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前世は猫でしたので  作者: KAE


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二人の旅の終わり

ティナとランスロットはバーネット公爵領主邸の街に着いた。騎馬隊はあと3、4日は到着しないだろう。

今までの搬送経路を確認し、後はどうやって隣国へ輸送するのかを知りたかったので騎馬隊より先にバーネット公爵領に来た。

街を見渡せる小高い丘に登り、彼方に見える国境の緩衝地帯を見る。

ランスロットからこの緩衝地帯の話を聞く。隣国との国境線は川や山など目に見えて区切ることのできるものがなかったのでお互いに衝突を避ける為この草地が造られた。少し幅のある小川の向こうに今は背の高い枯れた草が風に靡いているが、夏場になると青々とした背の高い草が風に靡いて美しいと聞いたことがあると。

「それと、農作物を荒らす害虫がこの時期産卵をするので、害虫駆除の為春になる前に枯れた草を一斉に焼くんだ。そうすると、春には新芽が出て夏にはまた青々とした草地になるんだそうだ…俺も初めて見るんだけどね」と教えてくれた。


「乾燥した枯れ草を焼くのは見られるのかしら?凄く気になるわ」


「ここから見えるんじゃないか?」


「凄い迫力でしょうね。いつなのかしら?」


「春前だから、2月とか3月?」


「そうなのねー。でもちゃんと新芽が出るのねそこからあの枯れた草くらい大きく育ってすごいわねー」


「ん?」「ん?」何か二人は引っ掛かるものを感じた。そして二人はじっと緩衝地帯の枯れ草を見る。


「あれだけ背が高いと荷車くらいは隠せたりできるのではないか?」とランスロットが呟く。


「雪が降って積もったら、轍や足跡が残るわ」とティナも言う。


「焼いてしまえば、隠す草もない」ランスロットが付け足す。


「焼くのはいつかしら?焼いてから新芽が出て初夏までにはどのくらい育つ?」


「街の人に聞いてみよう」と言って二人は街に向かって走って行った。


その日の夜、バーネット公爵領に初雪が降った。

夜から降り続いている雪は朝になっても止むことはなく今も降り続いている。

朝起きて窓を開けたら昨日までとは違った景色が広がっていた。ティナは暫くその雪景色を眺めていた。

コンコンと扉をノックする音がする。

「どうぞ」と言うと、予想通りランスロットが入ってきた。朝の挨拶をして二人窓際に並んで雪景色を眺める。スッとランスロットがティナの肩を抱いた。ティナもごく自然にランスロットに寄り添い頭を預ける。

じっと無言で窓の外を見ていた。

暫くして…ランスロットが「降ったな」と呟きティナも「降ったわね」とその呟きに答えた。

降雪は、二人の旅の終わりを意味していた。


二人は朝食を済ませ、昨日の丘に向かった。

街道は近隣の人達の手で既に雪が道の端に寄せられ歩くのには不自由しなかったが、丘に登るのは雪を踏み締めて登るので少々苦労した。


丘の上から見える緩衝地帯は文字通り真っ白だった。まず人は入れなさそうだ。仮に入ったとしても前に進むのは困難に見える。


「雪が降ったら…できないわね」


「そうだな」


「そして、野焼きが終わってもできないわね。


「ああ」

労働者の派遣が雪が止んでから…という理由がわかった。そして今年はもう鉄鉱石の流出はないだろう。今日か明日には騎馬隊が到着する。どこに保管するか確認したら撤退だ。黒いマントを被った二人は暫く緩衝地帯を眺めながら佇んでいた。


二日後、ようやく騎馬隊が到着した。五台の台車が格納されるのを確認した二人はその街から移送してもらっていた愛馬に乗り王都へ向けて出発した。


――――――――――――




馬の(いなな)きや、人のざわめき、物を荷車に乗せる音。バーネット公爵領邸の前は兵士でごった返していた。


バーネット公爵領邸から出てきた甲冑姿の王太子にバーネット公爵。

「従伯父上。今回は大変世話になりました。思いがけず長居をしてしまいました。お心尽くしのもてなし感謝しております」


「とんでもない。私こそ普段はなかなかご一緒できませんが、今回はゆっくりお話しできて楽しゅうございました。またこちらに巡視の折は是非お立ち寄りください」


「ありがとうございます。また是非従伯父上との時間が持てることを願っております。次は新年の王宮舞踏会でお目にかかります。では…」


「はい。では…」とバーネット公爵は臣下の礼をとる。


王太子は馬に乗り、従軍の騎馬隊と共にバーネット公爵領邸をあとにし、王都へ向けて出立して行った。


国境巡視隊の一団を見送り、バーネット公爵は屋敷に入ってきた。


「ふー」とひとつ大きく息を吐く。

カールがスッと側に寄り「お疲れ様でございました」と軽く頭を下げる。


先ほどまでの柔和な顔を隠し、カールに問う「石はどうした?雪が降ってしまったが」


「はい。野焼き用の倉庫脇の別の倉庫に格納してあります」


「誰か近づいた様子は?」


「監視しておりますが、今のところそのような者はおりません」


「そうか。今年は領内に爆弾を抱えることになった。十分警戒するように…」


「かしこまりました」


「さて、無事一仕事終わった。我々も明後日王都に向けて出立する」


「かしこまりました」


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