雪が降ったら
ルークが公爵邸から帰ってくると、執務室でフランツが待っていた。ここ最近ずっとそうだ。
フランツには…いや、皆にはかなり心配されているのがわかる。
ほっとした表情でフランツが「お帰りなさい」と一言言った。(あぁ帰ってきた)と温かい気持ちで「ただいま」と言った。
一呼吸おいてフランツが「ティナさまから連絡がありましたよ。ご本人宛てで…ふふ」
手紙を受け取ったルークは、ティナらしくない花柄模様のとても可愛い封筒に笑った。宛名はティナーリア本人。差出人はシエル。…「なるほどね。ティナも考えたね。ミドルネーム使うなんてふふ」
早速中から手紙を取り出す。
皆に心配かけていることを詫びる文面から始まった。
そして今はエストラーダ小公爵と合流し、台車の経路を確定する為毎日移動していること。
鉄鉱石は20人でなく40人で流出分を補っていたこと。
雪が降る頃は作業をせずに皆小屋を後に帰省すること。
運送は人手でおこない、運送団を組織していないこと。
リレー方式で運送していること。
街道の人達はこの運送は国王の指示だと思っていること。
最後に、エストラーダ小公爵とBRについて話し合った結果、もしかしたら〈バーネットロード〉もしくは 〈バーネットルート〉の略語の可能性はないか?と思ったが検討して欲しいとあり雪が降ったら帰るとあった。
フランツが「ティナさまもなんか変わられたような気がしますね」と感慨深く言うが、
ルークはティナがずっとエストラーダ小公爵といることがすごく気になった。
しかし、ルークも情報を共有しなくてはいけない。気持ちを切り替えて話出した。
「僕も情報を持ち帰ったよ。皆を呼んでくれる?」
程なくしてマリアとポールがやってきた。エレナはティナの身代わりでティナの部屋に籠っている。
(後で手紙を持って行ってやろう。きっと喜ぶ)と思った。
ルークはカールがバーネット公爵家の資金を横領している証拠と差出人不明の封筒、燃え残りの紙片を持ち帰っていた。
フランツは「この横領した資金はどこにいってるのでしょうね?少し調べてみましょう」と言ったので、
ルークは「頼む」と伝えた。
次に差出人不明の手紙。中には〈承知しました。変更があれば連絡ください〉と短い文面だった。
(何を承知したんだ?カールが何かを伝えた答えだということしかわからなかった)
相手がわからない。封筒を再確認した。
よく見たら隅に〈BRN〉と書かれている。
ルークはふと気づいた。机の上に置いてある燃え残りの紙片を持ち上げ、〈BRN〉と書かれた封筒と比べてみた。確かではないが、非常に似ている。
この〈BRN〉と書かれた封筒は処分しなければいけない封筒だということがわかった。
ポールがボソッと「バーネット•ルート…バーネット•ロード…N…N…ネイルロウ…」
皆、その声を拾い、顔を見合わせた。「あるかもしれない」それも高い確率で…私見に書いておこう。
連絡相手のエストラーダ小公爵は今ティナと共にいる。屋敷の私室バルコニーに持って行くわけにはいかないので、そのままルーク達が保管することにした。気がつけば、かなりの証拠品がルークのもとに集まっていた。
ルーク達は月明かりの夜空を見上げる。
「早く雪が降らないかなぁ」と誰が言ったかわからないが皆思うことは同じだった。
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「あーぁ。早く雪が降らないかなぁ」とティナは空を見上げていた。今日もいい天気だ。
「え?ティナは早く雪が降って欲しいの?帰りたいの?」と隣で屋台で買ったサンドイッチを頬張りながらランスロットは言った。あと数日で領主邸に近づく。台車はまだ進行を止めない。
二人はもう敬語をやめていた。今は〈ランス〉と〈ティナ〉と呼び合っている。
「だって、このままいいお天気が続くとあの台車は隣国へ行っちゃうんでしょ?流出してしまう」
「そうだな。そういう意味では早く雪が降って欲しいな。そうすればなぜ雪が降るとやめるのかわかるしね」
「そういう意味で言ったんだけど…」
「俺は複雑だな。早く雪が降ると良い。と思う反面雪が降ってしまうとティナとの旅も終わってしまうからな」
「ランス…」とランスロットを見つめるティナにイタズラっぽく「それでも、やっぱりティナは早く雪が降って欲しい?」と聞く。
「いじわる…」とティナは赤くなる顔を隠すように俯いてサンドイッチを齧った。
「ふふふ。でもやっぱり早く雪が降るといいな。そうすればこの案件の終わりに近づく。案件が終わったら堂々とティナと会える」
「そうね」と遠くの空を見ながら呟くように言ったのをランスロットは聞き逃さなかった。
「ん?ティナも同じ気持ち?嬉しいなぁ」
「ランス!」
「ははは!」最近のランスロットはこんな軽口をよく言うようになった。ティナもまんざらではなく、時々経路調査中だということを忘れる瞬間があった。




