王宮舞踏会の夜 1
王宮主催新年舞踏会の日がやってきた。
殆どの貴族に招待状が送られるが、参加は強制ではない。
ルークとティナ達高位貴族は強制参加と言っても過言ではないが…。
ルークは今日、陞爵の公表があるので、落ち着いたグレーにパールの光沢をまぶしたような品のあるフロックコートにマント。クラヴァットには父から贈られたあのブローチを身につけた凛とした姿だった。
ティナはランスロットから贈られた青みがかったシルバーグレーの控えめなオフショルダーで腰からは両サイドから後ろに向けて刺繍を施されたフリルが幾重にも重なった、凛とした中にも可愛いさがある、ティナによく似合ったドレスとランスロットから贈られた金の地金に水色の宝石の周りにエメラルドグリーンの小粒の宝石がたくさんあしらわれたネックレスと同じデザインのイヤリングを身に着けていた。髪は両サイドの髪を高い所でひとつにはまとめ、両親からの髪飾りを頭頂部近くに留め艶のある黒髪は後ろに垂らしていた。
ルークはティナの姿を見て「なんだよ。その独占欲満載の姿は…」と少々呆れ気味だった。
ティナは最近ランスロットとの関係を隠すこともしなくなり、「ふふん」と優越感満載の笑顔を見せたから余計呆れてしまうルークだった。
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王宮新年舞踏会では、爵位の低い家門から順番にホールに入場して行った。この王宮新年舞踏会にバーネット家門は招待状が送られる殆どの貴族には含まれなかったようで、姿が見えなかった。
爵位の低い家門から順番に呼ばれてホールに入場して行った。ティナもルークにエスコートされ最後から三番目に入場した。当然、二人の入場は周囲の注目を浴びる。若い令嬢の視線は怖いくらいだった。
ランスロットもエストラーダ公爵家として両親と共に一番最後に入場した。
ランスロットは今日、極薄いエメラルドグリーンの生地にシルバーが程よく織り込まれた色味のフロックコートにマント。青みがかったシルバーグレーのクラヴァットには金地金にエメラルドグリーンの宝石に水色の小粒の宝石が周りを飾るブローチを身に着けていて、〈小公爵〉と言われているがどこか威厳のある風格があり、会場にいた他の貴族は(もしかしたら、公爵位を継承するのではないか?)という憶測を呼んだ。
若い令嬢はランスロットにも鋭い視線を送っていた。
国王夫妻、王太子夫妻が入場すると舞踏会が始まる。
王家の入場が済むまで、皆、臣下の礼をして迎える。
「楽にせよ」の国王の言葉で皆、姿勢を戻す。
国王はまず、新年祝賀の寿ぎを述べ、次に「この場で皆に伝えたいことがある」と続けた。
「此度、バーネット公爵が病の為公爵の職務を全うできなくなった。よって、ロックフォード•リーヴ・バーネットを無理のない男爵位とし、穏やかに過ごしてもらうことにした」騒めきが起こる。
構わずに国王は続ける「我が国の公爵位は三家門で均衡を保っている。よって、筆頭侯爵ウォールヒルを公爵に陞爵することとした」さらに騒めく
しかしさらに国王は続ける「旧バーネット公爵領は隣国ネイルロウ王国と緊張状態にある。当主がいなくなった今、新たに統治する者が必要になった。そこで、ランスロット•ジーク•エストラーダに新しく爵位を叙爵することとした」そして張りのある声で「ルーク•アウルム•ウォールヒル、並びにランスロット•ジーク•エストラーダ。前に!」と出入口で控えていた二人が「「はっ」」と声を揃えて答え、ホール中心に敷かれた赤い絨毯の上を上座に向かい歩いていく。
若い令嬢の熱が急上昇した。
一段上にいる国王の前まで来ると、二人は臣下の礼を取り、さらにひざまづいた。
国王がまずルークに向かい口上を述べる
「ルーク•アウルム•ウォールヒル。其方を公爵位に陞爵し、さらに宰相国務補佐官を命ずる。励め」
「はっ。ありがたき幸せ恐悦至極に存じます。公爵の名に恥じぬよう。さらに拝命いただいた補佐官の職務。真摯に精進いたします」
「うむ」頷いた国王はランスロットに視線を移し
「ランスロット•ジーク•エストラーダ。其方にキンバリー伯爵を叙爵し旧バーネット公爵領の統治を命じ、さらに宰相外務補佐官を命ずる。励め」
「はっ。ありがたき幸せ恐悦至極に存じます。キンバリー伯爵の名のもとに統治し、さらに宰相外務補佐官として真摯に精進いたします」
「うむ」と言った後、ホールに響き渡るように「尚、キンバリー伯爵は辺境伯の地位とする。皆心得るように」
国王が言い終わると、ホールにいる全員が臣下の礼で答えた。
そして、国王の開宴の合図で舞踏会が始まった。
途端に、ルークとランスロットの前に人が集まって来た。二人に祝いの言葉を伝える者。自分をアピールしてくる者。娘を売り込んで、ファーストダンスの権利を取ろうとしてくる者。しかし、その人だかりからいち早く抜け出たランスロットがティナに近づいてきてファーストダンスを申し込んだ。国王夫妻のファーストダンスの後、ティナはランスロットが差し出した手に自分の手を乗せ、連れ立ってダンスの輪に入って行った。
残されたルークに熱い視線が集中し、困惑して断るに断れない状態に陥っている時、エストラーダ宰相が助け舟を出してくれた。
「ルーク補佐官。宴の最中申し訳ないが仕事だ。こちらにお願いできないか?」とホールの隅に連れて行ってくれた。
ホッとするルークだった。




