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第一話「物語の外側」

一章完結まで毎日投稿です

 変わったところなんてなにもない、ごく一般的な高校の教室。

 今朝はそんな教室の中が少し賑やかだった。


「マジかよ! お前冒険者デビューしたのか⁉」

「冒険者って魔術で戦うんでしょ? ねぇ見せてよ!」

「いやいや魔術はダンジョンの外で許可なく使っちゃダメなんだって。ま、そのうち配信とかするかもだし? 気になるならそっち見てくれればいいぜ」

「やば! ダンジョン配信とか激熱じゃん!」

「いいなー!」


 どうやらクラスメイトの男子が冒険者デビューを果たしたという話題らしい。

 高校生なんて若い年齢層にとって冒険者は憧れの職業だ。

 浅い階層を潜ってるだけでもそこそこ稼げるし、最上位の冒険者ともなれば国から様々な特権が認められる。

 一言でいえば夢のある職業、というやつだった。


 ただデメリットもある、当然だ。

 しかしそれを鑑みても夢があると言い切れる若者が多いほど、今世間では人気の職業なのだ。


 かくいう僕も昔は冒険者になりたいと思った時期があった。

 ……結局それは断念するしかなかったのだが。


「ねぇねぇ、冒険者になったなら姫様ともお近づきになっちゃうの~?」

「ばっかお前、姫様は位階指定Cの冒険者だぞ。流石にすぐには無理だって!」

「きゃー! めっちゃ意識してんじゃん! 姫様に聞こえちゃうよー!」

「……くだらないわね」


 冒険者デビュー少年がチラと視線を送った先にはこのクラス随一の美少女が。

 彼女も既に冒険者として魔術の実力を上げている。

 確か位階指定はC、そこそこ腕の立つ冒険者だ。

 まだ高校生でその域にいるのは十分優秀と言って差し支えないだろう。


 ただ自分の席で本を読むあの少年と比べなければ、だが。


 本を読む少年は視線は向けず薄く微笑んでいる。

 さしずめ俺の本当の実力云々かんぬんと考えているのかもしれない。

 彼は……名前は忘れたが彼も冒険者で、位階指定はなんとBだ。

 だがそのことをクラスメイトの者達は誰も知らない。

 僕は知っているが僕はぼっちなので関係のない話。


 このクラスにはもともと二人の冒険者がいて、今朝それが三人に増えた。

 冒険者デビュー少年に。

 ヒロイン枠かも美少女。

 それから実は凄いんだぞ少年。

 なにか物語でも始まりそうな雰囲気だな。


 教室の入り口でそんな今朝の風景を目撃した僕はそのまま席についてスマホを起動する。

 関係のない話だ。

 同じクラスで誰がどんな物語を始めようとも、僕には関係のない話だ。

 僕は執行者。

 行使するは魔法、冒険者の魔術とは違うもの。

 魔法は神の奇跡とも呼ばれるけど、僕のそれは奇跡なんて呼ぶには程遠い。


 チラリと横目で教室内を見渡す。

 冒険者デビュー少年。

 ヒロイン枠かも美少女。

 実は凄いんだぞ少年。

 今は魔術を行使できない他のクラスメイトだって、いつかその道に立ったなら。


 僕は彼らを殺すかもしれない。


 執行者とは魔法使い。

 魔法使いとは超常の存在。

 求められるは秩序の維持だ。


 魔術・魔法に関わる犯罪で執行命令が下りた対象を僕ら執行者は始末する。

 今に始まった話じゃない、幼い頃からずっとそうだ。

 僕の手は人間の血で汚れきっている。


 だから僕は彼ら物語の主役とは関わらないようにしているんだ。

 外側でいい、僕は物語の外側でいい。


 イヤホンを耳につけて、スマホで推しの配信を開いて、さぁ準備完了だ。

 今日も今日とて、僕は推しの配信を見る。

 物語の外側で。

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