ルークの暗躍
サザーランド子爵がクローディアを介して託してくれた手紙や名簿をひとつひとつ調べていった。
そして、リチャードに手紙を送っていたのはカールだったことがわかった。
それと、公爵から一度、カールからは三度ネイルロウ王国の宰相宛に贈り物が送られていた。
繋がった。これは確実に証拠になるだろう。しかし裏切りの決定打にはならない。
やはり、カールの執務室を調べたい。切実にルークは思った。
「やはり今夜から様子だけでも探りに行こう」と口にすると。
フランツは「かしこまりました。止めません。しかし忘れないでください。ルークさまに何かあったらたくさんの人が困るんです。それだけあなたには責任があるのです」
ルークはフランツに向かって頷いた。
フランツはフッと息を吐いて「今のルークさまならすべてを受け止めて行動してくださるでしょう。良いお顔をなさっています」と微笑んだ。
そして、五日後。チャンスは巡ってきた。
昨日も、カールの執務室、私室に灯りは灯らなかった。そして、今日。夕暮れの頃から公爵邸の様子を見ているが、屋敷はいつになく静かで、カールの姿は見えない。空を見上げると、雲は今ない。
今夜決行すると決めた。
屋敷の裏側のカールの部屋の窓から侵入する。
手紙を保管してある場所を探す。まずティナの経験談を思い出し、一番上の引き出しを確認した。やはり鍵がかかっている。鍵を探す。机天板裏にはなかった。
カールの姿を思い出す。(あいつならどうする?)
机の補強材の下。椅子の座面の下…無い。もしかして…二番目の引き出しを探して見た。
(あった!)しかし、すぐに手は出さない。
(あの男は周りをよく観察している…きっとこれにも細工がある)案の定、鍵を動かすと落ちるように紙が挟んであった。そっと鍵と紙を外し、一番上の引き出しを開ける。またじっと観察する。中の物を取り出し間仕切り板を見つける。また観察する。そっと間仕切り板を外すと…手紙ではなく帳簿が入っていた。中を確認する。(ははぁーん。あいつ横領もしてやがったか…)適当に後ろから5枚目と20枚目を引き抜く。他には何も見当たらなかった。
丁寧にすべて元の位置に戻す。
しかし目的の手紙が見つからない。〈証拠を消せ〉とカールがリチャードに伝えてきたことを思い出した。
この部屋で焼くとしたら…暖炉を見る。
まだ暖炉を使う時期ではないのに何かを燃やした跡があった。少しでも何か残ってないか灰を漁る。一番下から薪の間に挟まった紙片が出てきた。何もないよりは…と思いそれを回収して灰を被せる。
手紙…手紙…と周りを見回す。「!」扉脇のチェストに配達されたばかりの手紙の束があった。
シャツの見ごろで手を拭い、一通一通確認する。またティナの言葉を思い出す。〈差出人不明〉がないか探す。あった。…一通。(俺は運がいい)それを持ってルークは公爵邸から消えた。
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バーネット公爵領、領主邸。
「お久しぶりです。従伯父上。突然のルート変更に対処していただき感謝します」と王太子は柔和に笑って挨拶をした。
バーネット公爵は臣下の礼をとり、胸に手を当て腰を折って「とんでもございません。アーネスト王太子殿下には巡視のご公務大変お疲れ様でございます。どうぞどうぞごゆっくり体を癒してくださいませ。なかなかこの従伯父のもとにはいらしてくださいませんからこの機に少しのんびりされてはいかがでしょうか…従軍の兵士も休息を取らせませんと…」と心にもないことを言った。当然社交辞令のつもりだったが、王太子はそうは取らなかった。
「ご厚意痛み入ります。誠にありがたいです。何せ今回は途中で体調を崩してしまう兵士もいたので、お言葉に甘えさせていただきたい。感謝します」とニコニコしながら公爵に礼を言った。ちなみに、兵士は全員健康そのものである。
公爵は内心舌打ちをした。(余計なことを言うのではなかった…チッ)
「とんでもございません。ではゆっくりと休まれてください。夕食の支度が整いましたら再度お声をかけさせていただきます。では失礼します」と部屋を退出していった。
見送った王太子は側近に声をかける「全く。たぬきだな。…ランスロットから連絡はあったか?」
側近は「先ほど取りに行って参りました」と封筒を渡す。
王太子はすぐに中を検める。「ふーん。考えたな、少し滞在が長くなりそうだ…」と遠く眼下に広がる草地地帯を見た。
今は枯れた背の高い草が広がっている。その草地地帯の先は隣国ネイルロウ王国である。もともと、このバーネット公爵領もネイルロウ王国のものであったが先の戦争でヴェルタリス王国が接収して、王家直轄領になっていたのを、先代バーネット公爵が臣下に下るのを機に移譲された。
王太子はポツリと呟いた「早く雪が降らないかなぁ」




