ランスロットとドミニク
「お前。俺を捕まえにきたんじゃないのか?」ドミニクがランスロットに問いかけた。
「なぜ、お前を捕まえる?」
「カールを扇動したから」
「フッ。嘘は通用しないんだったな。お前を探していたのは事実だよ。〈捕まえる〉までは今のところ考えてない。お前達の動きを確かめにきたんだよ。旧バーネット家門と繋がってないか?とね」
「繋がっていたとしたら何か困ることがあるのか?」
「公爵の後ろ盾をなくして困窮してしまったからお前達とまた繋がって悪さをしたら困るんでね」
「俺たちと繋がったところで、なんの恩恵もないさ。俺たちは捨てられたから。あの人と一緒さ」
〈あの人〉ジェレミーのことだろう。
ランスロットは「話は聞いたよ。あの人から」
ドミニクはその言葉に「あの人はどうなった?」と聞いてきた。
「詳細は言えないが、生きてるよ」
「そうか。ありがとう」
「なぜ〈ありがとう〉なんだ?」
「俺が騙したようなもんだから」遠い目をして告白した。
「…」ドミニクが何かを言いたそうにしているのでランスロットは沈黙した。
ドミニクが口を開く「俺の名前は〈ドミニク・ヤウル・ネイルロウ〉第三王子。側妃の息子だ」
衝撃の事実にランスロットは驚いた。そして思ったことが口に出た「また身内か…」
「ああ。そして俺も捨てられた。捨てられたことがわかった時、笑ってしまったよ…情けない…」
ランスロットはドミニクにある提案をすることにした。
「まもなく、ネイルロウとの交渉会議が始まる。そこで提案なんだが…。その提案を受ける、受けないはよく考えて決めてくれ」
ドミニクはランスロットの話を聞いて「少し考えさせてくれ」と言った。そして「逃げないから…」と付け足した。
嘘を言っている目ではない。と感じランスロットは頷いた。
「それと、気になることがある。部下が王都へ行って戻ってこない。もう戻らなければならないのに…」
ランスロットは部下の行動が気になった。
領地の地図を思い出す。王都からの道はいくつかあるが、この街に入る頃には道はひとつになっている。
そして今、二人がいるところは合流地点の近くだ。
「いつもここにいたのか?」とランスロットが尋ねると
ドミニクは「ああ。何かやらかしてないか心配で。あいつらは国に帰りたがっていたから」と答えた。
「わかった。俺は今夜からここで監視する」と言ってランスロットは道端の草地に座り込んだ。
目を丸くしたドミニクは「お前、きっと高位貴族だろう?変わってるな…お前の女のこと言えないな」とフッと笑ってランスロットの隣に腰を下ろした。
ランスロットも笑って「お前こそ、王族だろう?変わってるな」
ドミニクは苦笑いしながら「名ばかりの…な」と言った。
ランスロットは思った〈かの国は何度身内を使い捨てにするのか…〉と。
ランスロットは「寝るなよ。寝首を掻かれたくなければな」
ドミニクは笑う「それはお互い様だ」
その晩、二人は取り留めのない話をして夜を明かした。
――――――――――――
ルークは走った。途中水を飲んで少し休んだだけだが、不思議と走れた。
犬笛がルークを呼んでいるような気がした。
〈馬を〉と思ったが、調達する時間も惜しかった。
ほぼ一昼夜走った。ある、宿場町で中から犬笛の音がする荷馬車を見つけた。
走るスピードを落とし荷馬車に近づく。と肩を掴まれた。
ティナだった。「なに?自分の足で走ってきたの?」非常に驚いたように言っている。
ルークは息を整えながら「馬を調達する時間も惜しくて…」そう言い。ティナにペンダントを返す。
「ふふ。ありがとう。気持ちはわかるけど、今は少し離れましょう」そう言ってルークを物陰に誘導した。
そして、今クローディアの提案で、何が目的か?それを調べるために目的地まで尾行することにした。と話した
「はいぃ〜?ディアって……はぁー」とクローディアの提案に驚き、大きなため息をついた。
「ふふ。素敵な人じゃない?ルークのことをすごく理解していて、信頼してる。そして度胸もある…ふふ」
「そうかもしれないけど…危険だよなぁー」とルークは不満気だ。
「ちゃんと守ってあげればいいじゃない!」そう言ってティナはルークの背中を叩いた。
その間も荷馬車からは時々犬笛の音がしていた。
夜が明けたばりの早朝。再び荷馬車は出発した。もう行き先はわかっていた。キンバリー領。旧バーネット領だった。
ティナとルークは同じ馬に跨りティナが手綱を操り荷馬車から少し離れて尾行していた。
街道は領主邸のある街につながっていた。
荷馬車はスピードを上げた。しかも加速を続けている。
不審に思ったルークはティナに「この先に何があるんだ?」と聞くと、ティナは少し焦って「ルーク。ちょっとマズいかも…この先は緩衝地帯…そして国境」
もしかして越境するつもりか?二人は同時に思った。
ティナが「国境警備はどうなってるの?」問うと
ルークは「確か今は王国軍が担ってる。……あ、交代の時間の隙を狙うのか?」
それはマズい。ティナは馬の腹を蹴り荷馬車に追いつくためにスピードを上げた。




