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前世は猫でしたので  作者: KAE


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33/107

その日に向けて

執務室に皆が揃ったところで報告会が始まった。


ルークとティナの二人は交互におもしろ、おかしく、公爵邸であったことを話した。

本当に久しぶりに笑えたような気がした。

ひと通り皆で笑ったあと。


「…で、これはお土産」と言ってルークは空の小瓶をテーブルの上に出した。


皆が食い入るように見る。「これが…」


「そう。さっき話した『小瓶』」


「多分ルークに盛ろうとしていた薬の解毒剤ね、公爵、慌てて煽っていたもの」


フランツがハンカチでそれをくるみ「薬師に解析させましょう」と言った。


ルークは笑顔で「頼むね」と言った。

そして愉快な一日は終わった。


――――――――――――


翌日、公爵邸は重い空気に包まれていた。

公爵の怒りが収まらない。

「一体なぜ私があんな目に遭わなければならないのだ!全て計画通りに進んでいたのではないのか!

一体どうなっているのだ!どこで違ったか早く調べろ!」の怒りの指示に屋敷は騒然としている。


それぞれの担当がどう動いたか細かな調査が行われた。


ポールの監視員四名。部屋から一歩も出なかったそうだ。部屋から初めて出たのが、お開きの連絡が来てから…だそうだ。


ルークは一度も中座しなかった。ずっと公爵夫妻とクローディアと共にいた。


だから二人が何かに気づいて阻止したとは考えられない。


ならば、使用人の中に間者がいたのか?

昨日、勤務だった使用人は念の為長く公爵邸に勤める者で身元もはっきりしている者を集めた。動線の確認もしたが、怪しいと思われる者はいなかった。

ひとつ気になることといえば、あの蛇騒動だった。しかし夏場の今、蛇が出ることはなんら不思議はない。


一体どういうことだ?とカールは首を傾げるが答えが見つからない。


公爵の怒りがカールに向く。

「それではお前が間違った。ということではないか!」


叱責を受けて「原因がわからず申し訳ございません」と頭を下げながら自身の行動を振り返る。


自身の執務室に戻っても思考は昨日の振り返りでいっぱいだった。

(確かカウンターの盆に氷菓子が四つ置かれて左上の氷菓子に媚薬をかけた。ミントの葉を目印にして…

ん?配膳する時四つ葉のミントが乗った氷菓子はどこにあった?左上になければいけないのに……)

カールは戸惑った。記憶が曖昧(あいまい)である。

さらに思い出そうと記憶を掘り起こしていると、侍従のひとりがノックをして「失礼します」と入室してきた。


「本日の郵便でございます」


「うむ」と言って受け取る。記憶の掘り起こしはそこで中断された。


盆から郵便物を受け取って差し出し人を確認する。

ひとつは、領地の騎馬隊長から。

ひとつは、国境警備隊長から。

ひとつは、差し出し人不明だが隅にBRとある。

ひとつは、差し出し人不明でNと書いてある。


今、一番気になるBRからの手紙を確認する。

ウォールヒル領代官リチャードからの手紙だった。

手紙によれば、ティナーリア・シエル・ウォールヒルは半月ほど領地に滞在したのち王都に帰還した。

滞在中は南鉱山と商業組合、数カ所の農地視察を経て帰還の途につき、東鉱山へは足を踏み入れなかった。とあった。

念の為、それとなく鉱山の者にも確認したが皆ティナーリアの姿は見ていないと同様の報告がきたとのことだった。


騎馬隊長からは領境の村で予定通り四つの荷物を引き継ぎ国境警備隊に引き渡した。との報告だった。


そこでカールは戸惑う。「四つ?」リチャードへの指示に行き違いがあったのか?それとも急な変更に間に合わなかったのか?言いようのない不安がよぎった。


国境警備隊長からは、無事に任務を完了した旨の報告がきていた。


最後にNからの手紙の封を切った。 


カールは何か言いようのない不安にかられていた。


―――――――――――――


数日後、媚薬、解毒剤の解析の報告がきた。

どうやら国内の薬草ではなかったらしい。どこの国のものかさらに調査を進めるそうだ。だが、持ち帰った解毒剤のおかげで、媚薬の対処薬が作れたそうだ。

これで、少し前に進めたような気がした。


しかしその後、証拠の整理を請願書と一緒に提出する為矛盾のないようにチェックしていたら、差異が集中しているのはある一定の期間だけだったことに気がついた。全体ばかり見て細かなところに気づかなかった。この年だけだろうか?他の年の分はここにはない。この疑問は保留とされた。

少し前に進めた気がしたのに、今度は一歩後退したような気がした。


日々の業務は待ってくれないし、間近に控えたルークの継承式の準備とその後のウォールヒル家主催のお披露目の夜会の準備も待ってくれない。

合間に公爵からの誘いがあり、時間を取られる日も結構あり、ルークとティナは日々何かに追われるように過ごしていた。


公爵とは、あの問題の晩餐の日以降、ティナも同席して公爵夫妻、クローディアと共に過ごす時間も何度かあったが公爵が薬を盛るのを諦めたのか、事前に飲んだ対処薬が効果を表したのか不明だが食事の席でのトラブルもなく、時々クローディアが突撃してくるが二人は協力して上手くかわしながら、伯父を慕う甥っ子姪っ子を上手く演じていた。

時々こめかみに青筋を立てる公爵を見るのが密かな楽しみになっていた。


そして、秋になりやっとルークの爵位継承式を明日に控え皆の気持ちも、屋敷の雰囲気も少し緊張したものになっていた。







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