はじまりは
「おぎゃぁあ、おぎゃぁ」
とある裕福な屋敷の中で子供が生まれる声が聞こえた。
「まぁ、この子ーー!」
「おん、なーー!?」
子供の泣き声のように悲鳴を上げるその父母がいた。
その家には、けっして、女は生まれてはならなかったのだった。
****十五年後
キンッ、キキンッ、--ザザッ ーーキンッキンッ!
領主の経営する傭兵ギルドの一角の訓練所で、
二人で模擬試合を行っていた。
剣で互いに打ち合い、はじき返しては後ろ下がり、また攻撃する。
「レイ、お前、やるな」
「そっちこそ」
お互いが笑みを浮かべた。
戦いを楽しむ笑みだ。さぁ、本番はこれから とでもいうように剣を構えなおし、
いざ、勝負!---ってところで、
「レイ!来てくれ、傭兵たちが喧嘩を・・」
と、中断が入った。
その声に、剣をおろし、レイと呼ばれた人は振り向く。
「わかった、今行く!」
そう応え、呼ばれたほうへと、駆け出した。
「あ、おい!待てっーこの続きは」
そうやって模擬戦相手は呼び止める。
赤と黒の混じるバンダナをした黒髪の男が、反射的に、レイの腕をつかんだ。
「ごめん、フミヅキ、勝負は次にお預け!」
それと手を離して と、言って、
彼から抜け出し、レイはごめん、と手を合わせて頭を下げる。
「っちっ、わかったよ。次は勝ち負けをはっきりさせるからな」
フミヅキと呼ばれたその人は、舌打ちしながらうなずいた。
「サンキュッ、
フミヅキ!ものわかりがよくて助かるよっ」
レイは軽くウインクして、
呼ばれたほうへと今度こそ駆けて行った。
その幼さを残す少年の後姿を、フミヅキは名残惜しそうに見つめる。
フミヅキにとって、その少年は、模擬戦の相手であり、
同じ傭兵の仲間であった。
だが、時々思う。男が集うそのギルドで、最強であり最年少を誇るあいつは、
本当に、体が小さい と。
重い物がもてない、力が弱い、おひとよし・・、男かお前はと、疑いたくなる様。
「あいつ、うで、--細いな」
彼はポツリとつぶやいた。
思わず捕まえてしまった自分の手のひらを見つめて思う。
そう、同僚に思われる レイ という人の物語。いざ、開幕!!
次回からはもっと長いでーす。
これは序章!
誤字訂正。騎士じゃありません、傭兵です。
騎士予定を手直ししました。すみません。
そして読者の方々にご質問
文月は何月でしょう?