二人の旅 再び 3
宿場町に着いた。一見して以前とは変わっていないように見えるが、確かに扉が閉まっている宿がチラホラ見える。
二人は営業している宿に部屋を取り、見覚えのある食堂に向かった。
食堂は客はいたが、賑わっている感じはしなかった。
二人は店の奥に席を取った。
注文を済ませて談笑していると、店の女将さんと客の話し声が聞こえてきた。
「おや。今日は仕事はもう上がりかい?」
「ああ。どうせ客は来ないから今日はもう閉めてきたよ」
「最近はあまり馬車を使う人も少なくなったしねー」
「買い物客が少なくなったら、行商人も馬車も少なくなるしねー。そういやぁ、角の宿屋、店閉めたらしいよ。景気が良くなったと思ったのにあっという間に終わっちゃったねー」
聞いていると、景気が良かったのは三年程度だったと言う。やはりここにも皆の生活に影響が出ていた。
宿に戻った二人は早速ドミニクが作ってくれた冊子に食堂で聞いたことを書き込む。
「ねぇ、ランス。街から一日離れただけでこれだけ変わっているとしたら、ウォールヒルに向かってこの街道沿いはだんだん寂れてくるね」
「ああ。きっとそうだろうな。でもこの三年間が良すぎたんだろう。それでも放っておくわけにはいかないけどね」
「このままだと、ウォールヒルに一番近い村はどうなってるのか想像がついてしまうわねー」と腕を組みながらティナは呟いた。
「あのあたりの村は坑内労働だったから、車夫より給金は高かっただろうしな」
「確か、あのあたりは……あ、麦より芋を作っている農家が多いのよね?」とドミニクの資料をペラペラめくって言った。
ランスロットも資料を見ながら「麦は…この辺りが作っている農家が多そうだな」と今いる宿場町から東の一帯を示した。
「ランス。思ったんだけど…」と言い出したティナを見てランスロットは期待した(いいと思わない?)を。
「村外れの雑木林。あったでしょ?そしてその先に川。あのあたりに何か造れないかなぁ?それで、観光客に、ひまわり畑と雑木林を結ぶこの街道を利用してもらうの。この資料を見ていると食糧の心配はなさそうだから観光客分も賄えるんじゃないかな?人の通りが増えると前みたいに活気が戻ってくるんじゃないかと思って…」
ティナは(いいと思わない?)とは言わなかった。
ランスロットはティナも不安なんだと感じた。
「そうだな、いいと思う。人の流れを作れば、後は街道沿いの人が考えて動くだろう。明日、一気に雑木林まで行こう!まずは現地調査だ」
翌日、二人は荷馬車を調達して雑木林に向けて出発した。
一週間後二人は雑木林の入り口に着いた。荷馬車の割に時間がかかったのは、時折沿道の町の様子を見ながらの移動だったから。
想像していた通り、街道脇の村は以前の活気は感じられなかった。静かな農村だった。
二人は迷った。今が本来の姿ならこのままでも良いのかもしれない…と。
相談した結果、農作物を買いたい旅人を装って村の人に話を聞くことにした。
農作業中の農夫にティナが声をかけた。
「すみませーん!旅の者なんですが、収穫した物少し分けていただけませんぁー?」
農夫は快く「おぉ〜!いいよー。ちょっと待ってくれ!」と言って近くに来てくれた。
「あんた達どこから来たんだい?」
「領主邸のある街から来ました!この街道ををずっと…」と言ってティナは今来た道を指差した。
「そうかい。少し寂れていただろう?ちょっとの間景気よかったんだけどねー」と言いながら、作業を続けている奥さんに「おーい!きようは終わろう!この人達分けて欲しいんだってさー!」
奥さんはこちらを向いて「はーい!わかったー!」と言いながら前掛けで手を拭いこちらに来てくれた。
ティナは奥さんの身につけている可愛らしい前掛けが気になった。
木綿の前掛けなのだが点々と縫い取られ可愛い模様になっている。
奥さんは「はい、はい。おまたせしました。採ったものは家の納屋にあるから、行きましょう!」
旦那さんも「こっちだよ」と案内してくれた。
村に入ると、小さな小道に点々と大小の家が建っていた。家畜小屋や納屋、共同井戸などがあり、皆で協力し合っているのがわかった。
その夫婦の家はちょうど村の中ほどにあった。
家に入る前、旦那さんはその先にある広場に向かい
「おーい!マルク!リタ!そろそろ帰ってこいよ!」と大きな声で子ども達を呼んだ。
元気よく子ども達が駆けてきて、ティナとランスロットを見て母親のスカートの後ろに隠れた。
奥さんに「これこれ、お客さんだよ、ご挨拶は?」と言われて、可愛らしい声で「「こんにちは」」と言ってくれた。
ティナはその可愛さに悶絶しながら少し膝を曲げて微笑みながら「こんにちは!」と返すと、少し警戒を解いてくれた。
奥さんが「今から夕飯にするけど、一緒にどう?たいしたものはできないけど、歓迎するよ!」と言われて甘えることにした。




