クローディアの話 2
カラン〜カラン〜パン屋の扉が開くと可愛いカウベルが鳴る。
クローディアが元気よく「いらっしゃいませ〜」と挨拶する。
「こんにちはぁ〜」と元気よく男の子が入ってきた。
男の子が「クローディアさんですか?僕は侯爵家の使いのニールです」と挨拶された。そしてひとしきり店を見回して「かぼちゃのマフィンとくるみのパンをください」と言ってカゴを差し出した。
余計なことは言わずに「かしこまりました。かぼちゃのマフィンとくるみのパンですね」とカゴを受け取りそこにパンを入れようとしたら、中に紙袋が入っていた。男の子、ニールを振り返ると黙って頷いている。
クローディアは紙袋を取り出し、代わりに注文の品を入れニールに渡した。ニールは「ありがとう」と受け取り会計を済ませて店を出て行った。
パン屋の女将さんが店に入ってきて「ディアちゃん。ありがとう。ミーナが寝たから店番変わるよ。お昼にしておいで!」
「ありがとうございます。じゃ」と言って、紙袋を持ち外階段から二階に上がり自分の部屋に行く。
そぉーっと扉を開け部屋に入り、寝室を覗く。薄暗い寝室の中で静かな規則正しい寝息が聞こえてくる。
(よかった。生きてる)と思い扉を閉めた。
クローディアはテーブルに紙袋を置き中のものを取り出した。液体の薬瓶三本と塗り薬の入った瓶がひとつ。布と油紙。そして手紙が二通。
ひとつはフランツさんからで、今回のお礼と、薬の瓶の説明と傷の処置の仕方。それと、見張られているかもしれないので暫く看病をお願いしたいと、連絡はニールが担当する。と書いてあった。
もうひとつはティナさまからで、やはりこれにもお礼の言葉が綴られていた。そして髪飾りが入っていた。
亡くなったご両親から贈られた物でルークの側に置いて欲しい。と
早速、クローディアはフランツの指示通りにルークの傷口の処置を始めた。
―――――
ルークがクローディアに保護されたのは三日前だった。
すぐに侯爵家から医師が派遣されてきた。
クローディアの寝室で縫合処置が施された。かなり深い傷だったらしく、暫くは動かせないと言われたのでクローディアは、動けるようになるまで寝室を使ってくれても構わないと伝えた。
医師は、今夜から熱が出ると思うと言い液体の飲み薬を置いて、改めて連絡する。と言って出て行った。
そして今日、ニールが手紙と薬を持ってきた。
―――――
両腕の傷の処置を終え、無数の小さな傷にも薬を塗り
夜着を整え、布団を被せた。
今は熱も下がり状態は安定したようだ。
処置の後片付けをしていると「ウッ…」と声がした。ルークを見ると瞼がゆっくり動き、オッドアイが姿を現した。
「侯爵さま!気がつかれましたか?」クローディアが側による。
「ここは?」
「私の下宿です。侯爵家の方以外には誰にも知られていませんから安心してください」
ルークのオッドアイがゆっくりクローディアを捉えた。
「サザーランド子爵令嬢…」掠れた声で言う。
「ふふ。クローディアでいいですよ。三日も眠っていたんです。喉が渇いていますよね。今水をお持ちしますね」と言って部屋を出て行った。
ルークは天井を見る。肩に激痛が走り斜面を転がり落ち草むらに受け止められ、立ちあがろうとしてバランスを崩し川に落ちた。少し流されたような気がする。
何かに必死で捕まり…それから岸に上がった。とにかく隠れる場所を探したのは覚えているが…そこからの記憶はない。
「助かったのか…」と呟いた。
左肩も右腕も勿論だが体のあちこちが痛む。首だけがかろうじて左に動かせる。動かした先。サイドテーブルにティナの髪飾りが置いてあった。皆に無事だと伝えられたんだと思いホッとした。
その時、部屋の扉が開いてクローディアが水を持って入ってきた。
「起き上がれないので、不自由かとは思いますがスプーンでゆっくり飲んでくださいね」と言って自身も椅子に座り水をスプーンで飲ませてくれようとする。
ルークは素直に飲ませてもらう。
水が体に染み渡るようだった。
クローディアは水を飲ませながら傷の説明をしてくれる。
「侯爵家からお医者さまが来てくださって、左肩の縫合処置と右腕の矢の跡の処置、それから顔や体にある傷の処置をしてくださいました。そして今朝まで熱が続いていたんですよ。よかったです、落ち着いて…
ただ、左肩の傷が結構深くて、もう少し深ければ左腕は使えなくなっていたそうです。でもそれは免れました。なので暫く安静にしてなくてはいけないそうです。お屋敷は相手が見張っているかもしれないので、暫くここで我慢してくださいね…もう大丈夫ですか?」
最後は水分補給は十分かどうかを確認し、ルークが頷くのを確認して水分補給とクローディアの話は終わった。
そしてクローディアはルークに尋ねる「食欲はありますか?何か召し上がりますか?」と。
ルークは首を横に振る。
「わかりました。では私はそろそろ行かなくてはいけないので、暫くここでじっとしていてくださいね。夜にまたきますから」と言って再び出て行った。
そうしてルークの療養生活が始まった。




