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前世は猫でしたので  作者: KAE


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75/107

見つけた

王宮新年舞踏会は終わったが、社交シーズンはまだ始まったばかりだった。


今年のティナは、叔父の作り出す美しい絹を宣伝する為に精力的にランスロットと夜会に顔を出していた。

夜会は情報の宝庫である。ティナとランスロットが纏う絹の衣装は注目を浴びて、購入希望者が右肩上がりに増え〈ノートンの絹〉は価値を上げていった。

良い噂もたくさんあるが、悪い噂もたくさん耳にした。バーネット家門出身の家の困窮もそのひとつだった。今までは後ろにいる〈公爵〉の力を利用していた者が後ろ盾をなくした結果で、当たり前と言えば当たり前なのだが、当の本人達はそう思わなかったらしい。ティナとランスロットはそんな噂を耳にして、大きな問題にならなければよいが…と思っていた。


バーネット公爵の男爵位への降爵とウォールヒル侯爵の公爵への陞爵のニュースそしてキンバリー伯爵叙爵のニュースは舞踏会終了後すぐに広まった。

王宮執務棟に勤務する者達にも。当然経理部の中でもニュースはすぐに広まったがやはり女性の話題は〈補佐官の婚約〉だった。

「あー。とうとう補佐官様も婚約なさったのねー」


「相手はウォールヒル公爵のご令嬢でしょ?世界が違うわぁー」


「聞いた話。お互いの瞳の色をモチーフにした宝飾品を二人でつけていたんですって!」


「美男美女の組み合わせでしょ…いったいなんのお伽話よー」


「最後の独身貴公子も売れちゃったねー」


「あら、そんなことないわよ。今度補佐官が二人体制になったでしょ?エストラーダ補佐官は外務補佐官になって、国務補佐官は、ウォールヒル公爵だってー。勿論独身だし!どうやら婚約者もいないらしいわよ」


「じゃあ、まだ執務棟をウロウロする令嬢は無くならないのねー」


「あー、それはきっとそうね…衛兵の方の苦労は続くのね。やれやれ」

と皆言いたい放題である。


そんな同僚職員の話を聞きながら事務作業に追われているクローディアは(バーネット公爵が降爵?断罪じゃなくて?それに病気?何が起きたのかしら…)とひとり思っていた。


その後、国務補佐官に書類などを届ける権利を巡って女性の間で争奪戦が起きていった。




そんな中、噂のまとであるルークは日々補佐官業務に追われていた。今日も宰相室から〈あれはどうなった?〉〈これを調べろ〉と容赦なく仕事が舞い込む。

ルークは脇目も振らず午前中に宰相室にあげる書類を仕上げて、やっとひと息ついた。


「ふぅー。やっと半分か…。そりゃ、ひとりで請け負ってたら帰れなくなるわなぁー」と順番を待っている書類達を見てひとり呟いた。

季節はもうすぐ夏を迎えようとしていた。両親が亡くなり一年以上過ぎた。両親の命日には皆で墓前に花を手向に行った。その中にランスロットもいた。ティナは一年後結婚することになった。

本人達はすぐにでも一緒になりたかったようだが、ウォールヒル公爵家内の執務や旧バーネット領、現在はキンバリー伯領の統治準備の手伝いなどで結婚準備どころではなくなってしまった。


「あーぁ。ルークにしっかり者の奥さんが来てくれないかなぁー」とこぼされてしまったが、敢えて答えは返さなかった。

ふと机上のランプスタンドの足元に結んだリボンが目に入ってきた。(彼女はどうしているだろうか…)とクローディアを思った。

「逃げられたのに…な」と苦い笑いが溢れた。

ティナは「振られたんじゃないわ。ルークの為を思ってくれたのよ。貴族って面倒くさいわね、ルークが会いたいって思っていたらきっとまた会えるわよ。元気出して!」と言ってくれたが、その言葉も半信半疑だった。


その時、こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。今は勤務時間中で廊下は静かだ。宰相外務準備室や内務準備室を過ぎこちらに向かってくる。宰相かランスロットかルークに用事があるのだろう。

もしルークだったら…今はちょっと誰にも邪魔されずにいたかった。何度か在室中に他部署から書類を女性が持ってきたことがあった。用事が済んでもなかなか退室してくれない。他に何か用事でも?と聞くと、補佐官様は…と私的な事を聞かれる。非常に面倒くさいだから今回もルークは素早く資料室に隠れてしまった。


コンコン。ルークの執務室の扉がノックされた。

「失礼します」となぜか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

扉が開きその者が様子を窺いながら入ってくる。

「あ、本当だ、いない。よかった…」と呟いて、未決書類ケースに書類を入れて、ささっと逃げるように部屋を出て行った。


資料室から出てきたルークは信じられないものを見た目をして、書類ケースに近づいた。経理部からの〈月間報告書〉だった。


ルークは書類を見つめて呟いた「見つけた」

こんな近くにいたなんて…「ティナの言う通りだったな。会いたいって思っていたらきっと会えるって」


そしてランプスタンドのリボンを見た。あの日大きな紙袋に結んであったリボンを。


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