新しい情報
ランスロットは屋敷に戻り、湯を浴び、食事をとり、明日の報告の為に資料を整理していた。
「………ん?」何かの気配を感じた。がなにもない。ふと、窓の外に目をやり「ティナ…」と彼女に思いを馳せた。その時バルコニーに違和感を覚えた。
急いでバルコニーの扉を開ける。そこには……。
ティナはエストラーダ公爵邸ランスロットの私室バルコニーに報告書の入った封筒を吊ろうと思い手を伸ばした時バルコニーの扉が開いた。
「あ」と思った時にはランスロットの腕の中にいた。
「ふふ。ティナこんなところでなにしてるの?」
「え?…っと、郵便配達?」
「クックク…なぜ疑問形?…」とクスクス笑っている。
ティナはランスロットの腕の中で大人しくしている。
「なぜわかったの?」
「なぜだろうな、ティナのこと考えてたからかな?」
「驚かないの?」
「ふふ、もうティナのどんな姿見ても驚かないって決めたんだ」
「ふふ。ありがとう。嬉しい」
いつのまにか床に胡座で座るランスロットにティナは抱き込まれていた。
「いつも郵便配達してくれてた?」
「ふふ。だって一番信用できる者なんだもん」
「ふふ。確かにね」
「これからは家にいる時は開けておくから入ってきて」
「いいの?」
「勿論」
「ふふ。ありがとう…そうだ!これ」と言って封筒を渡す。
ランスロットは礼を言い、中を確認する。ティナを抱き込んだまま。
顧客名簿…公爵とカールの手紙…カールに届いた差出人不明の手紙に横領の証拠…資金の動きと最終振り込み先カスケイド。
「ティナの兄上は凄いな。こんなに情報を集めるなんて…驚いた。有力な情報だありがとうって伝えてほしい」
「了解です」と言いながらランスロットにもたれかかる。
暫くそうしていたが、ゆっくり離れた。
「そろそろ行かなきゃ」
ランスロットもわかっていた、あまり引き止められないと「そうか…ティナ、明日もこの時間に来てくれるか?明日の報告の内容を共有しようと思う」
「うん。わかった。じゃ行くね!」
「ああ。気をつけてな」と言いながらランスロットはティナにキスをした。
ティナは顔を赤らめて「もうっ」と言いながら夜の庭園に紛れて去って行った。
翌日、王宮。国王の執務室に、国王を中心に宰相、王太子、ランスロットが集まっていた。
机の上には、今までの報告書。証拠品等が並んでいる。
ランスロットの報告が終わると国王が大きく息を吐いた。
「そうか。もう疑いようがないな」
「はい。おそらく間違いはない…と」と宰相は言う。
ランスロットが話に入ってくる「しかし、これだけでは、バーネット公爵が隣国と通じているという決定的な証拠にはならないと…〈カールが勝手にしていた〉と言われるのではないでしょうか?」
国王は「うむ。そうかもな」
その時、ずっと黙って聞いていた王太子が口を開いた。「陛下。そのカールという執事ですが、本当に〈カール・レンドロス〉なのでしょうか?
国王が「なぜ、そう思う」と問えば
王太子は「はい。バーネット公爵領でそのカールと話したのですが、少しネイルロウの訛りがありました。バーネット公爵家に長く勤めているにもかかわらず」
「確かに、それは疑わしいな」
「ですので、今、カール・レンドロスという者のことを調べさせています。まもなくわかるかと」
「そうか。わかった」
その時宰相が別のことを話し出した。
「この、送金先の〈カスケイド〉なのですが、確かネイルロウ国王の側妃の実家が〈カスケイド〉ではなかったでしょうか?」
「では宰相、ランスロット。〈カスケイド〉がどうカールと繋がるのか調べてくれ。アーネストは引き続きカール・レンドロスの調査を頼む」と国王が指示を出す。
三人は声を揃えて「かしこまりました」と頭を下げた。
そして国王は天井を見ながら「私は、一度バーネット公爵と直接話をしてみる。甘いと思われるかもしれんが、奴は私の従兄弟だ。できたら王族から裏切り者は出したくない。それに、これが表面化したら国内は混乱し国外からも隙を突かれる。すぐにバーネットに使いをやる。皆は私が奴と会って話をするまで動かないでいてくれるか?」と言った。皆「御意」と頭を下げる。
そして国王はその日公爵邸に使いをやった。
「久しぶりに一緒に飲もう」と。
――――――――――――
夕闇が迫る頃。バーネット公爵は屋敷に着いた。
カールを伴い屋敷の中に入ると、留守居の侍従が出迎え挨拶をした。「おかえりなさいませ、旦那様」
「うむ。帰った」バーネット公爵は返事をし、そのまま私室に向かおうとした。が
「王宮より使いが参り、書簡を預かりました。執務室の机に置いてございます」侍従の声に振り返る。
バーネット公爵は「珍しいな。わかった」と伝え、執務室に向かった。
カールと共に執務室に入り、机の上に置いてある書簡を手に取り中を確認した。
「王宮からはなんと?」とカールが問うと、
「息子が世話になった。久しぶりに飲まないか?…と言ってきた。…仕方ない、今から行ってくる」そういうバーネット公爵の顔には困惑が見て取れた。
しかし、断る選択肢はない。
「かしこまりました。いってらっしゃいませ」とカールは頭を下げた。
バーネット公爵は着替えを済ませ、すぐに王宮に向かった。
見送ったカールは、カールの執務室に向かった。
入室し、入り口の脇のチェストの上の手紙を確認しようと手を伸ばしたところで、ピタッと手が止まった。
手紙の盆の上に僅かに灰が落ちていた。普通は見落とす程度であったが、カールは見落とさなかった。




