断罪 2
国王の右手が挙がり、謁見室脇の扉から青年が出てきた。非常に見覚えのある青年が、青年は左腕を固定した姿だ。
バーネット公爵は驚愕して立ち尽くす。
「伯父上。お久しぶりですね。びっくりしましたか?
また、生き延びました」
「ル…ルーク…なぜ…」
「あんな急斜面を落ちていったのになぜ?と言いたいのですか?」さらに続ける「本当ですね。両親は死んでしまったのに、なぜ僕…僕達は助かったんでしょう?不思議です」
「…。」バーネット公爵はもう言葉もない。
国王が話し出す「そう言うわけだ、其方が全て自分の口で白状した。身に覚えはあるだろう?この時期になったのはウォールヒル侯爵の怪我の回復を待っていた。よく生き延びてくれたと思う」
「衛兵!」と国王が呼ぶと、すぐさまバーネット公爵は取り押さえられた。
そして国王はバーネット公爵に「なぜこんなことをした?そんなに〈国王〉になりたかったか?」と聞くと
「私ではない。…私の父がなりたかったんだ。私の父の悲願だったんだ!」最後は叫ぶように言った。
「叔父上の悲願?」
「そうだ!父は皆に慕われ次期国王にと思われていたのに…失脚して辺境に追いやられた!」
「何を言っている?叔父上がそんな事を言うはずがないではないか」と言ったあと「…それは叔父上本人が言ったのか?誰に聞いた?」
「カールが父は死の床で〈悔しかった〉と」
「カールとはこいつか?連れて参れ!」
ルークが出てきた反対の扉から拘束されたカールが引きずり出された。
バーネット公爵は目を剥いてカールを見た「カール!どうした!なぜ!」
国王はカールを見て「さっきバーネット公爵が言ったことは誠か?カール・レンドロス…いやジミー・ロウ…確か本名はジェレミー・ダン・ネイルロウだったかな?本物のカール・レンドロスは既に亡くなっている」
カールは拘束され跪かされ唇を噛んでいる。
「え?カール?ジェレミー…って…」
国王は肩から力を抜いて「はぁ、まったく…」とため息をついたあと「ロッキー。叔父上がそんな事を言うはずがないんだよ」とバーネット公爵の幼少期の呼び名で語りかけた。
「え?」
国王は語り続けた。
「叔父上はなぜ臣下に降りたと思う?」
「それは、失脚させられたから…」
「それはジェレミーの言葉だろう?
私達は子どもの頃は家族仲良く暮らしていたよなぁー。なのになぜ急に臣下に降ったか…。それはブレンダ夫人。ロッキーのお母上のご実家が私の父を亡き者にしようとしたからだ。王族への謀略は断罪に値する。だから今、お母上のご実家は没落して既にないだろう?ブレンダ夫人も断罪の対象になった。しかし叔父上が庇った。自分は皇位継承権を放棄して臣下に降り辺境に行く…と。お祖父様は考えた。王族での諍いは国内紛争に繋がりかねない。そして我が息子家族も守りたかった。父上の了承を得て内々に事を進めて君達親子は辺境に行ったんだ。それをネイルロウにうまく利用されて傀儡にされるとは…。このことは記録にも残してある。王族ならばいつでも閲覧可能だぞ」
バーネット公爵は今度こそ打ちのめされた「私が…傀儡…騙されたのか…」
「どうもそのようだな。ウォールヒルを傀儡にしようと企んでいたお前が傀儡にされていたなんてな…」
「二人を連れて行け!」と国王が言うとバーネット公爵とカールが引き立てられる。カールが抵抗した。
「私はネイルロウの王族だぞ!こんな扱い許されるのか?すぐに祖国から抗議がくるぞ!」
それを聞いた国王はカールに向かい淡々と告げた
「お前の正体が未確定ながらわかった時、直轄領からネイルロウに良く見えるように王国軍を配備した。慌ててネイルロウから特使が来たよ。そこで、お前のことも、鉄鉱石流出のこともそして戦争の準備をしているのもわかっていることを告げたよ。そうしたら、ネイルロウ国王から親書が来た。鉄鉱石流出にネイルロウ王室は関知していない。戦争をするつもりはない。そして第二王子ジェレミーは行方不明になって10年以上経つ。安否は不明だが、国外に出国した形跡はない。カールなる者は第二王子ジェレミーではない」と。
「そんな…」と呆然とするカールに追い打ちをかける。
「こちらには鉄鉱石流出の証拠資料があるから、これからネイルロウと交渉するんだが、どうもお前は交渉材料にもならないらしい。よって、我が国の法律に則って〈反逆を幇助した罪〉〈ウォールヒル前及び現侯爵殺害幇助の罪〉〈バーネット公爵家資産横領の罪〉で捌かれる」
それを聞いたバーネット公爵は信じられない者を見る目でカールを見て「カール!貴様ぁー!」
国王はバーネット公爵に向かい「横領されていたことも気づかなかったのか?」と呆れ声で言った。
次にカールを見て「バーネット公爵家を真似て言えば〈使えないから放逐〉されたんだな…ジェレミー」…「以上だ」
二人は謁見室から引きずり出されて行った。




