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第六話「執行者 コード『魔人』」

 ギルド支部長からの断言。

 討伐目標『悪鬼』は位階指定Aの冒険者。


 その事実にはつい今まで歓喜の声を挙げていた冒険者たちも押し黙る。

 単純に考えて位階指定Aの冒険者を数合わせのCやDで対処できるわけがない。

 彼らはこう考えていたことだろう……討伐作戦と言っても精々位階指定Bが限度……と。

 無意識にそう断じてしまう程度には、位階指定BとAの間には大きな差がある……らしい。

 僕には違いがわからない。


 ただ彼らの顔は位階指定Aの冒険者が一人作戦に参加してくれることより、敵として対峙しに行かなければならないことに強く恐れを感じているようだった。

 そんな冒険者たちの心を知ってか知らずか、ギルド支部長は苦言が出る前に続きの言葉を捲し立てる。


「なお魔術師として、そして魔術を行使する冒険者として、この場この作戦に呼ばれた諸君らには強制的な討伐への参加が求められる。それは魔術師、冒険者と登録を重ねるうちの契約内容に含まれた内容であることを自覚してほしい」


 そのギルド支部長の言葉には皆黙るしかない。

 それはそう、そういう契約なのだから。


 魔術師になるにはギルドで魔導書を読む必要があるのは前に述べた通り。

 そして魔導書さえあれば誰でも魔術師になれることもまた、前に述べた通りだ。

 ならなぜ国は魔導書を重く管理する?

 誰でも学べる強い力があるのに勿体ない……そんな考えの者も一定数いた、というかいる。

 だが当たり前のことなのだ。

 強い力を無条件にばら撒いていたら秩序を維持できない。

 実際管理してなお魔術での犯罪は後を絶たないのだから、これ以上の拡大など執行者としても御免被る。


 そんな魔術という力を根本から絶たない理由は、一言でダンジョン。

 ダンジョン内で溢れる資源や未知のアイテムは、人を、そして国を動かすのに十分過ぎる魔力を持っていた。


 資源が欲しい。

 革命を起こすようなアイテムが欲しい。

 ダンジョンとは無尽蔵の宝物庫だ。


 今となってもダンジョンの仕組みや謎は一切解明されないままだが、簡単にわかったそれら欲望を刺激する情報は人をダンジョンに潜らせた。

 そして現代兵器の数々が無残に打ち砕かれ、代わりに台頭したのが魔術という力だったわけだ。


 日本国内だけでもダンジョンは百以上存在するのだ、一般にも解放してどんどん宝を集めてもらいたいと国は思う。

 だから一般人に〝有事の際〟や〝魔術行使を求められたとき〟という契約内容を綴ってでも魔導書を公開した。


 結果人々は魔術を求め、国は資源やアイテムという宝の山を得るに至った……と。


 つまるところ、ここにいる冒険者連中は全員が全員、こういう事態に力を貸す条件で魔術を習得している。

 実際そのときになったらやっぱり無理ですは通らない。

 それを通したいなら冒険者としても魔術師としても完全に引退し、その上で監視の下生きるしかないのだ。


 ここに集まった冒険者の中に、今まで築き上げたそれらを捨てられる者はいなかったようだが。


 恐れや不満はあっても反論を口にしない彼らを見届けたギルド支部長は、ここで今作戦に携わる執行者……つまり僕の紹介に移った。


「『悪鬼』が地上へと逃げ出して来た際、それの始末をつけてくださる執行者、コード『魔人』殿だ。彼はダンジョン入口横で待機し、『悪鬼』による地上への被害を出さないことを約束してくれる。はっきり言うが、無理に『悪鬼』を倒さず地上へ追い立てることも策の一つと認識しておいてくれ」


 本当にはっきりと言い切ったギルド支部長の紹介に、軽く片手を挙げて応じる。

 スマホ見ながらで悪いが、推しの配信で君たち冒険者の勇姿を見届ける構えだ。

 別にできるなら本当に地上へと『悪鬼』を引っ張ってきてもらって構わない。

 人を殺すのには慣れてしまっているので。


 スマホに顔を落としながらの挨拶に若干不満そうな冒険者たちはしかし軽く頷くだけ。

 こんなんでもいるといないのでは安心感が違うのだろう、よかったよかった。


 冒険者たちが見た目お前こそ『悪鬼』じゃないかというツッコミも口にしない中、ギルド支部長の横に立っていた上位冒険者が二人、歩み寄って来る。

 知っているぞ、よく知っている。

 クラスメイトの実は凄いんだぞ少年、位階指定B、コード『千鎖』。

 この冒険者ギルド最高戦力の一人、位階指定A、コード『風神』。


 『千鎖』はフードで顔が隠れた【霊装】状態で、『風神』は逆に露出の多い踊り子のような褐色肌の美女、こっちも【霊装】状態。


 僕の前に歩み寄って挨拶をしたのは……『千鎖』のほうだった、

 君のほうなんだね、位階指定は『風神』が上なのに。


「初めまして執行者さま。位階指定Bの冒険者、コード『千鎖』です。今作戦では討伐隊の代表を務めさせていただいてます。執行者さまには万が一の際、どうかよろしくお願いしたく」


 討伐隊の代表も君なんだね?

 横にいる位階指定Aの美女さんはにこにこ笑って『千鎖』を見守ってるし、もしや物語進行中かな?

 まぁそういうのには関わらないと決めてるからそれはいい。

 僕は片手を挙げて挨拶に応じた。


『──あの執行者の御仁、ずっとスマホを見て返事がおざなりじゃな……。あれが強者の貫禄か? 貫禄なのか?』

『執行者本部のホームページ見ました~。コード『魔人』は執行者として跳び抜けた戦闘能力を誇るらしいですよ~。過去には同じ魔法使いを始末した実績もあるとか~』

『彼なに見てるんだろうな……気になる』


 あっ!?

 ユキトイキの配信見てたらそこをユキトイキに目撃された。

 いや当たり前なのか、【千里眼】便利ですね。

 でも【千里眼】でスマホの画面まで覗き見ないのはやっぱり最推しだろユキトイキ。

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