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第三話「推しは潔い」

『配信をはっじめっるぞーい』

『わーい』

『うむ』



〈コメント〉

:いつもの

:この一応挨拶した感じ好きよ

:声がみんな平坦なの配信者としてどうなん?ww



 今日は休日。

 執行者としての任務もないのでリビングで一人推しの配信を朝から見ている。


 ロリ九尾っ娘タマのやる気のない挨拶に始まり。

 色々でかエルフ女ミオの平坦な声のわーいに続き。

 むっつり女騎士レンのとりあえず言いました感のあるうむで終わる。

 ここまでがいつものセットだ。


 リビングのテレビと接続した大画面で配信を流し、片手にはお菓子とジュース。

 僕はコメントはしない見る専なのでキーボードとかは要らない。

 のんびり朝から推しの配信をこうやって見るのが好きなのだ。


『今日はの、ダンジョンに潜ろうかと思うんじゃ』


 そして本題が始まる。

 タマはのじゃロリ、キャラとか言っちゃいけない。

 しかしダンジョンか、ユキトイキも一応冒険者として登録しているとはいえ、あまり本腰を入れたタイプじゃないから珍しい回かもしれない。

 こういうタマがダンジョンに潜るとか言ってる配信回は大体金欠が原因だから、浅いところで炭鉱夫になる映像が永遠と流れる。

 ミオとレンの三人で永遠カツンカツン壁を掘る映像……配信者として映えを意識しないのもユキトイキの持ち味だ。


『というわけで冒険者ギルドに来ておるぞ』


 そのくせ無駄な移動なんかは省く。

 せっかくダンジョン外でも【霊装】行使できる許可得てるのに勿体ないとは思う。

 だがタマはもふもふの尻尾が九本もあるから仕方ないのだ。

 本人がそう言ってた。


 【霊装】状態のユキトイキが冒険者ギルドに入る。

 ギルド内は冒険者なら【霊装】を行使していい空間なのでハロウィンもびっくりな光景がそこにはある。

 だがこれが現代。

 およそ五十年前にダンジョンが現れてから変わり、今では日常となった光景だ。


 特別なにも起こらずユキトイキの三人は掲示板の前に立った。

 掲示板と言っても見ているのは依頼とかじゃあない。

 それはダンジョン内部に生息する敵性存在、災厄種の徘徊情報が張られた掲示板だ。


『浅層に災厄種徘徊の情報なし。絶好の炭鉱夫日和じゃな!』

『あんまり長く続くと絶交の炭鉱夫になりますからね~』

『私に任せろ。壁は避けないから、どんどん掘るぞ』



〈コメント〉

:絶交の炭鉱夫ww

:タマは金使い荒いから……

:レンの筋肉が遺憾なく発揮される冒険者業(炭鉱夫)

:ん? 端のほうになんか注意書きない?



 冒険者は命懸け。

 でもそれは深い層まで潜っていく冒険者に限るかもしれない。

 ダンジョン内には災厄種という怪物たちが徘徊しているが、総数が多くないので避けていれば早々出くわさない。

 ダンジョンの構造も大小様々な大きさの洞窟がアリの巣状に絡み合った迷路となっているが、浅層ならマッピングの魔術も網羅されているから迷う心配もない。


 つまり今日の配信は安心安全な炭鉱夫……そうなるかと思いきや。


『んあ? 端のほう……おぉ、これじゃな』

『どれどれです~……注意:ダンジョン内に正体不明の災厄種徘徊の恐れ。未確認の殺傷状態で冒険者の遺体が複数発見されています……なるほど~』

『これはあれか。遠回しな言い方だが、冒険者の中に殺人鬼がいるときの警告だろ』


 掲示板の端に張り出されたその情報に、ユキトイキは眉を顰める。

 災厄種というのは数が少ないからこそ、その個体ごとの情報を冒険者ギルドは持っているものだ。

 その上で浅層・上層・中層・下層……とその災厄種の主な活動領域が把握されている。

 それらを踏まえてこの注意を見ると、殺傷状態は確認された災厄種のどれにも該当せず、また出現領域などの注意指定場所が認定されていないことがわかる。


 これは、未確定だが人災の可能性がある、というときの張り出され方だった。



〈コメント〉

:うわ、殺人鬼案件発生?

:ダンジョン内は配信魔術でも使ってないと証拠も残らんから怖いね

:使っててもこういう手合いは構わず魔術でわからん殺ししてきたりもする

:地上にいる間に執行者が始末してくれんかなぁ

:流石に今日は潜るの危険じゃないか?



 コメントでもダンジョン内の人災に怯える声が多い。

 それはそう、魔術師も冒険者も人を殺す機会なんて早々ないんだ。

 ましてダンジョンに潜ったら魔術を行使する殺人鬼と出会いましたなんて、生き残っても一生夢に出る。


 だが悲しいかな。

 実はこれ、ダンジョンに潜る冒険者にとっては災厄種よりも遭遇しやすい危険なのだ。


 殺人鬼の馬鹿な考えはこう。


 魔術で人殺したい。

 でも地上だと執行者に殺される。

 執行者ってダンジョン入ってこないんだよね。

 そや!

 ダンジョン内で人殺そう!


 馬鹿な考えを起こす輩はみんなこんな結論に辿り着く。

 冒険者の中には執行者がダンジョン内も警備しろって声もあるが、執行者は魔法使いで総数が少ない。

 迷路状でいくつもの層がある馬鹿広いダンジョン内を少ない執行者が巡回したって意味なんてほとんどない。

 しかもダンジョンは日本だけで百以上存在するのだ、それら全部をとか執行者が圧倒的に足りないっての。

 結果、執行者は地上に絞って秩序の維持に努める。

 ダンジョン内の問題は冒険者の管轄だから関与しない、ということに。


 奇跡の力を行使するという魔法使いでも、なんでもはできないのだ。


 さて張り紙を見たユキトイキは。


『今日は家でゲーム配信するのじゃ』

『炭鉱夫はしばらく無理そうですね~』

『うむ。なんのゲームやる?』


 君子危うきに近寄らず。

 ユキトイキ、潔い撤退。

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