手紙
ルーク、ティナ達六名は使用人消灯後の時間に私室に集まっていた。
さっき、ティナがランスロットから受け取って来た手紙がルークの手にある。
皆で内容を確認する。
手紙には、情報提供の感謝と今後は現状を伝えたり、ルーク達に協力してもらう事案を願うのも、味気ない文面になる非礼を詫びることから始まっていた。
次に、
・昨日ウォールヒル侯爵令嬢にも話したが…という前置きで、未確定だがネイルロウ王国が絡んでいるかもしれない。ということ。
・昨日、毎年、抜き打ちで行われている王太子の国境巡視の帰還コースにバーネット公爵領内の通過要請を完了したこと。
・鉱石搬出経路の確定情報が必要で要員を準備中だということ。
・バーネット公爵領を包囲する軍を秘密裏に派遣準備中だということ。
ついては、ウォールヒル侯爵には
・ウォールヒル侯爵領にバーネット公爵領包囲軍の受け入れ許可を要請する日が来るかもしれない。その時は速やかに許可が欲しい。ということ。
・搬出経路の調査員の入領許可と搬出起点の情報を教えて欲しいこと。
・バーネット公爵の監視を引き続きお願いしたい。
とあった。
「なんだか大事になったね。伯父様が横流しだなんて…」とティナが言っても、ルークとフランツは黙っている。じっと先ほどの手紙を見つめている。
「見返りはなんだ?」ポツリとルークが言った。フランツも黙って頷く。
「え?」
ルークは続ける「だって、一歩間違えたら、いくら王族と言っても捕縛、幽閉…もしかしたら断罪までいってもおかしくないんじゃないか?そんな危険なこと見返り無しでやるか?」
フランツが「そうですね。おそらく宰相補佐官殿はその先を見越して包囲軍の準備をなさっているのではないでしょうか?」
「包囲軍。…包囲軍。…え?バーネット公爵が敵になる?…だって伯父様は王族…」
「王族がクーデターを起こして元首が変わった国なんて過去にいくつかあっただろう?」とルークは淡々と言った。
確かに学院で習った。
暫く考えてティナは言った「補佐官様は〈鉄鉱石の流出を防ぎたい〉って仰ったわ。流出を防げは戦争は起きない…ってことよね…きっと」
「まあ。そうなるな…」
「クーデターも起きなくなる?」
「きっと」
「流出を防ぐには何をしたらいい?」
うーん。と考えながらルークは言う「鉱山の閉鎖?」
「あ!そうか。鉱石が出せなきゃ、持ち出すこともできないか!」
フランツが入ってくる「あの鉱山の所有者は王家です。我々は管理を任されているに過ぎません。勝手に閉鎖はできないのです」
「あー。そうか…」と私は肩を落とした。
「それに今、鉱山を急に閉鎖するようなことをすれば、相手に警戒されるのでは?…ティナから聞いた補佐官殿の話と、この手紙…補佐官殿は伯父上の後ろを見ているような気がするな……ん?伯父上はどこでネイルロウと繋がっている?」とルークが言った。
確かに…。「そんな素ぶり見なかったわよね?」
すると、ルークが不敵な笑みを見せて「せっかく傀儡になってやるんだ、探らせてもらおう」と言った。
そして、その翌々日、
・依頼内容は了解したこと。
・搬出口の場所を示した地図。
・バーネット公爵とネイルロウの橋渡しを誰がしているのか調べる。
ということを認めた手紙がランスロットの私室バルコニー扉に吊るされた。
――――――――――――
「旦那様。王宮よりお手紙が参りました」とカールは手紙の盆をバーネット公爵に差し出した。
「王宮から?何事だ?」と言いながらその手紙を受け取る。書簡を確認して、暫く黙り込んだ。
不審に思ったカールが「いかがされましたか?王宮から何か?」と問うと
「毎年行われている、王太子による抜き打ちの国境巡視隊の今年の王都への帰還コースにバーネット公爵領の通過を許可して欲しい。と言ってきた」
「帰還コースですか?今年はどの国境線を視察されていたのでしょうか」
「公表はされていないが東の海岸沿いだったと聞いている」
「ならば、何も不思議はないかと思いますが…」
「うむ。そうなんだが…」
「何か気になる事でも?」
「いや、なんでもない。了承と休息場所の提供の返事をしておこう」
「承知しました。いつ頃の予定でしょう?その頃領地に向かわれますか?」
「…そうか、鉱石搬出の時期と重なってはまずいな…
具体的な日程が決まるまで搬出は待て、タイミングを謀ろう。王宮に返事をする。………そうだ、ティナーリアの監視は始めたか?」
「はい。昨日から、屋敷の中はまだ入り込めていませんが、外出時は追跡させています。昨日はカフェに侍女と出かけて帰宅したようです」
「そうか。引き続き頼む」
「かしこまりました」とカールは部屋を退室して行った。扉を閉めたカールはまた不安に駆られていた。
(なんなのだ…この言いようのない胸騒ぎは…)
しかしその正体がわからなかった。
バーネット公爵も執務室の椅子に座り外を見ながら
(なんだ?このモヤモヤしたものは…)と妙な胸騒ぎを感じていた。




