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第七話「討伐作戦 開始」

「それではこれより、『悪鬼』討伐作戦を開始する! 冒険者諸君、存分にその魔術の実力を発揮してくれたまえ!」


 討伐作戦の説明が終わり、班分けやアライアンス結成を済ませた頃、遂に『悪鬼』討伐作戦開始がギルド支部長によって宣言された。

 指示に従って冒険者たちが僕の横を通ってダンジョンに突入していく。

 中には拝み倒しながら通過する奴もいたが、残念ながらその先は君たち冒険者の管轄領域だ、僕に期待しないでくれ。


 さて討伐隊がすべてダンジョン内に突入した後、すぐにタマの【千里眼】による配信中継が実行されダンジョン内部の映像がモニターに可視化される。

 僕はもちろんスマホで視聴続行。

 僕の分の視聴者数は僕が増やす。

 推し活だ。


 とはいってもまだ突入したばかりですぐ『悪鬼』との戦闘が始まるわけもなく、地上で【千里眼】配信をするユキトイキは視聴者との雑談を行っていた。


『ついに始まったぞ『悪鬼』討伐作戦。今日の配信はかなりグロテスクになる可能性が高いからの、苦手な者は気を付けるんじゃぞ』

『討伐作戦はタマの【千里眼】と配信魔術で状況把握~、各アライアンスに割り振られた通信魔術役にここ作戦本部から必要な指示を渡す、といった感じですね~』

『ここは地上だ! 弱い私たちでも問題はないぞ!』



〈コメント〉

:自分で弱いって認めるの、流石の潔さ

:まさかタマちゃんの【千里眼】にこんな使い道があったとは

:いつも危ないを回避して脱兎を行使する【千里眼】だったのに

:これはユキトイキに新しい道が示された一件になりそうですね

:ミオとレン、完全に賑やかしだけどね

:賑やかしは大事



 討伐隊の主力が推定される『悪鬼』の潜伏領域に到達するまでは、こんな感じのいつものユキトイキ配信が行われた。

 片手にお菓子もジュースもないのは不満だが、いつの間にか受付嬢が塩辛系のおつまみを用意してくれていたのでそれをつまむ。

 僕の鬼の面の【魔法霊装】は顔上半分しか覆わないタイプだから飲食も問題ないのだ。

 ……というか出されたおつまみが割と渋いのだが、僕何歳くらいだと思われてんだ?

 だがこれも美味いからヨシ。


『じゃがあれじゃのぅ。今討伐作戦は災厄種討伐の名目で招集がかけられたんじゃが、実際相手が同じ人間となると、例え殺人鬼でも殺すのは躊躇われるのぉ。いや慈悲とかじゃのうて人間の理性がな?』

『わかりますよ~。始末する必要性があるとはいえ、殺人鬼と同じ人殺しをするのは躊躇われますよね~』

『魔術云々に関わらず、人殺しは御免だな……』


 塩辛をつまんでいたら雑談はそんな話の方向へ。

 僕は思わずククと微笑みを溢す。

 それでいいのだ。

 彼女たちも魔術師、冒険者と登録を重ね契約書に署名した身ではあるだろう。

 けれどそれは人殺しを歓迎することの意ではないはず。

 まともな人間なら同じ人間を殺すことに抵抗を覚える。

 傷つけることだって嫌がるだろう。

 それが普通で、あるべき健全な姿だ。


 だが僕は執行者。

 執行者は人を殺す。

 それが必要なことだと幼い頃からの任務で嫌というほど理解し、そして理解してしまった自分に気付き、執行という殺人を躊躇わなくなった自分を知り……結果僕は他者から距離を取った。


 彼女たちが僕のようになる必要はない。


 必要な殺しを、ただそのための人間がしているだけ。

 そんな形であればそれが一番だと思っている。


 そういう意味でユキトイキの推し活はいい距離感なのだ。

 配信越しに見る専で彼女たちの平和な姿を見守る。

 強いわけでもない、気高いわけでもない、ちょっと見た目の個性が強すぎるだけのどこにでもいる魔術師系配信者。

 僕の最推しとはそういう形で日常に楽しさを与えてくれる存在だ。

 エンジョイ勢で平和ボケしているくらいがちょうどよかった。

 彼女たちが平和に染まり切っている姿こそ、僕の執行者としての人生に意味を持たせられる。


 僕は執行者。

 人殺しだ。

 だからこれからも必要な殺しは僕がやる。

 秩序の維持という名目の中で、この汚れ切った手を更に汚すのだ。

 物語の主役たちがその綺麗な輝きを曇らせないように。

 僕は外側で人を殺す。

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