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前世は猫でしたので  作者: KAE


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ティナの帰宅 1

お読みくださりありがとうございます

走り去る馬車を見送りながら公爵は後ろのカールに話しかける。

「バレたか?」


「おそらくそれはないかと。あれは隣国のある花が原料ですので、花の香りはしても薬茶のような匂いはしないはず。それに茶に混ぜておりますので消えているかと。相手の出方を見ませんとなんとも言えませんが」


「そうか。では見舞いの手紙でも出して様子を見るとしよう。奴にはまだ懐いてもらわないといけないからな」


「さようでございますね。」


「「ふふふふ」」」と笑いながら屋敷に戻って行った。


二人が屋敷に入ると。

「おじさま。ウォールヒル小侯爵さまは?」と可愛らしい声が聞こえてきた。バーネット公爵家家門の傍系の家の娘である。


「クローディア。すまないな、ルークは体調が悪くなり帰ったよ」と柔和な笑顔で言う。


クローディアは口を尖らせて「えー、せっかくルークさまにお目にかかれると思ったのに…残念ですわ」と言えば


公爵は「まだ機会はある。次は食事を共にしよう」と言う。


「わかりました、では今日はもうおいとまさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「ああ。いいよ、気をつけて帰りなさい」


「はい。失礼します」とお辞儀をして玄関の方に向かって行った。


後ろ姿を見送りながら公爵は「ルークもあれくらい扱い易ければよかったのに」と独り言を言った。

隣でカールは同意の頷きをしていた。


――――――――――――


「おかえりなさいませ、ティナさま。旅はいかがでございましたか?」「無事のお戻り何よりでございます」と笑顔のフランツとマリアに迎えられたティナは


「ただいま戻りました。旅は順調でとても楽しかったわ。ニールにも友達ができたのよ。ところでルークは?」


「はい。実は……。」とフランツが話始めた。


――――――――――――


その頃ルークはベッドに蹲りながら「くそぉー。あのクソジジイー。何を飲ませやがったー」と悪態をついていた。


コンコン。ノックと共にフランツが入ってきた。

「お加減はいかがですか?」


蹲ったままルークは「うーん。あまり良くない…フランツ一体あの薬はなんだ?」


「ああ。特性下剤でございます。ふふ」


「はい?下剤?…うぅ…きた…」と言うなり、部屋からバタバタと出て行った。


その様子をフランツの影で見ていたティナは「ルーク大丈夫なの?」と恐る恐るフランツに問う。


「あの様子では大丈夫だと思います。早く処置ができてよかった」と微笑んで言う。


暫くしてげっそりしたルークが帰ってくる。

「ルーク大丈夫?」とティナが心配そうに声をかけると


「あぁ、ティナ、おかえり。ハグしたいけど…今はまだちょっと…」


「いいよ。気にしないで。それより何があったの?」


その声にルークはベッドに横になりながらティナが領地に行ってからのこと、公爵邸でのこと、馬車で飲んだ薬のことを話した。


「それにしてもなんで下剤なんだ?フランツ」とルークがフランツに向かって言うと


「はい。ルークさまは殺されることはない。とおっしゃいましたので、薬が盛られるとしたら媚薬の類になるかと思いました。解毒薬は飲んでいかれましたが、盛られる薬の正体がわかりませんからそんなに強い薬は飲んでいただけませんでした。ですので早く媚薬を体から排出させるために、解毒薬と相乗効果のある下剤を使用しました。お腹の調子が非常に悪いと変な気持ちも起きないでしょう?ふふ」とイタズラが成功した子どものような笑顔で言った。


それを聞いたルークは「確かに、それどころじゃないのは確かだな」とまだ痛む腹をさすりながら答えた。


「それにしても伯父様は何て人なのかしらまったく!匂いに気づかずに全部飲んでしまっていたらどうなったか想像もしたくないわ!」と苛立ちを隠さずティナが言う。続けて「領地でいろいろ見つけてきたわよ、どれが役に立つかわからないけど…。でもルークの様子を見るに明日にした方がいいわね」


「悪いな。今日は無理そうだ。明日朝から皆執務室に集まろう」


「そうね。そうしましょう」


「それとフランツ。ハンカチはどうした?」


「はい。薬師に解析してもらってます。少し時間が欲しいと申しておりました。それにしてもあれだけの量をよく染み込ませましたね」


「ふふ…そうか、わかった」


「ルークさま。少しおやすみなさいませ、食事は消化の良いものを用意しましょう」


ルークにとって散々な一日はこうして終わった。


――――――――――――


翌日。六人は執務室に集まった。

ルークは皆に体調を心配され、大丈夫だと答え、本題に入っていった。


ティナは領地でのできごとを細かく話した。

リチャードが何かを燃やしていたこと、BRの手紙のこと、リチャードの態度、日誌が東鉱山の物であること、東鉱山からバーネット公爵領に続く道を辿り鉱石が運ばれていること。そして回収した手紙、燃え残った手紙の端、東鉱山の日誌を机に並べる。


ます、手紙の中身を調べる。

一枚目の手紙には『娘がそちらに行く。証拠は残すな』という内容だった。

二枚目の手紙には『毎回あと10トロイ増産せよ』という内容の指示書のようなものと小切手だった。


この事からリチャードは小切手と引き換えに国の所有物である鉄鉱石をバーネット公爵に横流ししていることがわかる。

しかしあの村で馬上の身なりの良い男は確かに『国王」という単語を使った…ということは国王もご存知なのか?国の指示で?なぜ?

皆、頭が混乱し沈黙していた。


沈黙を破ったのはルークだ。

「手始めに、去年の日誌が揃っているから、採掘量と搬出量の差異を計算しよう。その差異分がバーネットに流れていると考えられるから」


その日から手分けして一日分ずつ精査していった。

数日後、差異分の具体的な数字が出た。1年間で240トロイ、台車240個分という大量の鉱石が運び出されていた。

フランツが静かに言う「これだけあれば、大砲ならば2砲作っても砲丸もできる量ではないでしょうか」

皆、背筋が寒くなるような感覚に陥った。


そこで今わかっている現状を整理することにした。

・大量の鉱石が運び出されている。

・鉱石はバーネット公爵領に運び込まれている

・リチャードは金の為に裏切っている

・BRとはおそらくバーネットを指す言葉の略語だろう

・国王の指示なのか不明


フランツが重い口を開いた。

「最悪。私達が謀反者になるかもしれません」




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