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前世は猫でしたので  作者: KAE


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二人の旅 再び  2

ぎこちないドミニクも仲間に入り、酒場は賑やかな話し声が飛び交っていた。


ランスロットが「みんな明るくなったな」と誰にともなく言えば、誰かが「新しい領主様があの草地を花畑にして、そこから油を取る事業を始めてさ。あの広い場所を開拓して畑にするためにたくさんのもんを雇ってくださってるんだ。その事業の中心にいて皆に仕事を回してくれてるのが、ここにいるドミニクさんなんだよ!仕事があるのはありがたい!」


ドミニクは皆が不思議に思うほど小さくなってる。

「あ、いや。私は旦那様の指示で動いているだけで…」

すると皆は「〈私〉だってー。前は〈俺〉って言ってたのになぁ」とまた揶揄われる。


ティナがニコニコしながら「ドミニクさんて皆さんに好かれているんですね!ふふ」と言うと

誰かが「ドミニクさんはさ、皆に教えてくれるんだよ〈なぜこれをする〉とか〈いつまでにする〉とか〈俺らが今やってる仕事の目的〉とか。そうすると頑張んなきゃなんねぇな…って思ってくるんだ。前みたいに黙って運べばよかった時よりは楽しいんだ、給金は少し減ったがな…ははは!」と言っている。

ドミニクは少し顔が引き攣っていて、さらに皆の笑いを誘っていた。

「ドミニクさん!給金は高いに越したことはないけど、仕事が続けられるのが一番ありがたいんだ!これからも頑張ってくれよ!」と背中を叩かれさらに小さくなっていた。


楽しく過ごした酒場の帰り

ティナとランスロットは気持ちが温かくなっていた。

後ろをついて歩いているドミニクは恐縮して二人に声をかけた。

「旦那様、奥様。お恥ずかしいところを見せてしまいました」

ティナは「どうして?皆、前より良くなったって言ってたじゃない?ドミニクが頑張ってくれたからでしょ?」


「ありがとうございます。しかし、ここだけなんです」


「ここだけ?」ランスロットが聞き返した。


「はい。鉄鉱石運搬経路の沿道まで手がまわっておりません」


ランスロットは頷きながら「なるほどな。ここまで出稼ぎは無理な者はたくさんいるな…」


神妙な顔をする二人にティナは「じゃあ、直接視察すればいいじゃないの?」


「「?」」


「ランスと私はウォールヒルまで旅行する予定でしょ?少し時間をかけてその沿道の様子を見て、そこでなにができるか一緒に考えればいいと思わない?この前みたいに、こんな格好してみんなの話を聞くの。楽しいと思わない?」


「ティナの〈いいと思わない?〉にハズレは今までなかったからな。それでいってみよう」とランスロットも同意した。

そして「ドミニク。なにかあったら連絡する」

ランスロットの言葉にドミニクは「かしこまりました。ご連絡くださればすぐに対処できるように準備いたします」とすぐに返事をしていた。


数日後、ティナとランスロットは村娘と商人の格好をして旅立とうとしていた。

出発前にドミニクがひもで綴じた冊子を渡してきた

「旦那様、奥様。どうかお気をつけて、それとこれは私なりに沿道を調べたものです。まだ完全ではありませんが、お役に立てばと思いお待ちしました」

開いてみれば、各村の規模や農産物などが村ごと一枚の紙に纏められている。

「こんなに調べるのは大変だっただろう?」


「いえ、あの酒場にはいろいろな村出身の者もおりますので、聞き取ったり領主邸の図書室で調べたものです」


「そうか。さすがだな。ありがとう。活用させてもらうよ」そう言ってランスロットは鞄にしまった。


「どうぞお気をつけていってらっしゃいませ」とドミニクに見送られて二人は出発した。


ティナは以前こうしてランスロットと旅をしたことが思い出されてご機嫌だった。

手を繋いで歩きながら「そんなに前の話じゃないのになんだか懐かしいわね」とニコニコしながらランスロットを見る。


ランスロットも「ああ。あの時は〈ずっと終わらなければいいのに〉って思う時もあったなぁ」


「うふふ。私も。いろんなものを抱えていたのにね!でも今回は違うわ!」

二人は思い出話をしながら街道を進んだ。

途中、屋台で買ったサンドイッチを頬張り、草地で休み町の様子を見ながらゆっくり進む。時々店に入って、お店の人との会話を楽しんだ。


「あんた達、どこまで行くんだい?」


「この街道をずっと終点まで行ってみようかと思ってるんです」とランスロットが言うと


「酔狂な旅人もいるもんなんだねぇ。今夜は宿はもう取ってあるのかい?」


「実はまだなんです」


「この先の宿場町は前ほどの活気はなくなって、宿を辞めたところもあるから、泊まるんなら早めに行って宿を探した方がいいよ。野宿になっちまうよ」


「教えていただいてありがとうございます。じゃあ、まだ明るいうちに次の宿場町に着くようにします」


二人は店の主人にお礼を言って店を出た。


ランスロットは(かなり影響が出ているようだな)と沈んだ気持ちになったが

隣でティナは「へぇ。どんな風に変わったのか気になるわね!」と目をキラキラさせながらランスロットに言ってきた。

ランスロットはティナのその挑むような目に

(ああ。ティナだ)とティナの逞しさに惚れ直した。

そして「そうだな!その考え方流石だよ!ティナ!」と言ってティナの頭をガシガシ撫でた。

「もう!またそんなことして、やめてー!」と逃げるティナを追いかけて次の宿場町に向かった。


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