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前世は猫でしたので  作者: KAE


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番外編  ドミニクの回顧  1

目の前で、結婚式を挙げたばかりの新郎新婦が踊っている。

新郎は長身で騎士のような体格。文官には見えない。

茶色い柔らかそうな髪に整った顔立ち、エメラルドグリーンの瞳で愛おしげに新婦を見つめている。

その新郎を眩しそうに見上げる新婦は、スラリとした女性の割には長身で艶やかな黒髪が印象的だ。かなりの美形だが、笑うと彼女のオッドアイが細められそれがなんとも可愛いと新郎からよく聞かされた。


本来なら私はここにいられる者ではない。


なぜなら、私は〈敵国〉と言っても過言ではない国から密かにこの国に入り、命令されるがまま、身内に犯罪を犯させてしまった。穏やかに暮らしていたその人の人生を壊してしまった。

〈後悔している〉とそんな言葉が許されないほど、取り返しがつかないことをしてしまった。

だけど、私は今、この場所にいることを許されている。



私。〈ドミニク〉はネイルロウ王国の第三王子として生まれた。母は側妃だった。

父は家族には興味がなかった。男三兄弟、それぞれ母は違う。あまり顔を合わせることもなく、それを不思議に思うこともなく、離宮で暮らしていた。


我が国は貧しかった。我が国には資源がない。貿易で外貨を稼いでいた。しかし国力が弱いので周りの国から足元を見られ、働けど思うほどの収入は得られない。と小さい頃から教師に教わっていた。

王子と言っても3番目。比較的自由に市井に出られた。


市井の人々は貧しくても懸命に生きていた。

家族で笑い合い、頑張って仕事をして。

私は王子だ。〈何か彼らにできることはないか?〉と考えた。考えた。考えた。そして自分は何もできないと知った。


母が亡くなり暫くしたら父王から呼び出しを受けた。何カ月ぶりだろう?母の葬儀以来か…謁見室に入った私は一礼して父王を見た。


父王は笑っていた。(笑顔なんて初めて見た)と思った。「ドミニク。元気にしていたか?」名前なんて呼ばれた事なかったから驚いた。

呼ばれた理由は、〈密かに隣国に入り、父王の義母弟に接触し、我が国再興の協力を仰げ。ただし自分の身分は明かすな〉という事だった。


父王に「〈協力〉とは何をお願いするのですか?」と聞けば「隣国は潤沢な資源がある。にもかかわらず我が国にはなんの融資もしてくれない。だから少し拝借することにした。鉄鉱石をいただき、それで物を作り売る」


「それは…窃盗ではないですか?」


「なに。少し借りるだけだ。売って利益を得たら鉄鉱石分を支払う。そうでもしないと国民はどんどん疲弊する。国民のためだ」


〈国民のため〉と聞けば〈できない〉とは言えなかった。

父王から親書を預かり連絡用の鳩を持ち、部下を三人与えられ密かに隣国に入った。


教えられたところにその人はいた。

最初は拒絶され、親書も受け取ってもらえなかった。

何度も通ったがダメだった。その事を父王に伝えた。

すぐに返事はきた。その時その人の過去の冤罪を知った。そして新たな親書と共に伝言を頼まれた。

〈国が安定したら今度は内政を一緒に行いたい〉と。

その人は、やっと首を縦に振ってくれた。

それからは順調だった。その人の計画で大量の鉄鉱石を手に入れて本国まで運び込めた。

私は本国からの連絡の橋渡しをしていた。

しかしそれは長くは続かなかった。


突然その人と連絡が取れなくなった。

領地の名前が変わった。

国境警備が厳しくなった。

(バレたんだ)と悟った。自分の身も危ないかもしれない。逃げようと思い、父王に救助を願った。

しかし父王からはなんの連絡もないまま時間だけが過ぎていった。〈捨てられた〉と悟った。

上手く使われたんだなと思ったら乾いた笑いが止まらなかった。

部下達は帰国したがったが、帰国できない理由が言えなかった。そして部下達は王都に様子を見に行くと言って出ていった。私は止められなかった。

毎日、この街に帰ってくるのを待った。

そして夜まで待って、酒場に行って、帰る。を繰り返していた。


ある夜。酒場に行くと、知り合いから声がかかった。既に酔っているようだ。

その隣に静かに酒を飲む男がいた。

本能が身の危険を察知した。俺を捕まえにきたのか?

警戒して「見かけない顔だなぁ」と声をかけた。精一杯の虚勢を張った。

どこから来たのか?と聞いたら「王都から」と短く答えた。(こいつは役人だ。捕まえに来たんだ)と思ったらホッとした。〈楽になれる〉と


酒を煽り酒場を出た。彼は追いかけてこなかった。

暫くすると彼は知り合いを家まで送って行くのが見えた。


思い切って帰ろうとする彼に声をかけた。

彼は〈捕まえる気はない〉と言った。

成り行きで一晩語る事ができた。取り留めのない話。

なぜか楽しかった。自分の心がほぐれるのがわかった。


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