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前世は猫でしたので  作者: KAE


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92/107

街に続く道にて

ティナは懸命に手綱を操った。必死にスピードをあげる。追いつきそうで追いつかない。

街の中に入ってしまったら、他の人を巻き込んでしまう。追いつくために怪我人を出すわけにはいかない。

街に入る前に荷馬車を止めなくてはならない。


その時ルークが後ろから「ティナ!そのままスピードを落とすな!俺が飛び移る!」そう言ってティナの後ろ、馬の背中にティナの肩に捕まって立ち上がった。

ティナはルークが踏み出しやすいように、手綱を操りながら姿勢を固定した。

少しでも近づくように、スピードが出るように馬の腹を蹴る。


フッと肩にかかる圧がなくなった。

ティナの頭上を影が追い越した。

目の前の荷馬車の御者台にルークが着地した。途端に男達は全員荷馬車から放り出された。

ルークは馬の手綱を操り荷馬車のスピードを落とし、荷馬車を道の端に停めた。


ティナも荷馬車に追いついた。


後ろから三人の男達が剣を持ってルークとティナに殺気を纏わせこちらに走ってくる。

ティナとルークは荷馬車を守るように身構えた。

三人の男達は一斉に剣を振り上げ向かってきた。

ティナとルークは短剣で応戦する。

男達の剣を受け止め相手の隙を探る。二人対三人。分が悪かった。しかし相手もティナとルークの隙を見つけられずにいた。激しい攻防戦だった。


――――――――――――


ランスロットとドミニクは草地に座って夜を明かした。

ランスロットは明るくなった空を見上げた。と、その時離れたところから荷馬車がスピードを出してこちらに向かってくるのが見えた。

ランスロットとドミニクは何事かと荷馬車を見つめた。御者台には三人の男。

ドミニクが「あいつら…」と呟いた。

しかしランスロットはその後ろからさらにスピードをあげて走ってくる馬を見ていた。「…!!」

そして自分達の目の前で、後ろの馬から人影が飛び上がり、前を走る荷馬車の御者台に降り立ち三人の男を放り出した。荷馬車がスピードを落とし止まった。


ドミニクが「私の部下達です!」と大声で言うのを聞くと

ランスロットは「行きましょう!あなたの部下の命が危ない!」


ドミニクが「私の部下が危ない?」と疑問を呈しながらランスロットの後を追った。


――――――――――――


ガキーン!ガキーン!剣戟の音が響く。ティナとルークは長期戦を覚悟して動いていた。相手は少し疲れてきている。


その時「ティナぁー!」ランスロットが飛び込んできた。

二人対三人から三人対三人の対戦になった。

六人が激しく動く。

ドミニクが遅れてついた。「やめろー!やめてくれー!」と大声で言った。

ランスロットが相手の剣を弾き飛ばし

ティナが短剣で相手の剣を受け止め懐に入り右足で相手の腹に蹴りを入れ相手が後ろに飛ばされ

ルークが相手と鍔迫り合いで押して相手の喉元に己の剣が食い込み始めた時だった。


戦いが終わって、ドミニクの三人の部下達は自分の敗戦に項垂れていた。が、ティナとランスロットはお互いの無事を確認し合い怪我ひとつないと知ると微笑み合い。

ルークは急いで荷台に向かいクローディアを助け出し、抱きしめようとしてクローディアに「今はダメです!私は何日もお風呂に入っていません、髪もボサボサだし…」と言われ「えー。そんなの気にしないよー」と項垂れている。緊張感のない四人。

対極にある双方の様子を見て、力の違いを見せつけられた気分だった。


少し落ち着いてきた頃、ドミニクはルーク達四人に歩み寄り頭を下げた。

「あなた達には大変な迷惑をかけてしまった。申し訳ない」と。

突然の謝罪に驚いていたら、ランスロットから紹介を受けた。

「こちらは、ネイルロウ王国第三王子ドミニク・ヤウル・ネイルロウ殿だ。そしてあそこで項垂れているのは彼の部下らしい」


ルークは人相書きの人物だと気がついたが、まさか王族だとは…紹介された〈ネイルロウ〉に緊張したが、頭を下げたままの彼を見て、

「私はルーク・アウルム・ウォールヒルと申します」

「私はティナーリア・シエル・ウォールヒルと申します」

「私はクローディア・メアリ・サザーランドと申します」とそれぞれ胸に手を当て、またはカーテシーをして挨拶をした。

そしてランスロットは「名乗り遅れて申し訳ない。私はランスロット・ジーク・エストラーダ・キンバリーと申します」と胸に手を当て名乗った。

それを聞いたドミニクは(ウォールヒル…。エストラーダ・キンバリー…。俺達は最初から相手を間違えてた。いやそれ以前の問題だが…)と思った。


「この度は、私や父があなた達の国、あなた達の家に多大なご迷惑をおかけし謝罪の言葉もありません」とひざまづいた。


ルークが「なぜあなたはまだこの国にいらっしゃるのか?」と問い。続けて「察するに、助けてもらえなかったのではないですか?カールの時のように」


「それは、そうなのですが…」


「個人的な謝罪は受け入れましょう。しかし、既に国と国との問題になっています。あとは、王宮で謝罪されてはいかがでしょうか」ルークが言うと。


「はい。ありがとうございます。そうさせていただきます。エストラーダ・キンバリー伯爵殿のご提案受けさせていただきます」とドミニクが言った。


ルークは不思議そうにランスロットに向かい「提案?」と聞くと


「ああ。証言をしてくれないか?と頼んだ」


「なるほどね。これ以上ない証人だ」


そしてドミニクと部下達を王都に連行することにした。

ドミニクはランスロットに「厚かましいお願いなのだが、私は鳩を飼っている。誰かに世話をお願いできないだろうか?」と言ってきた。


それを聞いたティナは「じゃあ、私がここに残って暫くお世話するわ!どうせ領主邸にも手を入れなきゃいけなかったし…状況的にネイルロウとの会談はキンバリー領になるでしょうから…ね。いい考えだと思わない?」


それを聞いたルークは「ティナ…」とため息をつきながらひとこと言い。

ランスロットは「ふふ。じゃあ、鳩の世話と領主邸の手入れを頼むよ。よろしくね」とティナの腰を抱き寄せ、額にキスをした。

「また、イチヤイチヤしてー」憮然とルークが言い、(俺も!)と言わんばかりにクローディアの方を振り向くと、

「まだダメです。何日もお風呂に入っていませんから…」と拒絶され項垂れるルークだった。


それを見ていたドミニクは「ははは。面白いお方達だ…」と言った。


その後、一旦キンバリー伯爵領邸に入り、翌日、ティナ以外の者は王都に向け出発した。


湯浴みを済ませ身綺麗に整えたクローディアにルークがベッタリだったのは言うまでもない。



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