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邪魔だと思うかはあなた次第

フミヅキの後を追って、おれは訓練場に入った。


訓練場はタイルが敷き詰められていて、

大きな弧を描いた舞台がかなりある。


ギルドの規模はさほど小さくないからだ。


大きな弧はリングを描き、中央には数字が書いてある。

今回使うのは 2番だ。


「」

「今日は、この前の決着つけるぞ」


フミヅキがそう言って、荷物をリングの外へ放り投げて

木剣を片手でくるっと回転させて手に持ち直した。


「オーケー!」


そういいつつ、自分も荷物を降ろして

周りを見回した。


キサラギがいないか確認するためだ。


ギルドまでは執拗に後を追いかけてきてたし、

頭の片隅では 見られてるな という感じがしていた。


「あれ?いないや。」


「おい、はやくしろ」


ポツリとつぶやいた自分の声は聞こえてなかったのか、

彼がせかす。


少し機嫌が悪そうにも思える。

目がするどく細くなって俺に視線を向かわせる。


「う、うん」


生返事して周囲に目を泳がせながらも、木剣を手にとって、

リングの中に入った。


「どうした?」


剣を構えて彼が不機嫌そうに眉を寄せる。


「えっと、キサラギはここまできてないなと思ってさ」


「」


そう答えると、彼はむっとした表情に一瞬なり、それは消えて

不機嫌な仏頂面へと表情が動いた。


「あんなやつ、いらん。

おまえが気にすることじゃない」


「まぁ、そうだけどね。

どうも、視られてると警戒解くわけにはいかなくて」


いい訳がましく、そう言葉をつなげた。

けれどそれは実際、本当のことだ。


聞かれ、問いただされ、追いかけられ、視られて。


そんなことされたら、誰だって嫌になる。

いや、それ以上に、おれは他人に興味をもたれてはいけない存在だ。


おれは・・私は、女 なんだから。


「確かにあいつは邪魔だ。

だがそれよりも俺をみてないと怪我するぞ」


ヒュッーーー”


彼が動いた。地を蹴って、真っ直ぐ自分に剣を振り上げる。


「え、あ、ちょーー」


急になんの合図もなく彼が動いたのを見て、

あわてて、受身の態度をとった。


ガギンッ


かろうじて受け止めた剣が、鈍く音を立てる。


バランスがくずれかける。

そこをしつこく彼が


ガッ、ガッ、ガッ


と、剣を振り上げては振り下ろして、剣が交じり合う。


「ひゃっ・・お、おい、フミヅキッ」


ついバランスを崩して、どすん としりもちをついた。


そこに容赦なく剣を彼は横に凪ごうと振り上げた。


「今日はあっけないな」


勝利の予感に彼の表情が笑みを浮かべる。


「!」


やられる!


そう思ったそのとき、彼の動きがスローモーションに見えた。


ヴァアアアンッ


一瞬、その間、視界が自分の見てるものではない気がした。


「」


ゆっくりと

自分の首に突きつけられそうな剣の切っ先を間近にみて、

身体はそれでも反射的に、うごいた。


ヒュッーーーーーーーー


剣の切っ先を突きつけられる、ほんの一ミリ前、


ヒュッーーズガッ


足を器用に動かして、彼の足へと真っ直ぐに横凪に当てた。


グラッ


「っ!?」


勝利を確信してた油断が仇になって、フミヅキの体が傾く。


その刹那ーー、ヒュッンッースシャッ”


「っっ”」


フミヅキの体が傾いた衝撃で、

首筋に剣がわずかに小さくかすった。


ピシャッ 、ツーーーー


血が細く少量の血がとびちった。

そして、ドクンッと心臓が鼓動を打つたびに血が滴る。


ドスンッ


「っ_!」


彼がしりもちをついたとき、剣が彼から離れたところに落ちる。


「」


「」


わずかな静寂。


地に散らばった紅い血。


「っ、おいっ」


フミヅキがはっとして俺に声をかけた。


「ーーーー」


「レイッ」


ふと、名を呼ばれた。それと同時に正気に戻って

フミヅキを改めてみる。


しりもちをついてたはずのフミヅキは、もうあっという間に

自分の傍にいた。


「!、あ、フミヅキ・・」


立ち上がろうとして、一瞬、体がバランスを崩す。


そういえば、足がフミヅキを蹴ったときの態勢だった。

すぐには立てなかった。


「おい、お前、血がーー」


「!っっ。あ、・・だからか」


首を触ると、血が滴ってた。


片手で傷口をふさぎ、あてがう。

もう片方で、薄い布をズボンのポケットから取り出して、

手についた血をぬぐいながら止血するために少し強くあてがった。


「悪かったな、いきなり仕掛けて」


自分が傷の手当をしてる間、彼はひざを突いて俺を

不安げに見ていた。


「ん、別にいいよ」


彼は少し罪悪感を感じている様な口調だった。


しかし、これはフミヅキのせいじゃなかった。


これは自分の・・、

 自分のコントロールの範中を超えた出来事 のせいだった。


なんでーーあのとき、一瞬あんな・・・


うつらうつら考えながら言葉を返して考える。


「それより、おもいっきり蹴ったけど、大丈夫?」


なぜか頭がぼうっとしてるが、気にせず問うと


「痣にもなってない。安心しろ」


と、蹴られた箇所をズボンのすそを引っ張って見せてくれた。

鍛えられた足には、痣のような色の違うものはない。


「そっか、よかった」


「あぁ」


私の言葉に彼が頷き返した後、


「」

「」


きまずい沈黙が襲った。


なんか・・嫌な予感。ほとんど他人事のようにそう思う。

思考がかすんでるのだ。


深く考えられない。


しかし、やがて治療をし終えると、


「レイ、お前さ、

俺が最後お前にやったあのときーー」


彼が口を開いた。


ちょうど、そのとき、


「レイ、手紙だ!」


そう叫んでこちらに駆け寄る人が割って入ってきた。


「・・キサラギ?」


なんでここにお前が・・・って、手紙?


助かったぜ、キサラギ。

そう心中は思いつつ、眉を寄せて寄ってきた彼に問い掛ける。


「・・・チッ」


お前か とばかりに舌打ちをフミヅキがする。


「ほら」


そう言って、自分にキサラギは手紙を手渡す。


「う、うん」


受け取って中身をみた。


その、内容は


“今日の午後、

あなたの宿の地下のバーでおまちしておりますわ。

何の話かわかっているでしょう? ライラより。”

“私も気になります。 リュシカより”



というものだった。


「!!」


これがどうしたら驚かずにいられようか。


「なんで・・・」

なんで、二人がいきなり、ギルドに手紙なんて!!


思わず声を漏らす。


「どうした?」


「ん?」


フミヅキが不機嫌そうに眉を寄せた。

キサラギは首をかしげる。


「え、あ、なんでもない。

ただ、急用ができて、今日の午後はやれなくなった」


グシャッ 手紙を思わず握り締めて、しわくちゃにする。


「?そうか。残念だな。

帰りは俺が送る」


「フミヅキがそういうなら俺もいいか?

気になるし」


不満げな二人がそういった。


「おまえは来るな。

俺一人で十分だ」


「そんなことないだろ」


「俺が言った。送るのに二人もいらん」


「俺、お前に ライバル宣言、したはずだけど:


二人が言い合いを始めた。


呆然とするしかない俺は、このとき、


手紙をこんなとこまでよこした、女である二人を恨みがましく思ったのだった。



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