ネイルロウの終焉
野焼きが行われ、幾日か経った2月下旬。
ヴェルタリス王国国王とネイルロウ王国国王との間で交渉会議がキンバリー領主邸で行われた。
同席者は双方の宰相及び補佐官。こちらは当事者としてルークも同席していた。扉の両端には二人の侍従が控えていた。
鉄鉱石流出に関し捕らえた者からの供述書や証拠の品など数々のものを提示して責任を問い詰めた。
しかしネイルロウの国王は「供述した者は以前お問い合わせのあった私の義母弟を語った者でしょう?重ねて申し上げるが、我が義母弟は行方不明になって久しいが、出国した形跡はありません。義母弟を語る者が世迷言を言ったのに違いありません。証拠だって捏造だ」
「では、その者に〈計画が完了した暁には帰国して一緒に内政を担って行こう〉とおっしゃったのも?」
「まったく。誰でしょうな、そんな見え透いた嘘を言うのは…ここに連れて来ていただけたら、私が直々に尋問できますのに…ふっふ」
「まぁ。そう仰るとは想像しておりました。では次なのですが、これが私の手にやって来たのですがこれはどうやらあなたの筆跡のようです。酷い事を書いてある。〈第三王子ドミニクへ。父王より〉」左手のひらに紙を乗せニヤリと笑いネイルロウ国王を見る。
「何を仰る!そんなもの知りません!」
「あなたの筆跡かどうかなんて調べればわかりますから」と自分の手のひらの上を愛おしそうに見る。
「そ、そんなはずはない!それは偽物だ!あれはちゃんと訓練した鳩なんだ!間違って王宮に行くはずが…」
「おや。鳩が持って来たなんてよくご存知ですねー。私は一言も誰が持ってきたなんて言ってませんよ」
「ぐっ…」
その時、侍従のひとりが前に出て「父上。もうやめてください。あなたが何を言っても苦しい言い訳にしか聞こえない。この国は我々の国が太刀打ちできる相手ではない」
「お、お前…裏切ったのか?国を捨てる気か?」
「何を仰る…捨てられたのは私です。それに私は陛下が今持っておられる紙に何が書いてあるのかも知りません」
「では、謀ったのか?」
ヴェルタリス国王は「いえ、本物ですよ。私の優秀な部下が見つけました。ドミニク王子が我らに捕まったあとにね」
そして続ける「〈計画が完了した暁には帰国して一緒に内政を担って行こう〉とジェレミーに伝えろとドミニク殿下に言ったのはあなたですね?全てあなたの計画ですね?そして、この紙を書いたのもあなたですね?」
ネイルロウの国王は何も言えない。
その時、もうひとりの侍従が前に出た。
「ヴェルタリス国王殿。私は見届けました。周辺国代表として、全権をヴェルタリス王国国王陛下に一任いたします」と言って隣国国王は胸に手を当て腰を折った。
ヴェルタリス王国の国王は「ありがとうございます。皆様の期待に応えられるように施政いたします」と代表に胸に手を当て腰を折った。
そしてネイルロウ王国の国王に向かって「貴殿の考えは非常に危険だ。国民のためにならない。蟄居されることをお勧めする。今、ご覧になったでしょ?周辺諸国の方も了承してくださっている」そう言って事実上ネイルロウ王国の消滅を示唆した。
そして〈ネイルロウ王国〉は地図上から消えることになった。
一部始終を見ていたルークは(これで本当に終わったんだ)と胸が熱くなるのを感じた。
ネイルロウ王国はヴェルタリス王国に接収されることとなり、ネイルロウ王家の者全てヴェルタリス王国最北の離宮に生涯幽閉となった。
しかしその中にはドミニクの姿はなかった。
旧ネイルロウ王国はヴェルタリス王国の王家直轄領としてヴェルタリス王国の統治下に置かれ再出発するとになった。
――――――――――――
三ヶ月後、春の穏やかな陽射しの中、王族も参席した豪華で華やかな、ティナとランスロットの公爵家同士の結婚式が執り行われた。
新郎新婦はとても美しい光沢のある〈ノートンの絹〉でできた婚礼衣装に身を包み、皆の祝福の言葉に包まれた。
格式高い結婚式と披露宴ではあったが、とても温かい皆の笑顔が溢れる一日だった。
披露宴で新郎新婦のファーストダンスのあと、ティナはルークに誘われて踊った。
「ティナおめでとう。とても綺麗だよ。幸せになれよ」
「ありがとう。きっと幸せになるわ!だからルークもディアさまと幸せになってね」
ルークとクローディアの結婚式も来月に迫っていた。
「ああ。ありがとう。幸せになるよ。でもちょっと寂しいな…夜の訓練ができなくなるのは…」
「え?ルークは夜の訓練やめるの?」
「だって、ティナは訓練の度に通うのは大変だろう?」
「通う…って言っても、厩舎脇の木戸を開けるだけだから大変じゃないわよ?」
「え?隣?あの屋敷に住んでた夫婦は?」
「あぁ。領地に別邸を買ったらしくて、あの屋敷が売りに出てたの。ランスがあそこに住もうって言ってくれて…ふふ。優しいでしょ?厩舎脇に木戸を作っていいかって聞いたらルークが〈いいよ〉って言ってくれたの忘れた?」
「ああー。そんな事聞かれたら気もする…」
「うふふ。あの時はディアさまのことで忙しそうだったもんね!ふふ」
「じゃ、これからも訓練は続けるんだ」
「ええ。勿論続けるわ、楽しいものね」
その時ちょうどダンスの曲が終わった。
少し離れたところから「ティナー」とランスロットの声が聞こえた。
「あら、愛しの旦那さまが呼んでるわ!じゃ、行くわね!…ほら、ディアさまもあちらで待ってるわよ!」
「ああ。僕も行くよ。じゃまたあとでな!」
そう言って二人はそれぞれ愛する人の元へと戻っていった。
ここで本編は一旦終了させていただきます。
お読みくださりありがとうございました。
思い入れのあるキャラクター達なので、番外編を数話投稿する予定です。よろしければお楽しみください




