギが、きびすを返して、ギルドから出ようとした。

そこで、


「おーい、キサラギ、ほしかった依頼書あるぞ?」


と、ギルドの受付人が言った。

おそらく知り合いなのだろう。


自分もその人に受け付けてもらう。


「今日はいい。気が変わった」


彼は手を振り、そのままギルドから出た。


訓練場に足は向かって行く。


「レイ、行くぞ」


なれなれしく呼び捨てておれをせかした。


「ちょっ・・、よびすて!?」

「なんだ、ちびって呼ばれたいのか?」


「っいや、レイでいい。」


「俺はキサラギでいい。そう呼べ。

敬語もいらん。もっとも、お前にはできないだろうが」


「っ!分をわきまえるときくらい、使えるよ。

でも、お前が・・キサラギがそういうなら、おれは使わない」


「ふん、--それでいい」


ふっと、彼は笑みを浮かべて、訓練場の中を借りたところで、立ち止まった。


「さぁ、やろうか」

質問の答え。


文月は 七月でした~。


では、如月(キサラギ)は?

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