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前世は猫でしたので  作者: KAE


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番外編  ドミニクの回顧  2

夜が明けた。空の青さが気持ちよかった。

遠くから馬が走る音が聞こえてきた。荷馬車だ。

御者台に部下達三人が乗っている「あいつら…」

猛スピードで駆けてくる(もしかして、国境に向かっているのか?)

思った時荷馬車を追いかける一頭の馬が見えた。と同時に、手綱を握る者の後ろからもうひとり黒髪の男が馬の背に立ち上がり、宙に浮いた。御者台に着地すると部下達三人は道端に放り出された。


彼は「行きましょう!あなたの部下の命が危ない」と言って走り出した。

(ウチの部下の命が危ない?あいつらは騎士だぞ?)と思ったが、後をついて走った。

結果は惨敗だった。

ひとりは、剣を弾き飛ばされ。

ひとりは、腹を蹴り飛ばされ。

ひとりは、相手に押されて首が切れるところだった。


戦いが終わってからの双方の空気感の違いに驚いた。

あちらは、ただ二組の恋人が寄り添ったり、ふざけ合っているようにしか見えなかった。

こちらは、戦いに負けて悔しそうにしていた。

力の差を見せつけられた気分だった。


彼に紹介を受けて二度驚いた。

(ウォールヒル?我々が取った鉄鉱石の産出領?)

(エストラーダ・キンバリー?キンバリーとは最近変わった領主?)そして三人とも強い。

私達はとんでもない相手を敵に回していたと初めて知った。


あとは、自分のしでかしたことに責任を取るしかない。と観念した瞬間だった。



王都に連行され、繁栄ぶりに驚いた。国力の違いが浮き彫りになった。資源があるとこんなに違ってくるのか?と思った。


尋問を受け始めて、なぜ我が国が貧しいのか初めて理解した。根本的に間違っていた。

私は、私の知る限りの事はすべて話した。

そして交渉会議を目前にして、国王の謁見室に呼ばれた。断罪を覚悟して赴いた。

首を垂れていると「楽にせよ」と声がかかり、頭をあげて初めて国王の顔を見た。

威厳があるが怖くない。穏やかに笑っている。

私の知る〈国王〉とは違った。


「ドミニク殿。貴重な証言大儀であった。聞きたいのだが、これらの証言は貴国を窮地に、いや消滅に追い込むかもしれんぞ?良いのか?」


「はい。承知しております。ただ、国民が少しでも貴国の民達のような生活に近づくことができればと願います」


「うむ。そうか。そして其方はこの騒ぎの責任をどう取るつもりか?」


「それは、陛下の審判に従いたいと思っております」


「わかった。…そうだ、エストラーダ・キンバリー伯爵から伝言があった〈鳩が手紙を持ってきた〉と」


「そうですか」


「それだけか?内容は気にならないか?」


「気になりますが、聞かない方が良い気がします」


「ふっふふ。潔いな。嫌いではないぞ。

提案がある。交渉会議…いや責任追及の会かな?同席しないか?見届けてみないか?」


どこに行き着くのか見たかった「是非お願いします」


そして全てが終わった。ネイルロウはなくなった。

でも賠償金支払いの国民の負担もなくなった。すべてヴェルタリス王国が引き受けてくれた。

父王は最後まで往生際が悪かった。


父王が連行され、部屋には私と補佐官二人、そこにティナーリア嬢。

私は再度詫びた。「この度は大変申し訳ございませんでした。なんと責任を取れば良いかわかりません。どうぞ、お気の済むようになさってください」と土下座した。


ウォールヒル公爵が口を開いた「どんな罰も受けると?」


「はい」


「陛下にもそう言ったとか?」


「はい」


「そうですか。わかりました」

「ティナ、いいか?」とティナーリア嬢に声をかけた。


ティナーリア嬢は「ルークがいいなら…。それに少し思うところもあるし」


エストラーダ・キンバリー伯爵も「ティナ。無理はしないで。彼が近くにいることになるよ」


「彼が何かをしたわけじゃないわ。だから大丈夫」


その言葉を聞いたウォールヒル公爵とエストラーダ・キンバリー伯爵は頷きあった。

そして、エストラーダ・キンバリー伯爵が「お前、ウチで働け」と言った。


「え?」働け?私は投獄されるのではないのか?

言葉の意味が理解できなかった。


「ウチで働いて、キンバリー領の立て直しをしろ。ゆくゆくはネイルロウの経済に影響するように頑張れ」


驚いた。泣けてきた。嬉しかった。いろんな感情が巡った。気がついたら「あ、ありがとうございます。エストラーダ・キンバリー伯爵家に忠誠を誓います」と深く頭を下げそう言っていた。


「修行に行ってこい」とウォールヒル公爵家でフランツ殿に執務を習い、先月エストラーダ・キンバリー伯爵邸に入り、今日を迎えた。


宴がお開きになり、来賓を送り出し「旦那様、皆様お帰りになりました」と報告に向かった。


新婚の伯爵夫妻は寄り添いソファに腰掛けていた。

「そうか。ご苦労だったな。ドミニク、話がある…ティナ」

旦那様は奥様に話の続きを促した。


「ねぇ、ドミニク。私考えたんだけど、緩衝地帯は国境ではなくなったのでしょう?あのままにしておくのはもったいないわ。あそこをひまわり畑にしようと思うの。花を見に観光客が来てくれるかもしれないし、種からは油が獲れるわ!どう?いい考えだと思わない?」

隣で聞いていた旦那様は「そういうわけだ。一度に全域花畑にする必要はない。雇用を増やすのを目的に今年できる範囲で草地を花畑に作り変えてくれ。早速取り掛かって欲しい」


「かしこまりました。早速明日、現地に向かいます」と込み上がる嬉しさを抑えて冷静に見えるように返事をした。


「うふふ。大変だけどよろしくね」と奥様はオッドアイの瞳を細めて笑った。


(ああ。旦那様が仰っていたことがわかった気がする)と思いながら、エストラーダ・キンバリー伯爵家への忠誠を改めて誓った。


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