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前世は猫でしたので  作者: KAE


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クローディアの話  1

しばらくクローディアちゃんの話になります。

クローディアちゃんも幸せになって欲しいです。

どうかお付き合いくださいませ

「ディアちゃん!私達は帰るね。後の戸締りよろしくね!」


「はーい。わかりました!お疲れ様でした。あら、ミーナちゃん寝ちゃいましたね。ふふ」


商店街のパン屋。ひと月ほど前から、クローディアはエプロンをつけ柔らかい蜂蜜色のブロンドを三つ編みのおさげにしてバンダナを頭にまいた姿でパン屋の手伝いをしながら学院に通い、パン屋の二階に下宿していた。少し前のクローディアからは想像できない姿だった。


店のカーテンを下ろし鍵を閉めて、裏手に回り裏口の扉の鍵を閉めて外階段で二階に上がろうとした時、階段の影から物音がした。


「何?」猫でもいたのかと思い覗き込む。

そこには男性が建物の壁にもたれるように座り、荒い息を吐いていた。今にも死にそうに…。

外は暗い。目を凝らして見ると、その男性は血だらけだった。着ているものは質の良いものだということはすぐにわかった。どうやら破落戸ではないと判断して

「大丈夫ですか?」と恐る恐る声をかけた。

こんな状態の男を放っておけなかった。

腕を伸ばし、階段下から男を引きずり出す。

そのまま男の片腕を自分の首の後ろに回し男を支え階段を登っていく。男は痛みに呻くが「少し辛抱してください」とゆっくり部屋に連れて入った。

まずは男をベッドに寝かせ灯りをつけた。

「!」クローディアは驚きで一瞬声が出なかった。

目の前に横たわっているのは、ウォールヒル侯爵だった。

侯爵は荒い息を吐き、呻き続けている。

「侯爵さま!侯爵さま!わかりますか?」

その声に少し反応があった。

そしてルークの状態を確認する。

左肩から夥しい血が流れ服を赤く染めていた。右腕もだ。所々に切り傷もある。しかも服は濡れている。

(これではいけない)と思い。「侯爵さまごめんなさい。服を脱がせますね」と意識が朦朧としているルークに声をかけ、恐る恐る脱がせる。酷い怪我だった。

手が震えるが、とりあえず(止血しないと)と思い、洗面所から清潔な布を持って来て、割れた傷口を寄せて強く押さえた。ルークは呻く。しかしその痛みに意識が戻った。それに気づいたクローディアは「気がつきましたか?今血を止めてます。少し辛抱してくださいね」と声をかける。

ルークは話している相手が誰だかわからないようだ。

ルークが呻きながら「フランツに…フ…ランツ…に」と言う。

クローディアは〈フランツ〉が誰なのかわからない、しかしルークが言うのだ、きっと侯爵家の人だろうと理解した。

「わかりました。今、行ってきますね」と言うと安心したかのように再び意識を失った。

クローディアは慌ててルークの胸に耳を当てると弱いが心音が聞こえてくる。気を失っただけだった。

しかしすぐには動けなかった。暫く傷口を押さえていたが、幾分血は止まったように見えた。

これなら少しは大丈夫だろうと、クローディアはルークから離れ、周りを見回す。侯爵邸に行く口実を探す。そうだ!と今度は急いで店に向かい、売れ残りのパンをカゴに詰め上に可愛く刺繍されたナプキンをかけ店を飛び出した。


――――――――――


侯爵邸の裏口を探してまわり込み扉を叩く。

中から使用人らしき女性が現れて訝しげにクローディアを見る「なにかご用意ですか?」と聞かれたので、クローディアは意を決して「あ、あの。フランツさんに至急これを持ってくるように言われて…」とカゴを差し出す。

女性は「わかりました。暫くお待ちください」とカゴを受け取らずに扉を閉めた。

何日か振りに雪がチラついてきた。

薄ら雪が積もり始めた頃扉が開いた。執事服を纏った男性だった。おそらくこの人が〈フランツさん〉なのだろう。

クローディアは久しぶりに短くカーテシーをして自己紹介をした「お忙しいところ申し訳ありません。わたくしクローディア・メアリ・サザーランドと申します」男性の目が見開かれた。そして

「わたくしは、ウォールヒル侯爵家執事フランツ・ハーバルと申します」と返事を返してもらえた。

そこで

、クローディアは本題に入る。

「侯爵さまのことなのですが…保護させていただきました」と短く伝えた。


フランツは驚いた顔を隠そうともせずに頭を深く下げた「クローディアさまには大変なお力添えを賜ったのにさらにお力添えをいただけたようでお礼の申しようもありません」と言われ、クローディアは焦る。

しかし重大な連絡があったので先に伝えることにした。

「しかし大変な怪我をしておいでです。お連れすることは叶いませんでした」

状況を理解したフランツはすぐに医師を派遣すると言ってくれた。そしてとても寒かったでしょう?休んで行ってくれ…とも

しかしクローディアはルークのことが心配で申し出を辞退し、侯爵家を後にした。


ティナとランスロットは湯を浴び、家族のサロンにいた。軽食が用意されているが二人とも食欲がない。

そこに扉がノックされフランツが入ってきた。

先ほどとは少し顔つきが違う。思わず立ち上がった二人の元に急ぎやってきたフランツは喜色を隠さずに

「ルークさまが見つかりました。生きていらっしゃいます」

その言葉に力が抜けたティナはソファに座り込んだ。

「あぁーよかった…」心から安堵の言葉が出た。

ランスロットもホッとした様子だ。

さらにフランツが続ける。

「サザーランド子爵令嬢が保護してくださいました。大変な怪我をされているようですので、急ぎ医師を派遣しました」


「クローディアさまにはお世話になりっぱなしね。わかったわフランツ。あとはよろしくお願いします」


「お任せください。さて、ルークさまの無事もわかったのでお食事なさってくださいね、まだまだこれからですよ。私は明日の捜索隊の準備を進めてきます。相手を欺かなければなりませんから」そう言ってフランツは出て行った。


ティナはサロンの窓際に行き雪が積もり始めた暗い庭園を見る。頬に涙が流れていた。ランスロットはティナに近寄り「ルーク殿が気になるだろう?行かないのか?」とティナの涙を拭いながら聞いてきたが、

ティナは首を横に振り「多分、バーネット側が監視してるでしょう?きっと向こうもルークを探してると思うから、行かない方がいいわ。それに雪が積もってきたから足跡が残ってしまう」


「そうか。そうだな。サザーランド子爵令嬢がついてくれている」と言いながらティナの肩を抱き寄せた。


「ええ。そうね」と二人は寄り添い雪が降り積もる暗い庭園を見ていた。

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