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前世は猫でしたので  作者: KAE


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クローディアの話  5

クローディアはルークを見送った日からパン屋の主人夫婦の好意で仕事を休み、下宿に籠って受験勉強に集中した。そして五日後試験本番を迎えた。クローディアは(ルークさま達も頑張っている。私も頑張る!)と自分を鼓舞して試験に挑んだ。


試験結果発表の日、クローディアは担任の教諭から呼び止められた。

「君は随分頑張ったね。何かしたい事があるのかい?」

質問の意図が分からず、「したい事ですか?」


「ああ。試験の結果が出たよ。君は見事首位を取ったよ。奨学生でも飛び級でも好きな方を選べばいい」


「え?本当ですか?」


「ああ。本当だ、今から掲示板に発表される。確認するといい」


「ありがとうございます。嬉しいです」


「それで、どうする?」


「飛び級でお願いしたいです」


「卒業してその後は?」


「何かの職につきたいです。できるだけ給金の良い…」少しでも給金の良い仕事をして実家に送金したいと考えていた。


事情を知る担任の教諭は納得したように頷き

「そうか。実は今、王宮が職員を募集している。試験を受けてみるか?推薦する」


クローディアは思わぬチャンスに驚いて「え?嬉しいです。ありがとうございます」 と伝えれば


「明日、王宮、執務棟の人事課に行くといい。私から連絡しておくから。頑張ってきなさい。卒業証書は明日までに用意しておくからいつでも取りに来なさい」

と笑顔で答えてくれた。


「はい!ありがとうございます」


翌日、クローディアは王宮に採用試験を受けに行った。ひとつ心配事があるとすれば、自分はバーネット公爵家門だということだ、何か影響するのではないかと思った。その時はクローディアはまだバーネット公爵の処遇を知らなかった。

採用試験が終わり試験官が「お疲れ様でした。試験結果は一週間後に郵送します。それまでお待ちください」と伝えた。


この一週間はクローディアにとってものすごく長く感じた。

そして一週間後クローディアの元に王宮からと両親からの二通の手紙が届いた。

まず、気になって仕方なかった王宮からの手紙を開けた。〈合格〉の文字を見た時涙が溢れ出た。これで、実家にも送金できると安堵した。


次に両親からの手紙を開けた。その内容は〈ある子爵から販路拡大の依頼を受け大口の取り引きが成立した。借金返済の目処がついたから安心して欲しい〉という内容だった。


クローディアはヘナヘナと床に座り込み(こんな幸運があって良いのか、夢じゃないのか)と信じられなかった。


翌日、王宮の人事課に出向き、配属は経理部だと聞いた。採用試験の数学が突出して良かったらしい。

職員寮の入居を希望して、早速配属先に向かい社会人としての一歩を踏み出した。


パン屋の二階の下宿を引き払う時、パン屋の主人夫婦に礼を伝え、お願いもした。

「もし、誰かが尋ねてきても、引っ越し先は教えないで欲しいんです」


女将さんが不思議そうに「どうして?何かあったの?」と聞かれたので

「何もないんですけど…まぁ、政敵みたいな人なので、迷惑かけたくないんです」と控えめに笑った。


「ディアちゃんがそう言うのなら、わかったよ。内緒にしとくね、でもディアちゃんは時々顔を見せてちょうだいね」そう言って笑顔で見送ってもらった。


その翌日、若い男性がクローディアを訪ねてきた。大きな紙袋を抱えて。

見るからに高貴な貴公子が、商店街のパン屋に来るなんてことは今までなかったので主人夫婦は驚いた。

しかもクローディアに会いたい…と。

しかし、主人夫婦はクローディアの約束通り〈店は辞めて出て行った。行き先は知らない〉と答えた。

貴公子はそれを聞いて気落ちしたことが傍目でもわかるくらいだった。

その時、カラン〜カラン〜とカウベルが鳴りニールが入ってきた。

「こんにちは!」


「あ!いらっしゃい。ニール君」と言う女将さんの声と「ニール!」と言う貴公子の声が重なった。


「あれ?クローディアさんは?」と素直な疑問を口にする。


女将さんは「え?うん。急に辞めちゃってね…」と少ししどろもどろに答えた。

貴公子は女将さんの態度で全てを勘づいたようだ。


女将さんは話を変えた「お知り合いだったんですね」


「ええ。まぁ」と答えたのはその貴公子だった。


貴公子はニールに向かい「それより、どうしたんだ?」と聞いた。

ニールは「お使いを頼まれてはいないんですけど、ここのパンは美味しいので、明日の朝、母さんと食べようと思って買いにきました」と元気に答えた。


「そうだな、確かに美味しいな…皆の分も買って帰るか?」とニールに聞くと


「え?いいんですか?皆喜びます!」と答えるので、店に残っていた殆どの商品を買い取ることになった。

商品を用意している間女将さんは不思議に思っていた。(こんな高貴な方のお宅にうちの商品は届けたことはないんだけど、なぜこの貴公子は〈確かに美味しいな〉なんて言ったのだろう?)


会計をする時、その貴公子は「申し訳ないが現金を待ち合わせていない。この小切手で支払えるだろうか?」と聞いてきたので


主人は「大丈夫です!現金よりありがたいですよ」と答えると


貴公子は「よかった。では、これで…」と小切手を主人に渡した。

主人は二度驚いた。まず、会計以上の金額が書き込まれていたから「え?これは多いですよ!」と言うと


「いや。そんなことはありません。それほどお世話になりましたから」と少し理解のできないことを言った。


それでも「…でも…」さらに言い募ろうとすると、貴公子はオッドアイの目を細めて笑い「お願いします」と言われてしまった。返す言葉がなく「それでは、誠にありがとうございます」と言うしかなかった。


二度目に驚いたのは貴公子とニールが店を出てからだ。振出人の名前が〈ルーク•アウルム•ウォールヒル〉だった。誰もが知る侯爵家の若き当主だった。


主人は(ディアちゃんは何者だったんだ?)と思っていると隣から女将さんが「ディアちゃんはなんて人と知り合いなんだろうねぇー。びっくりしたよ」と大量のパンと二人を乗せた立派な侯爵家の馬車を見送りながら呟いた。



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