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前世は猫でしたので  作者: KAE


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出逢い

ティナは、窓が換気の為に半分開けられた資料室の窓から侵入することにした。


資料室には書棚がいっぱい並べられ図書館のようであった。その書棚の間を静かに移動する。

資料室は隣の事務官室と中で繋がっていて、事務官室の中ではたくさんの事務官が仕事に集中しているのが見えた。その事務官に見つからないように窓と反対側にある扉に向かって注意深く移動する。


資料室の扉まできて、今度は廊下をうかがう。耳をすませて人気のないのを確認して扉を少し開け目視でも確認する。

(よし。いない)ティナは廊下に出た。

右を見れば突き当たりに重厚な扉があり、それが目的の宰相室である。


今のティナの格好は非常に怪しい。

ティナはササッと後ろの腰のリボンの帯から布を引っ張り出して、急いでドレス姿に戻る。


その時階下、執務棟玄関口から男性三人の声が聞こえてきた。まだ少し距離はあるがどこかに隠れないといけない。あたりを見回す。宰相室まで走れば間に合うと思う。が迷う。

階下の男性達の話声が聞こえてくる。

「おかえりなさい。お疲れ様でございます」


「ああ。お疲れ様。何かあったのか?今日は衛兵達が……」


「はい。どこかの令嬢がウロウロしていたようで…」


「はぁ。そうか、またか…いつもご苦労様。よろしく頼むよ」


「かしこまりましたっ」


そして男性二人は館内に入ってきたようだ。

階段を登りながら会話をしている。


焦ったティナは目の前のさっきとは別の資料室に隠れることを選んだ。

中に人気がないのを確認して資料室に滑り込んだ。

同時に中で繋がっている隣の部屋から男性が入室してきた。

ティナは扉に貼り付いて固まった。

相手の男性も片足を資料室に入れたまま固まっていた。


廊下では

「困ったものだな。婚約者に逃げられおって…全く…」


「ははは。宰相閣下、それは失礼ながら閣下の責任も少しはあるかと思いますが」


「ふん…」


「それより例の事案はどうなった?」


「はい。集められるものは全て補佐官殿に提出したようです。精査されまもなく閣下に報告があがってくるかと…」


「そうか」


と二人の男性は話をしながらティナの後ろを通り過ぎて行った。


しかしティナは廊下の会話を聞く余裕はなかった。

扉に貼り付き、目を見開き、目の前の男性をただ見つめていた。頭の中は真っ白だった。


目の前の男性は「シルバーのドレス」と小さく呟いたのだが、それも聞き取れていなかった。


暫くお互いを見つめたまま沈黙が続く。


最初に口を開いたのは男性だった。「…君は…」


その言葉にハッとしたティナは我にかえった。

そして、開き直った。軽くカーテシーをし、

「突然申し訳ございません。わたくしティナーリア・シエル・ウォールヒルと申します」


男性は「…ウォールヒル…たしか今日、爵位継承式だったと記憶しているが…」


「はい」


「そのウォールヒルのご令嬢がこんなところに何用か?」と少し棘のある言い方で問われた。


きっと、さっき衛兵が言っていた。ウロウロしているご令嬢と思われたのだろう…いや間違ってないけど…と心の中で思う。

しかしここで引き下がるわけにはいかない。

腹を括った。

「実は折り入って相談したい儀があり、宰相閣下にお取り次をお願いに参りました」


「ほう。どんな相談だ?」警戒した声が返ってくる。


「実は…」と次の言葉が出ない。この男性は敵なのか味方なのか判断に困った。

たしか、ここは宰相補佐官室があったところだ。と見取り図を思い出していた。

いまだカーテシーの姿勢のままだ、鉢合わせした時の男性の姿を思い出そうとするが、髪が茶色かったことしか思い出せない。ここで事実を話そうか迷っていると、相手が痺れを切らした。


「はぁ。その姿勢を続けているのは大儀でしょう。しっかりと修練されたのがわかりました。どうぞ楽にしてください」


その声にティナはやっと前を向くことができた。


目の前の男性は、長身で肩幅も広くがっちりした体格でとても文官とは思えない。

質の良いスーツを着こなし、茶色の髪の下には整った顔にエメラルドグリーンの目がこちらを探るような目で見ていた。

「私は、ランスロット・ジーク・エストラーダと申します」


「…エストラーダ……」


「そうです。ハリソン・ピアゼ・エストラーダ宰相は私の父で、私は宰相補佐官をしています」


ティナは心の中で神に感謝した(あぁ!神様!)

相手が味方の確率が上がった。ここから先へは行かせてもらえないだろう。と判断したティナは目の前の宰相補佐官に託すことにした。


「大変失礼をいたしました。補佐官様に聞いていただきたいことがあります」と相手の目を見て訴えた。


エストラーダ宰相補佐官はティナの鬼気迫る表情を見てただごとではないと判断したのか

「…わかりました。こちらの補佐官室でうかがいます。どうぞこちらへ」と隣の宰相補佐官室に誘導した。


ティナは、ドレスの下に隠した請願書を手で押さえて確認して、宰相補佐官室に足を踏み入れた。

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