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前世は猫でしたので  作者: KAE


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82/105

サザーランド子爵邸にて

ルークとクローディアは休みを取りクローディアの両親の元に挨拶にきていた。

サザーランド夫妻は大変喜びルークを歓迎してくれた。ルークは改めてバーネット事件の時の協力の礼を告げた。サザーランド夫妻は「役に立ててよかった」とクローディアと同じことを言っていた。


四人で談笑していると来客を告げられた。

一瞬顔を曇らせたサザーランド子爵はルークに「ちょっと失礼しても?」と聞いてきたので「勿論です」と答えた。


暫くして子爵は戻ってきた。少し疲れた感じで。

気になったルークは「何かあったのですか?」と聞くと、

「たいしたことではないのですが」と前置きして、旧バーネット公爵家門であった者が援助をしろと言ってきている。と話した。そして断っているが、何度もやって来る…と。

ルークが「何か僕でお手伝いできることがありますか?」と聞いたが、子爵は丁重に断ってきた。

「一度見込みのない事業を援助すると援助額が増えるだけで、ずっと援助し続けることになる。なので心を鬼にして〈事業案を練り直し〉してきてくれ」と相手に言い続けているらしい。

尤もな話なので「そうですか。何かあれば是非教えていただきたい。親子になるのですから」と伝えると、嬉しそうに笑って感謝された。


次の日、ルークは仕事があり王都に帰らなければならなかったが、ディアはルークの提案で、暫くゆっくりして王都に帰ることにした。


「それじゃあ。10日後迎えに来るよ。のんびりしておいで」と言いながら、ルークはディアをハグしながら額にキスをする。


ディアも少し照れながら「はい。ありがとうございます。ルークさまも道中お気をつけて、ふふ。お迎え待ってますね」とルークの腕の中から笑顔でルークを見上げる。


その後ろでサザーランド子爵夫妻は笑顔で立っている。


ルークは見送りのサザーランド子爵夫妻に挨拶をして、サザーランド子爵邸を後にした。

サザーランド子爵邸は商いの店舗も兼ねているので、人の往来のある街中にあった。

店舗はメインストリートに向けて出入り口があり、私邸部分は脇道を入ったところに門を構えていた。

建物だけで、庭を造園する余裕はない、こぢんまりした住まいだった。しかし、移住当初からこの邸に住んでいたわけではない。

借金を抱えた夫妻は街の隅の小さな店を借りて雑貨屋を始めた。今までのようにツテはない。しかし堅実に街に馴染みながら商いを続けていると。次第に取り引き先が増えてきた。人柄も相まって人脈ができ、今では地方の商品も扱い、販路も拡大しつつある。その販路を利用して物を売りたいという取引先も増えてきた。

門前でルークの乗った馬車を見送ったサザーランド子爵家族は談笑しながら自宅に入っていった。

その様子を見ていた者がいた。


――――――――――――


邸に入ったサザーランド子爵夫妻は娘の笑顔に心からの安堵と幸福を感じていた。

夫人は娘を抱きしめて「ディア。改めておめでとう。よかったわね」と言いながら少し瞳が潤んでいた。


子爵は「苦労をかけたな。頑張ったな。公爵殿とのご縁はきっと神様からのご褒美だな」子爵も瞳が潤んでいた。


ディアは「ルークさまも〈苦労したな〉って言ってくださるけど、私は苦労なんてしてませんよ。頑張りましたけど…ふふ。頑張ることを教えてくださったのはルークさまなんですよ。〈神様のご褒美〉は嬉しいですね」


それから親子は久しぶりに家族水入らずで過ごした。

子爵夫妻がこの街に移住してから、どんな人に助けられ商売を軌道に乗せてきたのか。

ディアがパン屋の二階でどのように生活し、王宮職員の採用試験を受けるに至ったのか。

たくさんお互いのことを話した。

ただ、ディアが話す内容にはルークは登場しなかった。


夫人が「でも公爵さまと再会するなんて、思いもよらなかったでしょう?」の問いに

「本当にびっくりしたわ。ふふ。いきなり机の上に紙袋が置かれるんですもの。ふふふ」

妻と娘の会話をニコニコ聞いていた子爵はしみじみ言った。「公爵さまに全て託して、諦めかけた人生だったが実は逆だったのかもな。公爵さまに託したからうまくいき始めたのかもしれない…と感じるよ」と。


「ふふ。そうかもしれない…だって私はルークさまやティナさまに合って、自分を振り返れたから…目標ができたから頑張れたと思ってるの」


夫人は、娘の髪を撫でて眩しげに見つめながら「素敵な方々に巡り逢えてよかったわね」と言った。


子爵は「暫くゆっくりしていけるなら、少し買い物をして回らないか?嫁入り道具にはならないが、ディアに、嫁ぐ娘に贈り物をしたい。お金の心配はいらないよ。それくらいの余裕はできてきたから!」


「お父様…ありがとうございます。では遠慮なく」


「上限はあるぞ!」の言葉に家族みんなで笑った。

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