ティナの役割 2
お読みいただきありがとうございます。
今日は少し早めに投稿します
「ティナーリアさま…」クローディアは呟くようにその名前を呼んだ。
ティナはニコニコ笑いながら優雅にこちらにやってくる。そして「お会いしたかったわ、クローディアさま」とクローディアの両手をティナの両手で包んだ。
クローディアは魂が半分どこかに飛んで行ったような感じで立ちすくんでいた。
そんなクローディアに構わずティナは続ける。
「クローディアさまの今日のお仕事は?」
「あ、え、えぇ。今日は…あと、一件ですね、今のところは…」
すると横からすかさず同僚の女性がその伝票を取って「これは、私が処理しますから、サザーランドさんは今日はもうありません」
同僚に申し訳なくて「え、いや。まだくるかもしれませんから…」と言い募ろうとすると。
同僚は「今は閑散期ですので全く問題ありません!」それを聞いたティナは大袈裟に「まぁ。クローディアさまは良い同僚の方に恵まれましたのね!」
「同僚の方。ありがとうございます」と二人に畳み掛けた。
そして「上司の方にも許可をいただきましたの。クローディアさま。参りましょう」とクローディアの手を引いて歩き出す。もうクローディアはされるがままであった。
ティナ達は、扉に向けて歩いていたが、途中で立ち止まり、経理部長と課長にお礼を言い。皆に振り返って「皆さまお騒がせいたしました。お詫びと言ってはなんですが、我が家の焼き菓子をお持ち致しましたので皆さまでお召し上がりください」と言って、扉のところで一礼してクローディアを連れて部屋を後にした。
静かだった部屋は扉が閉まった途端に大騒ぎになっていた。悲鳴すら聞こえてきた。
ティナとクローディアが出て行った扉を見ながら部長と課長は「あれは…決まり…だな」「決まり…ですね」と話していたことは周りの騒がしい声に消されて誰も聞いていなかった。
ティナはクローディアの手を引いたまま宰相外務補佐官室の扉をノックする。
中から「どうぞ」と反応があったので中に入ると、そこにはランスロット、ルーク、ポール、エレナが待っていた。
クローディアは制服ながらカーテシーをしようとしたが、ランスロットはそれを制し「いや。そんな畏まらないでくれ」と笑った。
そして、しれっとティナの側にきて肩を抱き「上手く連れ出せたようだね」とティナの顔を覗き込んでいた。ティナも「ええ。皆さんとても良い方々でしたわ」とランスロットに笑顔を向けていた。まさに二人の世界だった。クローディア以外の三人はいつもの光景なので〈無〉になっていた。
その様子を呆けたように見ていたクローディアの側にいつのまにかルークが来ていて「言った通りだろ?イチャイチャしてるって…ふふ」と話しかけてきた。
「では少しお茶でもしてから出かけよう」とランスロットの提案でエレナがお茶を用意してくれた。皆で座ってひと息つく。
クローディアはもう皆の空気に流されるままだった。
四人でひとつの馬車に乗り込むと馬車は動き出す。
ルークが「まず、衣装室だね」と言うのを聞いて始めてクローディアは我に返った。
「いえ、いえ。寮に寄っていただければ、昨日買っていただいた服がありますので…」と言うと。
ティナがすかさず「出かける前にお着替えね!いい案だわぁ!皆で着替えましょう!」と言えば男性陣は「いいね」「そうしよう」と同意する。
クローディアに否と言う勇気はなかった。
衣装室に着いた四人はカジュアルな服に着替えた。
ティナは白地に色とりどりの小花模様のワンピースに薄い緑色レースのボレロ。そして髪はエメラルドグリーンのリボンでポニーテールにした。
クローディアは蔦の地模様が施された空色のワンピースにクリーム色のカーディガンそして髪は青いリボンでハーフアップにしている。
ルークは白シャツに黒パンツ青いアスコットタイ、焦茶のジャケット。
ランスロットは薄い緑色のシャツに黒パンツ、チャコールグレーのジャケット姿だった。
もう、どこからどう見ても二組の恋人同士に見えた。
ティナは楽しそうだし、男性陣は満足気にしている。しかしクローディアは嫌ではないが、初めての経験でどんな顔をしていいのかわからない。
ティナとランスロットは楽しそうに腕を組んで店を出ていった。
クローディアは二人の背中を見送っていると、目の前に肘が差し出された。ルークの肘だった。
クローディアはもう開き直るしかなかったので、ルークに微笑みかけ肘に手を添えた。途端に顔を赤くして口元を押さえるルーク。
それを見たクローディアはさらに笑みを深くした。
向かった先は、新緑が目に優しい木立ちに囲まれたレストランだった。やっと日が傾き始め、ディナーには早い時間。かなりゆったりしたつくりの個室に案内され、部屋から直接小さな庭に出られる。部屋と庭の間に設置されたテラスには椅子とテーブルが置いてあり、そこでも寛げる。まず、四人はテラスの椅子に落ち着いた。
「クローディアさま。驚かせてごめんなさいね、こうでもしないとクローディアさま逃げちゃいそうで…」とまず、ティナの謝罪から話は始まった。




