二人の旅 再び 1
番外編のつもりでしたが、少し長くなりそうです。
ティナとランスロットの話に暫くお付き合いください
夏。ティナとランスロットはキンバリー伯爵領に。
ルークとクローディアはウォールヒル公爵領に帰ってきた。
ドミニクがうやうやしく「おかえりなさいませ。旦那様、奥様」と二人を迎える。
「ああ。ただいま」「ふふ。執事が随分板についたわねドミニク」と二人から返された。
「恐れ入ります」
「さて、その後何か問題は?」
「今のところ特段ございません、ご報告をさせていただいても?」
「ああ。頼む」
とランスロットとドミニクの二人は執務室に行くことになった。
「ティナ、少し行ってくるよ。サロンで休んでてすぐに行くから」と言ってティナのこめかみにキスして執務室に向かった。
サロンに入ったティナは開け放たれた窓から入ってくる風の出迎えを受けた。王都より幾分涼しい気候の領地の風は爽やかで心地よかった。
お茶を飲みながらのんびり過ごしているとランスロットがやってきて隣に座った。
「何か問題でもあった?」
「いや、特にはなかったよ。ドミニクがうまく人を回しているようだ」
「うふふ。よかったわね、ランス気にしてたものね」
「まだ十分な収入には及ばないが、先行投資だね」
「また二人で旅がしたいわ!そうしたらなにか見えてくるかもよ、ね。いいと思わない?」そう言ってティナはランスロットに微笑みかけた。
ランスロットはティナの肩を抱き寄せて「ふふ。確かにいい考えかもね。どちらに向かう?」
「ウォールヒル!この前と逆コースね」
「いいね。じゃ、さっさと仕事片付けて日程を決めよう。ルーク殿達にも連絡入れておかないと」
「そうね!楽しみだわ!」
その後、ティナとランスロットは仕事の合間に身分を隠して、街歩きをしたり、丘に登って開発途中のひまわり畑を観たりした。
「畑はまだまだ小さいけど、これがもっと大きくなれば、見事だろうな」と広大な旧緩衝地帯の隅に造られたひまわり畑を観てそう言った。
「そうね、まだこれからね!…ね。思ったんだけど、あの畑の中って入っちゃったら迷いそうじゃない?
〈迷路〉を作って遊んでもらうのってどうかしら?入場料取って…」
ランスロットは感心しながら「ティナの〈いいこと思いついた〉には驚かされるよ。いいね、次の時期にそれができるかドミニクに聞いてみよう」
「楽しそうよね?」
「ああ。楽しそうだ」と言いながら愛しい妻の肩を抱き寄せた。
街歩きを楽しみ、夕方邸に戻ろうとしていると
「ランスさーん!」と声をかけられた。
声のした方を向くと、あの酒場の知人が走ってきた。
近寄って「ランスさん!久しぶりだね!またこちらに旅に?」
「ああ。まぁそんなところかな?」
「おや。そちらのご婦人は?」
「ああ。妻のティナだ。結婚したんだ」
「そりゃおめでとうございます!この人が〈いいこと思いついた〉って言う人かい?」
「ふふ。そうなんだ」
「…ランス、一体私のことなんて言ってるのよ」
「初めまして、妻のティナです」とランスロットには不満気に、酒場の知人にはニコリと挨拶をした。
「べっぴんさんな奥さんで羨ましいよ〜。今から一杯行くんだが、久しぶりに一緒にどうだい?」
「え?でも…」
「まぁ。それは素敵ね!私もご一緒してもいいですか?」とランスロットがなにかを言い出したがティナの言葉がそれを邪魔した。
「勿論だよ!さぁ。行こう!みんなびっくりするよ〜
泣く女もいるかもな…」と言いながら知人の先導で酒場に向かった。
ランスロットは別に疾しいことはないが、少し居心地が悪かった。
酒場に入ると、皆ランスロットに口々に「わぁ!久しぶりだなぁ」と再会を喜んでくれた。
ランスロットがティナを紹介すると「うぉー!べっぴんさんじゃないか!ランスさんおめでとう!」と皆の祝福を受けた。遠くからチラチラとこちらを見ているご婦人の視線が気になったけど、気づかないフリをするティナだった。
以前より店の雰囲気が明るい気がする。そう感じていたランスロットに酒のグラスをティナにはワインのグラスを渡しながら知人が言った
「領主様が変わってどうなることかと心配してたんだが、あの時よりも良くなったんだよ!それに、なんとドミニクさんが領主様のところで働くようになって、皆に仕事が行くようにしてくれてさ…」と話しているところに噂のドミニクがやってきた。
「あ、噂をすれば…」と知人が店の入り口に目をやる。
ドミニクは入り口で固まっていた。「だん…」と言いかけた時、ランスロットが小さく首を横に振りドミニクは言い換えた「ランスさん?どうしてここに?」
皆とは違う意味で言ったのだが、事情を知らない知人達は「ランスさん結婚したんだって!嫁さん見せびらかしにきたのさーははは!」
するとティナが楽しそうに「あなたが噂のドミニクさんですか?初めまして、ランスの妻になりましたティナです。よろしくお願いします」と笑顔で言えば。
隣で笑いを堪えているランスロットを視界におさめながら「初めまして、この領主邸で働いていますドミニクと申します。よろしくお願いします」とぎこちなく頭を下げた。
それを見ていた周りの人が「な!ドミニクさん前とは随分変わっただろう?お品が良くなっちゃってさー」とまた皆の笑いを誘っていた。




