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前世は猫でしたので  作者: KAE


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ドミニクという男  

「この男達は一体何者なの?」ティナの目の前で事態が変わっていく。


王都の入り口までくると荷馬車が止まった。

バーネット家門の男がひとり王都に向かって走って行った。

ティナは不審に思い、隙を見て荷馬車から一番近くにある大木の茂みの中に身を隠した。


御者台の男達が、荷台の男を気絶させ、荷馬車を奪って王都とは違う方向へ荷馬車を走らせて去っていく。

荷台の男を気絶させる動きは慣れていた。ただの労働者ではない。

クローディアからの犬笛は変わらず聞こえている。

ティナは、きっとルークが来るだろうと思い、木の幹に向かう方向を知らせる矢印と自分のペンダントを枝に吊るした。

荷馬車はかなり速度を上げている。クローディアのことを心配したが、途切れ途切れでも笛は聞こえてきた。既に夕日が背中を照らしていた。


――――――――――――


ランスロットは自領キンバリー領にいた。

旅人の姿で〈ドミニク・ヤックス〉を探した。

鉄鉱石の流出に関わっていた人物なので、領主邸のある街にいるだろうと予測して、毎晩街の酒場を渡り歩き人々の噂話に聞き耳を立てた。

しかし有力な情報はなかなか掴めなかった。

そのうちに、知り合いができ、雑談に混じるようになり、領民の暮らしぶりを知ることができた。


「ランスさんはこの街に来たばかりだから知らないだろうけど、少し前までは今より景気は良かったんだよー。国王様の命令で隣の領地から鉄鉱石を運ぶ仕事があってさ。給金もよかったんだ、仕事帰りの男達がよく酒場に飲みに繰り出したり、家族に土産を買っていくんだって買い物に出たり…なのに突然なくなってさ。〈なぜ、仕事がないんだ?って仕事を紹介してくれよ!〉ってドミニクさんのところに何人も押しかけたりして…どうしたんだろうなぁ?急に領地名が変わるしさ…何があったんだろうなぁー。しもじもの俺たちにゃわかんねぇ」

酔っ払いながら愚痴る知人の話を驚きと共に心苦しさを感じながら聞いていた。

〈驚き〉はもちろんドミニクの名前が出たこと。

〈心苦しさ〉は領民の暮らしが苦しくなってきていたことだ。


ランスロットは「その、ドミニクさんって人はなんて言ってるんだ?」と知人に聞くと


「ドミニクさんもわからないらしいよ。部下の人が様子を見に王都へ行ってくるって言ってたけど、ドミニクさんは止めてたなぁーたしか。なんでなんだろうなぁ。…シケタ話はお終いだ!今度はあんたの話を聞かせてくれよ!ほら、好きな女に振り回されてる話。ランスさんの好きな女はなかなか面白い!」

そしてまた雑談へと戻っていくのだった。


翌日も、同じ酒場に顔を出した。知り合い達が飲んでいるところに合流する。

やはり景気の悪さが話題になっていた。

「本当なら、今頃この店ももっと賑わっていただろうに…はぁ…ヒック…」

黙って知人の愚痴を聞いていると、赤い髪の男が店に入ってきた。

無関心を装い、気づかれないように様子をうかがう。


ランスの隣に座り酔っ払って愚痴を言っていた知人が赤い髪の男に気付き「ドミニクさーん!」と声をかけた。

ドミニクは知人に気付き、酒の入ったグラスを持ちこちらにやってきた。

ランスロットはドミニクと知り合いになりたいわけではなかったが、今さら席を立つこともできず、グラスの酒に口をつけた。


ドミニクが「なんだ。もう酔っ払ってるのか?少し早くないか?」と親しげに話しかけてくる。

ふと、ドミニクがランスロットに気付き「見かけない顔だなぁ」と警戒を露わにして話しかけてきた。


酔っ払った知人は「ランスさんっていうんだ。旅の途中なんだって。この人の話は面白いぜー…ヒック…」


「へぇー。どんな風に面白いんだ?」


ランスロットの代わりに知人が答える「ランスさんの好きな女は面白い女でさあ。ちっともじっとしてないんだってー。〈いいこと思いついた!〉って言ったらもう動き出しているんだってー。家族は誰も止められないんだってー。でも時々可愛いんだってー。」全くめちゃくちゃな内容の話を楽しそうに話している。

苦笑いをしながらランスロットが知人の話を聞いていると、

好戦的な目つきでドミニクがランスロットに話しかけてきた。「あんた。どこからきたんだ?わざわざこんな辺境の土地に…珍しいな」と


警戒されていることは充分伝わってくる。平静を装って「王都から」とひとことで伝えた。


「またなんで?ここには何もないぜ」


この男に嘘は通用しない。直感で感じた。

「春の野焼きを見たいと思って…でも少し遅かった。

だから、草原になったところも見てみたいと思ってここに居続けている」苦しい理由づけだが、嘘ではない。


じっとランスロットを見続けていたドミニクは肩の力を抜いて「そうか」とひとこと返事をした。

そして「まあ。飲もう」とグラスをあげたので、ランスロットもグラスをあげ、二人は言葉少なくグラスをカラにした。

二人の間には妙な緊張感が漂っていた。


グラスがカラになると、ドミニクは「じゃ、俺はそろそろ行くわ」と言って席を立った。

酔っ払っている知人は寝てしまったみたいだ。

ランスロットは「そうか」と言ってドミニクを見送り、寝てしまった知人を起こして帰宅を促し、知人を家に送り届け宿に戻ろうとした時、物陰から「お前、何者だ?」とドミニクの低い声が聞こえた。

ランスロットは驚くこともせず「旅の者だが?」と返事をした。


「嘘は通用しないと感じたんじゃないのか?」とドミニクが言えばか

「ふふ。そうだった」とランスロットも答える。

「少し話そうか」とドミニクが提案をしてきたので

「ああ」とランスロットは答え、ドミニクの後について行った。

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